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祝福の赤い月  作者: violet
3/16

二人で食事

あれ?

オリビアは、夕食の席で不審に思っていた。

ラヴィダルが普通の食事をしているのだ。


ラヴィダルもオリビアの視線に気づいたのだろう。

「食事が口にあいませんか?」

プルプルと首を横に振って、オリビアが答える。

「とても美味しいですわ。

そうではなくて、ラヴィ様は吸血鬼ではありませんの?

ご飯は私でしょ?」


ゴホゴホと咳き込んでラヴィダルがむせる。

「今、とんでもない事をさらっと言いましたね?」

カトラリーをテーブルに置き、ラヴィダルがナプキンで口を拭いている。

「そうですか?ラヴィ様。」

「そのラヴィ様というのは?」


「私だけの呼び方があるってステキでしょ。

私の事は、オリーと呼んでくださいませ。」

にっこり言うオリビアに、抗う術はラヴィダルには無い。


「では、オリー・・

オリー、何故に自分を食料と?」

「大丈夫です、覚悟は出来てます。」

質問には答えず、とても真剣にオリビアが言う。


「君は、僕の花嫁だ。」

「えーーーー!?」

驚くオリビアに、ラヴィダルが驚く。

「最初から花嫁と言っている。」

「トカゲの乗り物とかで驚かしたりして、結婚したくないのかしらって。

そう思ったら、覚悟ができちゃって・・」


「そんな覚悟必要ない。ちゃんと大事にする。」

「まぁ、ラヴィ様。血はいらないの?」

「いや・・少しください。」

「私の血はきっと美味しいですわ。

赤い満月の生まれですからね。」

ラヴィダルは、楽しそうに言うオリビアを見ながら、食事中に会話など何年振りだろうと思う。

この城で誰かと食事する、それ自体が初めてかもしれない。



遠い昔の予言。

赤い月夜に生まれた乙女だけが自分を殺す事ができる。

どれほどの時を生きているのかも覚えていない。

だから、100年に一度、乙女を差し出す事を要求した。


ほとんどの娘は城にも辿り着かず、辿り着いた娘もすぐに逃げ出した。

それでも、次の娘こそはと、100年を待つ事が出来た。


この娘は、自分を殺してくれるのだろうか・・・

友も仲間も全て、遠い昔にいなくなった。

何故に自分だけが、生き残っているのかもわからない。

忌み嫌われていた獣人達と、森の奥深くに隠れ住んだのさえ遠い過去。




食事の後、ラヴィダルとオリビアは夜の庭園を一緒に歩いていた。

花の名を楽しそうに言うオリビア。

「魔物の森は毒素があって、毒花しか育たないと噂だったのに、王都と同じ花よ。

空気も王都よりずっといいし、噂などあてになりませんわ。」

「人間は来た事がないのに、噂などになっているのも不思議だな。」


「ラヴィ様、祝福をくださいな。

今日は18歳の誕生日です。」

「18歳おめでとう、とても綺麗ですよ。」

そう言ってラヴィダルは、オリビアの首筋に牙を刺す。



「あら?」

オリビアが不満そうに言葉を発した。

「ここは、ロマンチックに倒れたいのに、少ししか血を取らなかったのね?」


「これで十分です。数ヶ月は必要ありません。」

オリビアの血は極上であった。

この量でも、数年必要ないかもしれない。

美味しすぎて、もっと飲みたい気持ちを抑えるのが大変なぐらいだ。


血を摂取しなければ、餓死できるのではと絶った事もあったが、眠り続けるだけだった。

死ねないラヴィダルは、少量の血液で生きていける。



ラヴィダルはオリビアを横抱きにして、庭を歩き始めた。

「血をいただいたので、貴女の足元がふらつくかもしれません。部屋までお送りします。」

きゃー、お姫様抱っこよ!

オリビアの中で、ラヴィダルの好感度急上昇である。



赤い満月の夜に生まれた娘、特別扱いではあったが、周りは侯爵の娘が魔物の森の花嫁になるとは思っていなかっただろう。

18歳の誕生日が来るまでは、全てが密かに進められていた。

すぐに婚約が決まったであろう。

相手は王太子の可能性が高いが、別かもしれない。


全てを捨てて、オリビアは来たのだ。

トカゲの乗り物では、さすがに魔物の森と思ったが、それもわざとであると分かった。


抱かれたままで横にあるラヴィダルを見つめると、気づいたのだろう、頬を染めている。

「ラヴィ様は赤い満月に生まれた娘なら、誰でもよかったの?」

「そうです、自然に淘汰されると思ってましたから。」

「どういうこと?」

「赤い満月に何人の娘が生まれようが、ここに来るのは、来るべき娘しか来れないと思ってました。」

試していたのは、そういう事なのね、とオリビアは思った。


オリビアの部屋のベッドにオリビアを寝かすと、

「血をいただいたので、十分に休養してください。おやすみなさい。」

と言ってラヴィダルは部屋を出て行った。


「あれでお終い!?

お姫様だっこで期待したのに・・」

明日は結婚式だし、寝よう、とベッドに横になるが、普段が遅い王都の生活のオリビアには寝付けないが、ベッドから窓の外の星空を眺めていたら、いつの間にか寝入ってしまった。



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