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けいおす・みそろじー  作者: 藍玉
如月竜馬の章 第二部2127年 英雄たちの選択
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九節:梨本家強行捜査

 竜馬達は翌日にスバルの工場の一角を借りて対策作業を行う。魔法陣の構築と刻印そしてキューブ化。試運転と微調整。作業と準備に3日を費やした。


「術の傾向からしてこれで大丈夫なはず。」


 竜馬はキューブを並べる。


「私的にはそれ一つで無双の気がしますけどね。」


 近藤は一つのキューブをつつく。


「攻撃種類が限定されすぎるからな、バレたら不毛になる。」


「用心深いですなぁ。結界の対策は?」


 近藤は答えが概ね分かってはいるが一応確認する。


「屋敷のはそれこそそれで十分かな。個別に張られたらその都度確認するしかないけど、近藤の解析情報を元に破壊できる術式は組んであるよ。」


 竜馬は落ち着いて答える。そう話を詰めていると扉がノックされる。


「如月様。依頼されていたデバイスの改修が完了しましたので確認をお願い致します。」


 工場の作業員が連絡に来たようだ。竜馬は、すぐいきますと返事をしてキューブをしまい、近藤を見てついてくるように促す。作業員につれられて作業場のテーブルには1mほどの白い盾が置いてある。竜馬はその小さめのカイトシールド持ち上げて左腕に取り付け軽く左腕を振る。魔力を込めたり抜いたりしながら使用感を確認する。確認している所に主任が来て挨拶をする。


「この度はご依頼いただきありがとうございます。ご希望に沿った形になっておられるでしょうか。」


「ありがとう。僕も使うのは始めてだから細かくは言えないけど、良いように仕上がってるよ。」


「それはどうもありがとうございます。お持ち込みのミスリルのおかげで重厚型でありながら小型化軽量化、大容量化などすべて要求以上に満たせております。」


「なにか不具合とかあったらまた調整させてもらうよ。今はこれで大丈夫。余った素材は契約通り支払いの一部に回しておいて。」


「かしこまりました。ご利用いただきありがとうございます。」


 竜馬は主任と工房の作業員に挨拶してから工場をでる。


「えげつないもん作りましたね。ミスリルとかどっから持ってきたんですか。初めて見ますわ。」


 工場をでるなり近藤は盾を見て言う。


「以前徳子さんに聞いててね。国内エルフの人たちに譲ってもらったんだ。」


「へー、外出申請してると思ったらそんなことを。」


 現在のデバイスは主に従来の地球に存在する材料で作られている。鉄、アルミ、チタン、マグネシウムなどの合金が使用されている。重量、強度については魔法陣などで調整できるが元の素材の強度や重量が変化後と剥離するほど常駐魔力量が増えるので用途に合わせて頑強、軽量であるに越したことはない。そんな中でファンタジーな物質はないかという意見もあるのだが、差別の歴史のある人外種にそれらのことを確認するのが困難であることもあり、また手に入れたものも秘匿したり人が来るのを嫌って秘密にされているケースが多く流通は極わずかであった。地球上にミスリル鉱床などあるかはわからないが彼らはそれらの素材を持っているのは確かであった。竜馬も存在自体は知らなかったが徳子に質問したときに存在と特性を確認していたので入手に至っている。ミスリルは原石からの加工段階で特性が若干変化するようで、竜馬が手に入れたエルブンミスリルは軽量できらびやかな白銀色である。ドワーヴンミスリルはより頑強で鈍い黒色銀である。どちらも地球上の物質から見れば無加工でも強度は遥かに高い。反面加工は魔法と合わせて行う必要があり若干手間なところがある。


「もうちょっといろいろ試しながら作ろうと思ってたけど、使ってみないとわかんないことも多いだろうし思い切ってね。」


「高そうな素材なのに思い切ったことで。」


「当時はお金で手に入れたわけじゃないから気にしなかったけど、最初聞いたら流通価格でキロ200万くらいだってさ。」


 竜馬はうへっと微妙な顔をしながらいうと、近藤もうわーという顔をする。


「まあ、最悪鋳潰して作り直すとして、今は今できることをするさ。」


 竜馬は盾にデバイスを組み込みながら自分に語りかけるように言う。


「予定通りとんでもない調査になりましたねぇ。」


 近藤はしみじみ自分のデバイスを準備しながらつぶやく。


「8割位近藤のせいだよね?」


 竜馬は近藤を見上げて言う。近藤は笑ってごまかした。


「ここから飛行で大回りで沼田市北の山林に侵入。そこで魔力チャージをして梨本家まで。イセリアルシフトで結界を抜けてから楓さんの確保が見込みかな。もし戦闘になった場合、杉夫と樫男は任せる。僕は唐松と可能なら巨大樹の敵性調査をする。」


「できればそのまま楓ちゃんと愛の逃避行と洒落込んでほしいですけどなー。」


「ちゃかすな。今度は遅れを取るなよ?」


 竜馬は近藤の太ももを叩きながら言う。近藤はがってんっと腕をあげ答える。

 15時頃、隠蔽を行いながら梨本家裏の山林までたどり着く。竜馬は気配を抑えながら指向性魔力探査を梨本家方面に飛ばす。


「思ったより警戒されてるな。警報がだいぶ手前側まできてるし3重になってるね。流石に結界の位置は変えてないか。」


 竜馬は確認した後一息ついて周辺魔力を集めて吸収する。


「ギリギリまで近寄ってから長めになりますがシフトしますかい?」


 近藤はどこからかジャーキーを取り出してかぶりつきながら聞く。


「ちょっと安くなりそうな手を考える。」


「ドローンでも使いますか?」


 近藤はダミー飛行物体でつついたらどうかと言う。


「僕らが通過する警報の解析と解除に手間がかかりそうだ。ドローン程度だと樫男が出てきて終わりだろう。」


「ドッペルは?」


 術者の姿を模した人形を作って突撃させるという。


「普通、警報に種別感知がついてないかね。偽装するほうが手間そうだ。」


「近所のお友達に頼みますか。」


 近藤は謎の提案をする。

「近所ってどこだよ。市外に改めて出るのは時間的にめんどくさいぞ。」


 近藤はまぁまぁと仕草をしながら、何かに確認を取っている。


「厳密にはお友達ではないんですけどね。了承が取れましたんで合図が来たら突貫しましょう。偽装ち隠蔽は私がしますんで。」


「はぁ?わけわからんぞ。」


 竜馬は何をするつもりなのか問いただそうとすると、近藤は気配偽装の魔法を使う。


「これは?有翼種か?」


 近藤は御名答と言って上を指差す。50体を越えそうなハーピーの群れが上空を駆け抜けていく。


「近藤いつの間に。あれは敵対人外種じゃなかったのか?」


 竜馬は驚いて尋ねる。


「備えあれば患いなしっていうことなんですけど。彼女らは敵対種ではないですよ、沼田市に追い立てられたからちょっかいかけてるだけです。だんだんエスカレートしてしまったようですけど。気性は荒いですけどそれほど悪い奴らではないです。さぁ隊長紛れていきますよ。」


 近藤は竜馬の手をとって走り出す。竜馬は少しバランスを崩しながらついていく。


「彼女らには警報に触りながら梨本家をかすめて街の方に行ってもらいます。誰かがでてきたら大きく迂回して山林に戻ります。何か動きがあったらシフトしてください。」


 近藤は走りながら説明して、竜馬はうなずく。程なくして屋敷から樫男が上がってくる。


(ま、先日も対応してましたし、今日のことを考えればそうなるのは予定通り。)


 近藤は動きを見上げながら竜馬を見る。竜馬は頷いて、盾を召喚しイセリアルシフトを起動する。二人の体は輝霊界に推移し、現実から姿を消す。程なくして結界を越えた梨本家北側に姿を表す。


「何度目かわかりませんが慣れる気がしませんね。ふよふよしてて右も左もわかりゃしない。」


 近藤は現実に戻ってきてから気持ち悪そうに息を吐く。


「僕も実現はできていないけどある程度空間の意思の方向を決めてやれば安定するとか言ってたけどさっぱりだね。」


 竜馬は手のひらを返してお手上げと言わんばかりに返す。かつての敵のように自由にできればよかったのだが、いざ輝霊界に入ってみると乳白色の輝きがゆったりと無作為に流れる何もない空間で人間に認識できない空間に満たされており、重力がないせいか非常に気分が悪くなるものだった。徳子に質問してみたが基礎的なことを教えてもらえたが、詳しいことについては沈黙された。自力ならともかく教えるにはまだ早いということらしい。シフト酔いが概ね引いた所で竜馬は近藤を見て手上げさっと梨本家へ向け無音で走り始める。近藤も無言で頷いて追従する。塀の手前で大きくジャンプし、飛んでいる間に魔力探査を周囲に行う。竜馬は近藤を見て杉夫がいる方向に手を向ける。近藤は頷いてそちらへ向かう。竜馬は楓がいるであろう方向に向けて屋根を走る。

人外種が出てきたところで魔法金属が世に出てくる予定でしたが、早々に敵対してしまったためうまく流通しませんでした。この手の研究は遅れ気味になっています。

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