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太陽暦1819年雨月7の12日6時
ゼクス『おーい、神官のおっさーん。いねーのか?』
ゼクスは15歳を迎えた今日、神殿に行っていち早く自分のジョブを知ろうと朝早くから訪ねたのであった。まさか、神官もこんな朝早くから人が訪ねてくるとは思っていない。見た目が少し年老いた神官であろう男が、少しばかり眠そうな表情を見せていたが、ゼクスの前に姿を現した。
神官『こんな朝早くから誰かと思ったらスロイドん所の倅か。随分と大きくなったもんだな。そういえば、今日がお前さん誕生日だったな。とはいえ、昨年の姉のシレーヌもそうだが、ちとせっかちすぎんかの?』
こう漏らすのは神官として勤めて50年にもなる神殿の中において最高位にあたる神官長を勤めているイザークである。イザークはゼクスの両親であるスロイドとシセルの成人の儀も行っており、スロイド家とは旧知の仲でもある。そんなイザークだからこそ、朝早くからの訪問にも嫌な顔1つせずにゼクスへ対応しているのであった。他の神官であれば、間違いなく朝早すぎると愚痴の1つでも漏れそうである。
ゼクス『今日やっと成人の儀が受けられるとなったらいてもたってもいられなくてね。俺、絶対に冒険者に役立つジョブを貰いたいし、昨日はずっと神様にお祈りしてたんだぜ?普段なら絶対にしないけど…。でも、姉さんは前日に祈ったら良いジョブ貰えてたからさ!』
そう漏らすゼクスであったが、そんなゼクスに呆れたようにイザークは話しかける。
イザーク『あのな?ゼクスよ。言っておくが、祈った所で自分のジョブってのは既に決められてるもんだから1日祈った所で変わりゃせんよ。まぁ、お前さんが祈るなんて珍しい事ではあるから、もしかしたら神様も見てくださってるかもしれんがな。ただ、神様だって朝早くからジョブを授けたくないと思っとるかもしれんぞ?』
冗談なんかも交えながら話をするイザークであるが、実際のところゼクスの事を我が孫のように思って接しているのである。イザークは結婚はしたものの、奥さんには3年前に先立たれ、子どもにも恵まれなかった事もあり、ゼクスやシレーヌに対しては他の子どもと比べて特別な感情を抱いていた。神官という立場であるからこそ決して特別視する事はないが、気にかけているのは事実である。そんなイザークの気持ち等露知らず、ゼクスはまくし立てるように話しかける。
ゼクス『まぁ、いいや。とりあえず早く済ませよう!姉さんが騎士だからなぁ。俺は戦士や剣士、欲を言うなら魔法剣士とか。なんにせよ、剣を主体とするジョブなら当たりかな。避けたいのはやっぱり非戦闘ジョブだけど、嫌とはいっても確率的には普通にある。なるようになるかな、さっ早く頼むぜおっさん!』
それから2人は二三会話をしながら、イザークと共に奥の部屋へと進んでいく。この奥の部屋こそ儀式の間と呼ばれ、15歳となった者にジョブを授ける為の部屋である。儀式自体はとても簡単で、魔方陣のような印の中心に立ち、目を瞑り神に祈りを捧げる事で、神官が適正であるとされるジョブを神より受け取り、それを本人に伝えるのである。イザークは陣の中心に立ったゼクスを見て、緊張した様子も見受けられたが、期待の眼差しが簡単に見て取れた。
イザーク『では、始めるぞ。目を瞑り神に祈りを捧げよ。さすれば、真なる力を授かり己の力とせよ。』
イザークが口上を述べるとゼクスは目を瞑り神様に祈りを捧げた。すると、イザークの頭の中に直接、言葉として神託が下されたのである。
???『少年ゼクスに新たなる力を、源を、進むべき道をここに示さん。ゼクスのジョブは[いし]である。世界に平和を、安らぎを、癒しを。』
本作品を見て頂き有り難う御座います。
細々の更新となりますが、良かったらこの作品を末長く見て頂けると幸いです。
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