一節:環境の変化
第三次世界大戦の終了の原因となった人外種の存在は全世界の戦いに主をおいていない一般人が最も不利益を得たとされる。人類より容赦のないそれらの生物は自らの欲望にしたがって様々な害をもたらした。通常それらの処理は警察、消防が対応し場合によっては契約に従って民間警備会社が出動する。それでも手に負えなければ自衛隊の出番となる。対応が後手後手になりがちなこのシステムは大事に至ってしまうことが多く一般市民としては不満が募るものであった。強力な魔法使いはそれほど多くなかった為、全国を安全に守ることは困難であった。人々はより強い守護者のいる町へ集中してしまいかつて以上の過疎を生み出す形になった。人が集まると金が動き都市の防御もあがる。そしてより人が集まる。国も人が集中することによって守りやすくなってしまうことから、そのような動きを黙認してしまったのでそのような動きは加速していくこととなった。各県の中心となる都市はより大きくなり、それ以外の場所はどんどん衰退していった。そんな中群馬県沼田市は異例の発展を遂げていた。大戦後いつからか市の中央に樹高100mを越える巨大樹が現れた。その土地に住んでいた梨本家は他に比類なき魔力を身につけ市に襲いかかる敵をすべて駆逐していった。露骨に怪しまれた巨大樹であったが、町を守る梨本家の献身によってそれらは払拭され、極めつけに多少の被害で人外種の大群を撃滅したことで一家は英雄と讃えられ祭り上げられることとなった。人々は一家の防衛力に期待し、一家はそれに答え続けた。周辺の市と合併し様々な人々が流入し人口120万の巨大都市となっても、一家は都市を完璧に守り抜いた。その力の源であろう巨大樹を調べるために裏表から数々の専門家が送られたがその謎は予測は立っても解明されることはなかった。黒い噂もたちはしたが、恨み妬みの類と一蹴された。市民は梨本家に依存し、市内での梨本家の権力は比類なきものとなる。その力は徐々に彼らの心を侵食していく。




