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祝福の赤い月  作者: violet
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魔物の城

城の中に入ると、使用人達が出迎えていた。


獣人の姿だ。

オリビアは目を見張る。

田舎では獣人の暮す地方もあるが、王都に獣人はいない。


「キャー。」

と叫んだオリビアは・・・・



黒いお仕着せのドレスに身を包んだ獣人の中で小柄な使用人に抱きついた。

ラヴィダルは置いてきぼりである。


「まぁ、柔らかいのね!私はオリビア。

獣人の方にお会いするのは初めてなの!

嬉しいわ!!

貴女、お名前は?」

嬉しいのは、すごくわかる。オリビアの顔は紅潮し、獣人の毛皮の手をなでている。


「ミモザと申します。

お嬢様、私が恐くないのですか?」

恐る恐るミモザが口を開く。

「恐いかどうかも知らないもの!

ああ、ごめんなさい。ミモザは私が恐かった?」

あわてて、オリビアが離れる。

「いいえ。」

にっこり笑ってミモザが答えると、可愛いとオリビアが再度抱きついた。


「オリビア、そろそろ皆に紹介させて欲しい。」

後ろから、ラヴィダルが声をかけてきた。


「ネーデル侯爵の娘、オリビアですわ。

これから、よろしくですの。」

にっこり微笑んで使用人達を見渡すと、二人の使用人が前に進み出た。


トカゲだろうか、大柄な体格の男性である。

「私は家令を任されています、アート・ボーモンです。」

犬か、狼かはわからないが年配の女性が礼をした。

「メイド長のデリス・ワンドでございます。」


「よろしくお願いしますわ。」

ところで、とオリビアがラヴィダルに目を向ける。

「森の入口に、馬車に積んできた荷物を置いたままですの。

ウェディングドレスとか、私の衣類も入っているの。

あれがないと困るわ。」

「分かった、取りに行かせよう。」

ラヴィダルは、カイザルと呼ぶと、どこからか体格のいい男性が現れた。


「カイザルだ。僕の侍従をしている。」

ラヴィダルはオリビアに、カイザルを紹介すると森の入口に向かわせた。

カイザルの後ろ姿を見ながら、オリビアは思う。

人間の姿をしているけど、きっと普通の人間ではない。

イケメンだったから、豹かな、虎かな?


外れた、カイザルは鷲だ。

確かにカッコいい。


オリビアはラヴィダルに手を取られて、部屋を案内される。

ここが、貴女の部屋です、と扉を開かれたそこは2階のベランダを持つ光注す居室だった。


「実は、使用人達も貴女を試したんだ。」

「どういうこと?」

「彼らは、人型に成れる者もいるが、わざと獣型で対面した。

君の反応には、こちらが驚かされた。

過去、獣人の彼らを受け入れた花嫁はいない。」

「みんな、逃げたの?」

「城にたどり着けなかった者や、使用人を見て逃げた。」

「その人達は?」

「僕には、わからないな。

家に戻ったか、森にいる狂暴な種族の餌食になったか。」

きっとわかっている、オリビアはそう思ったが、口には出さなかった。



「ベランダには、庭に続く階段が付いている。

明日は結婚式だ、今日は好きに過ごすといい。」

荷物は届けさせる、と言ってラヴィダルは背を向けた。


庭に続く階段、それは逃げてもいい、ということだ。


ラヴィダルは後ろ手に扉を閉めようとして違和感を覚えた。

オリビアがついてきているのだ。


「次は、ラヴィダル様の部屋を案内してくださいな。」

「君は・・・」


ラヴィダルの部屋は、北向きにあり、重厚な家具と敷物で灯りも少なくどっしりとしていた。

「ここは、君には向かないだろう?」

「吸血鬼は光に弱いって本当なの?」

それで暗いのね、とオリビアが納得している。

「いや、そんなことはないが。」


「では、庭は二人で歩きましょう。一人では行かないわ。」

オリビアが、ラヴィダルの言葉に潜んだ事を否定する。


「僕が、怖くないの?」

尋ねているラヴィダルの方が傷ついている表情をしている。


「私って、美人でしょ?

教養も外国語も最高の教育されて、父親は侯爵。

王太子の花嫁候補の筆頭だったの。」

「それは、悪い事をしたね。」

「とんでもない!

あの王子と結婚なんて悲劇よ!」

自慢かと思ったら、そうではないらしい。


次々と出てくる王太子への嫌悪、どうやら女性に節操がなく、王太子という地位に胡坐をかいたような性格らしい。

「一生、あの王太子の尻拭いをさせられるかと思うと、ここは天国よ!」

魔物の森を天国という人間は他にはいないだろう。


「後悔するかもしれないですよ?」

ラヴィダルがオリビアを見つめて言う。


おほほ、とオリビアが高笑いをしている。

「後悔するのは、王太子よ。悔い改めなさい!

ラヴィダル様は、私がお嫌い?」

そんなに王太子が嫌いなんだ、と思いながらラヴィダルが答える。

「好感を持ってますよ。」

あのトカゲの迎えにも、獣人の使用人達にも、逃げ帰らなかったのだ。


どうやら、逃げ帰るつもりはないらしい、と思って安心する自分にラヴィダルも驚いていた。



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