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けいおす・みそろじー  作者: 藍玉
如月竜馬の章 第二部2127年 英雄たちの選択
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八節:副隊長のおせっかい

 近藤は思索を巡らせるのが好きではない。全く考えないわけではないが考えすぎるより先に動いたほうがいいと思っている。竜馬から聞いたことが事実なら梨本家は犯罪者だ。ならばその辺を突きながら立ち回れば人さらいの一人や二人などと不埒な事を考えている。


(相手が限りなく黒いならそれなりに手を合わせるってもんですよ。)


 近藤は梨本家の結界の前に立ちデバイスに魔力を込める。デバイスで結界を叩き結界の術式を確認する。


(ふーん。こちらも事前調査のままですね。少しはいじってくると思いましたが間に合わなかったのか後回しにしたのか。もしかして破られるわけがないと思ってるとかぁ?)


 近藤はポーチからキューブを取り出し魔力を込めて魔法を起動し。


「ちゃいやさー。」


 気の抜けた掛け声とともに結界を殴り飛ばして境界を破壊する。それと同時に屋敷全体に魔力探査を走らせる。使用人が5人。梨本家一族が6人。全員揃っていることを確認して巨大樹を見上げる。


「ま、十中八九これしか無いと思ってましたが。」


 巨大樹から樹海圏の魔力痕跡を確認しつぶやく。


「たーのもーぅ。」


 近藤は叫びながら正門を飛び越えて屋敷の中に入る。再度探査を起動し、向かってくる者が2人、一点に駆けつけようとする動きが3種。中でも一点に二人が駆けつけているところを確認する。


「一度くらい顔合わせしておきたかったところですが、多分あれでしょう。」


 誰とも知らない魔力パターンは人物を特定しようがないので保護されにいったであろう一点を楓であると決める。そちらに接触に走り出した所で刀を持った老人と使用人であろう女性が目の前に現れる。


「早速坊主が来たと思ったら一緒にいた兄ちゃんのほうかい。」


「避けるつもりだったんですが、ご隠居さんもお早いおつきで。」


 近藤は長杖デバイスを構えて立ち止まる。


「一応不法侵入だから問答無用で追い出すぞ?」


「できれば見なかったことにしてほしいですね、っと。」


 杉夫の宣言に答えるように近藤は目の前の二人にネットを三重に飛ばして屋根に向かって飛び上がる。控えていた使用人がさっと手を上げる。それに合わせて地面から木の杭が飛び出しネットを絡め取る。


「わしから逃げられると思うなよ?」


 杉夫はそう言って下手から刀を振り上げながら猛スピードで近藤に迫る。近藤ははっとした顔を向けて杖で刀を受け止める。鈍い金属音がした後、近藤がまじかとつぶやいて力なく落下する。地面に激突すると共に右腕部、左肩口、左腿がばらばらになて辺りに散る。


「わしに見つかった時点で詰みよ。柴崎さん、すまんがそれを片付けて結界外に置いておいておくれ。すぐに回収にくる。」


 杉夫は柔らかく地面に着地して近くにいた使用人に近藤を外に運ばせる。


「どうして首を落とさなかったんだ?」


 近藤が運ばれながらだるそうに聞く。


「さすがにそこまでヤってしまうと過剰防衛で警察が調べざるをえん。だがこの程度なら見ぬふりくらいはさせられるよ。」


 ほっとけば確実に死に至る怪我であるが、近藤なら血を止めて延命はできる。この後に竜馬が来ると見越しての行動のようだ。


「おみそれしました。こんなんだったら最初から真面目に相手しとけばよかったわー。」


 近藤は軽口を叩きながら運ばれていった。竜馬が梨本家に到着するころ使用人が結界端で一輪車に近藤を乗せて待っていた。使用人は竜馬を見て一礼してから、お返ししますと言って屋敷に戻っていった。


「すんませんたいちょー。やーられちゃいましたー。」


 近藤は悪びれる様子もなく半分になった右腕を上げて竜馬に言った。竜馬は顔に手をあてて、まじでやりやがったと呟いて天を仰ぐ。落ち着いて深呼吸して近藤の四肢を取り付け治療を施す。


「取り敢えず県市外まで引くぞ。」


 竜馬は近藤を抱えて転移する。市外を出て公園のベンチに近藤を寝かせて往復してホテルから荷物をとってくる。戻ってきてベンチに座っているの近藤をみてほっとする。


「で、後始末どうすんだよ、これ。」


 竜馬は近藤の隣に座って頭を抱える。近藤は乾いた笑いをしている。しばらく沈黙した後、近藤は口を開く。


「あのおじいちゃんが思ったより強くてですねぇ。最初から戦うつもりならまだましだったかもしれませんが、片手間に置いておこうと思ったのが失敗でしたね。」


「確かに僕も割とすぐ駆けつけたつもりだけど、あれほど短時間であんな事になってるとは思わなかったからね。」


 近藤の話を受けて竜馬はため息をつく。夕方の赤い光とカラスの鳴き声が思いの外心を沈ませる。


「それほど防御に手を抜いたつもりは無かったんですけど・・・魔力が無制限に供給できるってのは思ったより厄介ですね。種は単純明快でした。ワンアクションで27の魔法を同時発動させてましたね。15,6くらいの魔法で防御を完全に割られてばらばらにされてしまいましたわ。」


 近藤はぱっと両手を開いて解説する。竜馬ははぁ?と言った感じに惚ける。


「デバイスに組み込まれたキューブを全部励起させて一斉放射か。理論上は可能だけど、普通に考えて魔力が足りなくてやらんよねって方法だな。」


 キューブに必要量の魔力を込めた後起動の魔力を流すとキューブの魔法が発動する。起動させなければいくらか待機させられるがキューブに込められた魔力は徐々に霧散するので待機させるにはそれなりの魔力が必要になる。魔力の回復量と容量の関係で通常同時発動できる魔法の数は規模にもよるが2~6個くらいとされている。それを30近い数を発動させているとなると巨大樹の恩恵が如何に大きなものかがわかってくる。


「先日の樫男の運用をみるとそんな使い方はしていなかったが、彼は知らなかったのかな?」


 竜馬は単純に疑問に思う。


「彼も修行過程で実践訓練として簡単な魔法と理論だけ与えられていたみたいですね。」


 竜馬は胡散臭いと思いを込めて近藤を見る。近藤は、あの後お茶してきたんですよと答える。


「とするとその魔法の異常な同時発動が梨本家の本領というわけか。」


 竜馬はぶつぶつと言って考え始める。近藤はそんな姿を眺めている。1時間ほど考え込んで空が暗くなる頃に竜馬は立ち上がる。


「少し対策を立ててからの方が良さそうだね。近くの工場に行ってこよう。」


「なにか思いつきましたか。おっとそうだ。あの巨大樹が樹海圏の痕跡のようですよ。」


「すんげーついでみたいに報告されたけど、それ一番大事な話だったんじゃないの??」


 竜馬はあきれ、近藤はまあいいじゃないですかと笑いながら竜馬の頭を叩いていた。

近藤は竜馬のことが大好きで思わずヤっちゃうんだ。(ホモではない

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