第一章 序章
【あらすじ】
この世界では全てにおいて、ジョブと呼ばれる自分の適正職業が未来の全てを決めると言っても過言ではない。人は15歳になると街にある神殿にて、自分の適正であるジョブを、神託を神官より承ける事が[成人の儀]と呼ばれている。戦士や狩人等の戦闘に役立つものであれば冒険者としての道を選んだり、自分が思うままに仕事を選んだりもする。また、非戦闘職である鍛冶師や宿屋といったジョブも勿論存在し、泥棒等の印象の良くないジョブになる場合もある。全てはジョブという決められた人生をを歩んで行くことが、この世界における大筋の道、所謂未来とされている。
そんな中、1人の青年が自分のジョブという概念を覆し、本来であれば想像し得ない未来を突き進んでいく姿を描くのが本作である。ジョブという枠組みにとらわれず、ただ、ひた向きに自分の夢へ進む。そして、さまざまな人と関わりながら、時には助け、時には共に戦いながら成長していくストーリーである。
時は太陽暦1804年、雨月7の12日に王都セントニアから南に離れた都市サウストの平凡な一般家庭に1人の男の子が産まれたところから物語は始まる。
その子はゼクスと名付けられ、すくすくと成長していき、時は太陽暦1819年にまで進むこととなる。
始めに、太陽暦とは16月からなる周期となっており、一月あたり20日となっている。1~4月は霜月、5~8月は雨月、9~12月は緑月、13~16は乾月となっている。
霜月は寒い日が多く、作物を育てるには向かない環境であるが、日が射す事が多い事から寒さに強い品種であれば育てることは可能である。また、動物たちの活動は減り、狩猟等はしにくくなる。
雨月は名前の通りに雨がよく降る時期である。寒さが和らいでいき、日に日に暖かくなっていくことから作物を育て始める時期でもある。しかし、雨量によってその年の収穫量が左右される事が多々あるのである。
緑月は始めのうちは暑さが残るものの、太陽暦の中では一番過ごしやすい月である。暑さが一段落すると、すぐに収穫期へと移り変わり、その年の収穫量が少ないと、この後に来る乾月が過ごしづらくなる為、どの街や村でも大切な月である。
乾月は寒さは無いが雨が殆ど降らない月で、作物が全く育たない。魔法師と呼ばれるジョブの持ち主がいれば、魔法を使って水を出し作物を作ることは可能ではあるものの、そもそも魔法師が少なく、魔法師がわざわざ作物を育てない事もあり、備蓄した食料で過ごすことになる。
これらの4月を繰り返すが、4年に一度に限って訪れる無月なる月も存在している。雨月の後に100日にも及ぶ長い月で、この月には一切日が射す事がない。月明かりのみというとても暗い月であると同時に、雨月と緑月の間にあるにも関わらず寒さが霜月を凌ぐ程で、雨も一切降らない。4年に一度ではあるが、備えが無いと暮らしていく事が出来ない、とても過ごしにくい月である。更に、魔物と呼ばれる生き物が活性化することで街に被害が出やすい月でもある。
ただ、デメリットだけではなく、勿論メリットも存在している。1つ目は、魔物が活性化する要因でもある魔力が世界中に充満し、魔法師等のジョブであれば普段よりも自らを鍛えあげたり、魔法の威力を底上げしたりすることが容易になる。また、魔力が充満する事で特殊な植物等が採れる時期になるため、魔物の活性化も伴って冒険者と呼ばれる職にとっては稼ぎやすくなる月でもある。
最後に、簡単に魔法を使う魔法師について触れていく。魔法師とは所謂、魔法と呼ばれる力を使うことが出来るジョブである。勿論、他にも魔法を使うことが出来るジョブも多数存在しているが、ここでは割愛する。魔法には火や水といった属性があり、自分にあったものを使うことが多い。また、魔法師は先に挙げた通り、かなり少数でさまざまな仕事や職から優遇されやすいジョブでもある。簡単ではあるが、これくらいで説明とさせてもらう。
太陽暦1819年雨月7の12日、ゼクスの15歳の誕生日を迎えたこの日より物語は始まるのであった。