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けいおす・みそろじー  作者: 藍玉
アリシアの章 2130年 機械人形は魔法を夢見て拳を握る
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四節:腕力系メイドロイドアリシア

 加瀬はひざまずいて2分ほど黄昏れた後、すっと立ち上がって泉を見る。


「外装担当泉くん。どうしてこんな姿になったのかね。」


 加瀬は混乱から立ち直りきっていないようで変なテンションで尋ねる。


「最初に声を聞いた時にさ、すっごい綺麗な声だったからさ。だから綺麗なおねえさんっぽく仕上げてみました。胸はそこそこにすらっとした長身美人を目指しましたっ。」


 泉も完成が嬉しかったのか割とテンションがおかしい。加瀬は柳に振り返って尋ねる。


「では柳くん。泉と何かしていたようだけどこの衣装は何かな?」


「え?かっこかわいいよね。メイド服と言えばロング!高めで綺麗なアリシアならきっと似合うと思ったよ。」


 力説する柳を見て、柳の趣味だったようだと加瀬は脱力する。


「マスターにご奉仕する身分なればこの服は正装であると愚行致します。」


 抑揚は少ないのに随分力強くアリシアは語った。


「君の意見も入ってるのか。仕方ないにしろ外に出すには抵抗感のある代物ではあるな。」


 加瀬はアリシアを見ながら言う。


「ご心配は無用です。ご要望に合わせて西洋の田舎娘風、ダンスホールの貴族風、男装の麗人、着物、くノ一、あからさまな探偵風等各種データを取り揃えております。」


 アリシアは服をころころと切り替えながら淡々と解説しメイド服に戻ってお辞儀をする。


「誰の趣味だってくらいいびつな取り揃えだな、おい。ていうか異空間収納まで内蔵してるのか。」


 加瀬が呆れてぼやいて周囲を見回すと、全員がそっぽを向いている。どうもみんなでこそこそやっていたらしい。


「一部服装は収納しておりますが殆どの服装に関してはその都度データから物質化しております。」


 加瀬がえ?っと柳に振り返る。


「彼女自身が魔法を使ってるわけじゃないんだけど、例のシステムを使って結構な種類の魔法を再現できるようになってるんだよ。基本術式については長谷川くん提供だけどアリシア自体が必要に応じて改変開発してるみたい。搭載した覚えのない魔法まで使えるようにはなってたよ。」


 柳は機能について説明する。


「俺のシステムのはずなのに知らないことが多すぎる。みんな何を乗せたんだ。」


 加瀬が少し落ち込む。


「思考基盤、駆動方式、空間骨格構成等わたくしを構成するすべての基礎はマスター加瀬のおかげでございます。」


 アリシアがフォローを入れる。加瀬は、ありがとなとアリシアの肩を叩く。


「んー、運動性はどうなんだ?」


 柏木が少し悩み気味に真面目な顔で尋ねる。


「基本稼働状態で初速40km/h最大105km/hで無期限に走破稼働が可能です。制限魔力運用時初速130km最大480km/hで10時間の走破稼働が可能です。爆発跳躍で瞬間的にのみ最高速1320km/hがフルチャージ状態から連続的に20回起動が可能です。反転運動についてはSS稼働率30%以下の場合全力移動における全慣性を相殺できます。」


 アリシアが淡々と延々と解説をし始めて、柏木が待てと止める。


「とりあえず無茶苦茶速く動くのは理解った。SS稼働率ってなんだ?」


 走破速度、足で走る速度はちょっとした魔法使いなら時速200km。優秀な魔法使いでも時速350kmである。実際の運用では、それ以上速く動くなら飛行術を使ったほうが速くて便利という話もあるが。柏木が途中に出てきた不明な単語を尋ねる。


スペル(Spell)スピーク(Speak)システム(System)。アリシアに搭載しいているスピーカーで魔法を再現するってやつのことだよ。アリシアには基本状態で5000の小型スピーカーが搭載されていて一つ単位で目的に合わせて必要な数を連動させることで大きな魔法を再現しているんだ。SS稼働率っていうのは動作中のスピーカー数の割合だよ。」


 柏木の疑問に柳が答える。


「聞こえる必要がないっていうからそれこそいろんな空間に頑張って詰め込んだよ。」


 加瀬が作業の苦労話を語る。


「人工筋肉だけで稼働するのが基本稼働状態。SSSを使って魔力を纏うと魔力運用状態ってことだよ。全力スペックだとSS稼働率100%だから、事実上即時反転は難しいかな2秒位ブランクが出るはず。」


 加瀬が続けて説明して、反転する頃には250mは先かなとぼやく。


「んじゃ、戦闘稼働時はどうなんだ?いやもうやっちまったほうが速いか。ちょっとアリシアと模擬戦したいんだがいいか?」


 柏木がひとしきり悩んで、申し訳無さそうに全員に聞く。


「なんのために戦闘プログラム仕込んでるかと思ったら何企んでるのよ。」


 泉は胡散臭げに柏木に聞く。


「いや戦闘プラグラムに関しては本当に自衛のつもりだった。こんなもん歩いてたら絶対茶々入れられるしな。ただ、ハセと柳の悪ノリせいで思いの外戦闘力が高く見えちまって・・・もし及第点なら今抱えてるヤマにアリシアがぴったりなんだよ。」


 柏木が少し必死に弁解する。


「んじゃそのヤマってのを話しなさいよ。相談ならそっからでしょう。」


 泉はなお胡散臭そうな話に眉をひそめて聞く。


「いやうちの仕事の案件だから一応守秘義務がある。筋モンとか言われる部類っちゃそうなんだけど、そこにはそこの義理とけじめってルールがあんだよ。そもそもアリシアが使えないなら話しちまったら先方の不都合になっちまう場合がある。流石に話せねぇ。」


 柏木が必死に解説する。


「無理な案件なら断っちゃえばいいんじゃないの?」


 長谷川はのんきに言う。


「断るにしても面子があるし、相手さんのご機嫌伺いのこともあってすっぱりは断りづれぇんだよ。」


 柏木は困ったように言う。


「んー、まあここなら多少のことしても直せなくは無いけど・・・アリシアはどうなんだ?」


「私は柏木様が望むならそれにお答えしようと思います。確かに私なら先方の条件を満たせると思います。」


 加瀬の確認にアリシアが淡々と答え、それを聞いてぎょっとした顔で柏木はアリシアを見る。


「え?アリシアはそのヤマの話聞いてるの?」


 泉は不思議そうに尋ねる。


「いや、そいつには何も話してねぇ。うちの会社に侵入しやがったな?」


 柏木がアリシアを睨みつける。


「以前ネットワーク上で柏木様とお話した時に拾った話しと柏木グループの海外の動きから見た推察でございます。契約書のたぐいは誓って見ておりません。」


 アリシアは柏木を見て涼しげに答える。


「そうか・・・それならしょうがねぇ。ただ、お前の言うことだけを信じるわけにはいかねぇ。そこはわかるな。」


 柏木は襟を整えてアリシアに言う。


「はい。ご要望ならそれに従います。ただ、他のマスターの方々に止められる場合はその限りでは有りません。」


 アリシアはうやうやしく礼をしながら告げる。


「というわけだ頼むぜ、みんな。」


 柏木は順に全員を見る。


「私は反対よ。アリシアが殴られるなんてまっぴらよ。」


 泉は心情的に反対する。


「僕も反対かな。人と戦える仕様ではないと思うよ。」


 柳は自分の組んだシステムを知っているが故に反対する。


「柏木はそうしないと納得しないんだろ。なら昔からその通り突っ走るしかないだろ。最悪俺が直してやんよ。」


 長谷川は容認する。全員の目が加瀬に集まる。加瀬は少し悩んで覚悟を決めて宣言する。


「メインマスター権限によりアリシアと柏木の模擬戦を承認する。直接打撃は頭部以下とし個人の可能な範囲での魔法を使用可能とする。戦闘範囲は法律に定める結界の範囲内のみで行うこと。当事者の行動不能、意識不明、降伏、または両者の停止提案、結界内への第三者の侵入があった場合に戦闘を停止するものとする。」


 加瀬は考えていた内容を伝える。


「頭部以下とはぬるい設定にしたな。」


 柏木は戦闘が許可されたことについて喜びつつもルールについて突っ込む。


「頭部以下にしたのは委員長の心情を考慮するのと、万が一の場合におけるお前の保護だよ。」


 加瀬は少し困ったように言う。


「けっ、俺も舐められたもんだな。」


「舐めてるつもりは無いけど、アリシアに頭部打撃は無意味だしね。安全面を考えるとやっぱりね。」


 柏木が憤るが加瀬がアリシアの身体的特徴を盾に押さえる。


「ハセ。結界の方を頼む。」


「俺かよ。柳かと思ってたのに。」


「君のほうが実戦を通じてそっちのほうは詳しいだろ?」


 加瀬の頼みに長谷川がしょうがねぇなと長杖型デバイスを取り出して準備する。


「へー長杖なんだ。ちょっと意外。」


 泉は興味深そうに杖を見る。


「日本だと銃刀法のからみがあってかっけーのが難しいんだよ。結局運用バランスのいい長杖が一番安全だったってオチ。」


 長谷川は残念そうに言う。魔法があるのに銃刀法とかいまさらだよねと柳が会話に混ざる。


「んじゃ展開するぞ。50m四方で稼働は20分だ。いくぜ。【無銘監獄】」


「ちょっとまてだいぶせめーぞ。」


 柏木は文句をつけるが長谷川はお構いなく術式を完了させる。魔法は五人と一台を巻き込み荒涼とした岩の大地に送り込む。柏木はぶつぶつ言いながら右手にアサルトライフル、左手に警棒を構える。


「うわ、なにそのスタイル。むしろ警棒に違和感を覚えるわ。」


 長谷川が柏木の構えに思わず突っ込む。


「日本じゃあまりつかわねーけどな。あっちじゃ割とあるんで使わせてもらうぜ。」


 柏木がどこからか持出したタバコを加えながら言う。


「デュアルスタイルとか魔力すごいね。何仕込んでるか楽しみだよ。」


 柳は反対していたものの柏木のデバイスに興味津々である。


「アリシアー。遠慮はいらないからぶっとばしちゃいなさい。」


 泉は完全にアリシア側。アリシアと柏木はお互い30m離れたところで対峙。


「両者5秒間魔力励起。0,1,2・・・」


 アリシアは立ったまま一礼し、柏木はセフティを外しライフルに魔力を充填する。


「カウントダウン5,4,3,2,1,始め!」


 加瀬の合図とともに柏木がライフルのトリガーを引く。ライフルの先端から小さな水晶弾が毎秒5発放たれる。対してアリシアはそのまま真っすぐ突っ込む。


-連動15%:腕部硬度強化を3秒展開-


連続で飛んでくる水晶弾をアリシアは左手で弾きながら柏木に向けて接近する。残り20m。


「ち、やっぱちけーな。ショットガンにすりゃよかった。」


『あるは石。捧げて敵を阻む鉄となれ。』


 柏木はライフルから水晶を飛ばしながら詠唱する。ライフルから放たれる弾は横回転する1m強の五角形に変わりアリシアの進路と視界を塞ぐ。アリシアは目の前に出てきた壁に対して直角に曲がり回避する。その動きをライフル弾で追いながら柏木はアリシアから離れるように動く。


「ちょっとずるくなーい。」


「うっせーだぁって見てろ。」


-腕部硬度強化終了-


 泉のヤジに柏木がわざわざ反応する。アリシアは壁の切れ目を縫うようにジグザグに動き柏木に迫る。残り18m。


「さて終わんなよ。」


 柏木は呟きながらライフルをトリガーする。ライフルの先端が小さく光り、アリシアにむけて赤いレーザーが放たれる。光が見える前の段階でアリシアはそれに反応し内部で魔法を励起させる。


-65%連動:対抗偏光防壁を2秒維持-


 アリシアに瞬間着弾すると思われたレーザーはアリシアの2m手前で上方明後日の方向に折れ曲がって進んでいく。アリシアは結果を確認するまでもなく柏木に向かって走り進む。残り12m。柏木はふんと鼻をならし、レーザーを停止しライフルのトリガーを引く。


-20%連動:脚部身体強化350%を2秒維持-


 アリシアが左斜め上に跳躍しアリシアがやってくるであろう地面から広範囲で槍衾が伸びる。飛び上がったアリシアに向けてライフルを向けトリガーを引く。アリシアは左手を下に向けてアンカーケーブルを射出し金属の棘の一つと結びつける。


-対抗偏光防壁終了-

-5%連動:アンカーケーブル強化1秒-

-70%連動:斥力シールド脚部周辺展開1秒-


 アリシアの跳躍移動に合わせてライフルから中型の水晶の散弾が飛んでいく。アリシアの移動は11mのアンカーに遮られて突如進路を変える。急転換に合わせてアリシアは跳び蹴りの構えで固める。散弾は斥力シールドに阻まれアリシアの周囲に進路をずらされる。120km/h(34m/s)のアリシアの蹴りが柏木に迫る。


「まじk」

「アリシアキィィ」


 両者の言葉が最後まで紡がれる事無く0.5秒後には柏木のいた地点に大爆発が起こる。爆発の粉塵が収まることなく鈍い打撃音が響き始める。粉塵から折れ曲がったライフルが飛び出してきて観戦者の視覚を奪う。


-脚部身体強化5秒継続-

-アンカー投棄-

-斥力シールド終了-

-連動20%:腕部身体350%強化を5秒維持-


 アリシアが右拳を打ち、柏木が左手で上へ払いのける。そのまま柏木が体を沈ませながら右足払い。アリシアがその足を正確に踏み抜こうと左足を動かす。柏木は魔法で足払いのベクトル変更しを脇への蹴り上げへ変更する。その蹴りをアリシアは左手で受け流しつつ、右肘を曲げながら滑り込むように上半身を倒し込み柏木の胸に肘鉄を打ち込もうとする。柏木はその肘を右手で受け止め両者の運動エネルギーを反発するように増大させる。結果柏木は反動を利用し後ろにステップし、アリシアはありえないほどの勢いで吹き飛んでいき空中で体を捻り態勢を整えて滑りながら右膝をついて着地。予想外の吹き飛び方だった柏木は少しほうけてアリシアを見つめ、加瀬と柳はその状態をみてあちゃーと頭を押さえる。アリシアはゆっくりと立ち上がり直立する。


「マスター加瀬。第一魔力制限解除の許可を求めます。」


 アリシアが柏木の動きを見ながら加瀬に言葉を投げかける。加瀬は少し首をひねって悩み。


「許可する。」


 と言った。アリシアが両手を下手に広げ大きく息を吸うように上半身を動かす。


-連動80%:認識阻害を5秒維持-

-連動10%:空間収納干渉-

-連動5%:拡張バインダーマナリンク-


 アリシアの体が視認困難なように見えづらくなるとともに膨大な魔力反応が発生する。


「柏木。全力防御推奨。」


 加瀬が投げやりに柏木に言う。言われるままに柏木が積層防御壁を展開する。


-連動980%:ケラウノス発射-


 揺らめくアリシアから幾条もの雷の束が柏木に向かって伸びる。雷らしい轟音を響かせ柏木のいた付近に着弾。バチバチと恐ろしい通電音が響き、一際大きく弾ける音がして雷が収まる。周囲にオゾン臭が立ち込める。


-全SSS強制終了-


 アリシアの姿が直立不動で現れる。


「ちょ、ちょっとやりすぎじゃない?柏木くん生きてる・・の?」


 雷の音に驚いて頭を抱えてしゃがみこんでいた泉がおそるおそる柏木のいたほうを見る。


「流石にケラウノスはやばかったかな。」


 柳が冷や汗を流しながらぼそっという。


「いや流石に受け止めるのは無理。緊急用のヤツで逃げた逃げた。」


 結界の隅から柏木がとぼとぼ歩いてくる。


「ていうかあれなんだよ。やりすぎにも程があるだろ。殺す気かぁ。」


 柏木が柳の頭をしばきながら叫ぶ。


「戦闘終了で宜しいでしょうか。」


 アリシアが騒いでいる柏木達のほうを向いて尋ねる。


「終了でいいよ。だいたい理解っただろ。」


「畏まりました。戦闘状態を解除します。」


 アリシアは騒いでいるのを見ながら深く一礼する。

柏木は100~300mでの戦闘を考えていたので50mは狭いと文句をつけていました。そもそも初速からして1秒で10mを走るアリシアの前に30mとか油断即終了の状況が見えていたのもあります。

アリシアの内部処理メッセージについては周囲には聞こえていません。


銃型デバイスは触媒となる実弾を射出しつつ簡単な魔法を展開できるというメリットを押し出した製品になっています。事前に弾種を変えることで目的のあるミッションには向いていますが、予想外のことがあった場合それを用意できていない場合対応が難しなることが臨機応変なタイプには嫌われています。


技名は最後まで叫ぶのが礼儀かと思いますが技の展開から着弾まではちょっと短すぎたので・・・


本ケラウノスはドイツ開発の対個人電撃系攻撃魔法で、対象を電撃で拘束し焼き焦がし後にはプラズマが残るのみという感じになる殺意てんこもりの魔法です。当たったら柏木は死ぬ。

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