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けいおす・みそろじー  作者: 藍玉
如月竜馬の章 第二部2127年 英雄たちの選択
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七節:割り切るか見過ごすか

 竜馬と杉夫はシェルターから外に出る。竜馬は地上への階段の途中で近藤に念話を送る。


{そっちの状況はどうかわからんが梨本家とは決裂した。細かいことはホテルに戻ってから詰める。}


 近藤からはヒューと口笛の念話だけ無駄に返してきた。


「坊主は富山襲撃にいたんだろう。あの時の仲間が一人でも多く助けられたらと思わんか?」


 杉夫は玄関をでるなり振り返って尋ねる。竜馬はあの惨劇を思い出し苦い顔をして答える。


「過ぎた話だ、とは言いたいけどそりゃ助けられるなら助けたかったさ。」


「そう思うならこの町に来たことは忘れて東京に帰れ。それがお互いのためだ。」


「楓さんが危険だってわかっててそんな事ができるわけがないだろうっ。」


 竜馬は悲痛な声で叫ぶ。杉夫は首を振ってため息をつく。


「わしだって最初はそういう事は考えて無かった。だがあのゴミクズ共を滅ぼすにはアレしか無かったと今は思っておる。なんの因果かこの町を守ることになったが・・・」


「ならなんで彼女が犠牲にならないといけなんだ。」


 杉夫は暗い怒りを込めながら語る言葉を竜馬は遮る。


「息子は頼られるのが嬉しいのだろうな。もうそこから降りることはできまい。わしとしては複雑だがな。何が悲しくて身内を犠牲にして他人を守らねばならんのかと。」


「ならやめればいい。」


 杉夫は空を見上げながらぼつぼつ語る。竜馬がはっきりと否定すると杉夫は竜馬を睨み返す。


「住民は我らをアテにして来ているのにそれを切り捨てろと坊主はいうのか。」


「他の街と同じだ。国に頼めばいいだろう。」


「お前らはいつもそうだ。連絡して!ここまできて!敵を倒すまでどれだけかかってんだ!その間の犠牲者は無視するのか!」


 杉夫は激高し竜馬はたじろく。戦力を一部に集め連絡があり次第近郊に派遣するシステムだがどうしても移動時間の都合上犠牲が避けられないのが課題になっていた。しかし各都市全てに十分な戦力を常駐させることは今の人数では不可能だと結論付けられて本体制は続いている。


「最初に坊主も言っていただろう助けられるなら助けたいと。わかるかわしの想いが!妻を犠牲にして復讐を果たし、息子の嫁を犠牲にして町を守り、孫を犠牲にして先の50年を買うんだよ。坊主からしたらおぞましい話かもしれんが、わしらは助けない犠牲を強いてそれ以外を助けることにしたんだ。」


 杉夫は暗い目を竜馬に向けて言い放つ。


「犠牲にしなくてもいい・・・システムにすべきだ。」


 竜馬は反論されるのがわかっていながら苦し紛れに言う。


「綺麗事だな。正しいことだけ言うておる。わしらだって分かっとるよ。だが力は今必要なんだ。お前は一人の命の天秤に100万の命を乗せられるのか?」


 杉夫はもう話すことは無いと言わんばかり振り返ってに敷地外の車へ歩き出す。


「ま、まて。」


 竜馬は根拠もなく呼び止める。


「身内を犠牲にしてるのはわしの最低限の矜持だ。わししか知らんことだがな。儀式は5日後だ。止めたければ好きにしろ。わしらは抗うがな。」


 杉夫は顔半分だけ竜馬に向けて語り、そして後部座席に乗り込み去っていった。竜馬はその場に力なく座り込みうなだれる。どれだけ意識を飛ばしていたのか竜馬はふと周りを見た時にはホテルの自室のベットで寝ていた。


(いつのまに・・・何もする気も起きないな・・・)


 竜馬はぼーっと天井を見ながら気だるそうにしていた。扉をノックされる音がするが気だるさに無視する。何度か叩かれたあと玄関口から人の動く気配がする。


「やっぱりいるじゃないですか如月くん。」


 近藤は扉を越えて勝手に入ってきたようだ。


「梨本家に宣戦布告したんでしょー?そんなにだるそうになにしてんですか。」


「障壁越えて転移できるってセキュリティ上大問題だよね。」


 竜馬はぼそっとつぶやいてそっぽを向く。近藤はベッドの端に座りながら、困った世の中ですと呟やく。


「おや、意外と重症ですね。何が有りました。」


 近藤は興味深そうに聞くが竜馬は答えない。そこから20分ほど近藤のどうしたんですか攻勢が続き竜馬は音を上げて別れたあとのことを話す。


「乙女かっ。」


 近藤は話を聞き終わった後竜馬をデコピンしながら言う。


「如月くんは結局どうしたいんですか。」


「楓さんを助けたい。けど街の人の事を考えるとな。」


 近藤の問いに竜馬は沈んだ声で答える。


「考えすぎですよ、如月くん。楓ちゃんを助けたいなら行けばいいじゃないですか。梨本家とか沼田市とかどうでもいいんです。やりたいようにやっちまえばいいんですよ。」


 近藤は竜馬の背を叩いて断言する。


「いや仮にも国を守る立場があるのにそれはないだろう。」


 竜馬は近藤の発言に引きながら答える。


「ここはもう自衛官なんていう立場も忘れて、ぱーっとやっちゃいましょうよ。それこそ楓と町は僕が守るって宣言しちゃってもいいんですよっ。」


 近藤はその場を盛り上げようと焚きつける。


「そう考えられたら楽なもんだけどな。」


 竜馬はベッドに四肢を投げ出して倒れる。


「んじゃ、隊長の為に私がさくっとやってきましょう。何あの程度の連中なら私でもなんとかなりますよ。」


 近藤はさっと立ち上がり部屋をでる。


「おいおい正気か?」


 竜馬は半身を起こして玄関の方を見る。足音は消え気配も無い。魔力探知をしてみると近藤はすでにホテルを出て北に移動している。


「あの馬鹿、本気かよ。」


 竜馬は慌てて服を整えてデバイスを取り出してホテルをでる。近藤の移動方向を確認して飛翔する。

この手の話は倫理、道徳観としては永遠の命題の気がします。

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