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異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。  作者: 山いい奈
9章 こっちの世界とあっちの世界について
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第3話 カロム、ハードル上げないで……

夕飯をごちそうになります。

どうぞよろしくお願いします!(* ̄▽ ̄)ノ

少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです!

 少しの談笑(だんしょう)の後、アルバニアが空になった自分のカップを手に立ち上がる。


「では、私はそろそろ夕飯の支度(したく)をして参ります。皆さまはどうぞごゆっくりなさっていてください」


 そう言って小さく頭を下げる。浅葱(あさぎ)は中腰になって言った。


「僕、お手伝いします」


 するとアルバニアは「いいえ、とんでもございません」とやんわりと手を振って(さえぎ)る。


「お客さまであるアサギさまのお手を(わずら)わせる訳には参りません。どうかごゆっくりなさっていてください」


 これは強引に台所に行ったところで、アルバニアに嫌な思い、遠慮(えんりょ)をさせてしまうだろう。浅葱は「ありがとうございます」と素直に腰を戻した。


「アルバニアさん、俺は? 俺も錬金術師の世話係りだからさ」


 カロムが言うも、アルバニアはやはり「いいえ」と首を振る。


「カロムさまも、今はチェリッシュ先生のお客さまでございます。どうかごゆっくりとお待ちくださいませ」


 アルバニアは「では失礼いたします」と小さく頭を下げ、奥へと入って行った。


 そこでまた会話が始まる。チェリッシュはロロアの近況もだが、浅葱の元の世界の話も聞きたがった。


「この世界の街より、もっともっと発展しているんでしょぉ〜? この世界では長い移動ってお馬さんか馬車だけどぉ、アサギちゃんの世界だと別の乗り物とかあるのかしらぁ?」


 浅葱は自転車やオートバイ、自動車の事を話した。自転車は電動アシスト付きがあるが、基本は自力で車輪を回して進むもの。そしてオートバイに自動車はガソリンという燃料や電気で動くもの。


 チェリッシュは興味深げに眼を輝かせて浅葱の話を聞いていた。好奇心が強いのだろう。


 ロロアもだろうが、そうで無ければ錬金術師の素質があっても、研究の毎日なんて続けられないのかも知れない。


「そっちの世界には、ガソリンって言う燃料があるのねぇ〜。電気はこっちの世界にもあるけど、乗り物を動かすなんて凄いわぁ。それだけ電気の仕事量が多いって事なのねぇ〜。それに乗り物の技術も凄いんでしょうねぇ〜。この世界で1番の錬金術師なんて言われていても、私には仕組みの想像が付かないわぁ〜」


「その世界で暮らしていても、僕は専門外ですから、さっぱり解りません。他にも電気で動くものは沢山ありますが、その中身がどうなっているかなんて、本当にさっぱり」


「そうなのねぇ〜。この世界で電気は明かりを(とも)すぐらいだものねぇ。それを思うと、本当に凄いわぁ〜。ガスはどうなのかしらぁ〜?」


「ガスもありますよ。この世界と一緒で、ガスの火で料理をしたりします。後はそうですね、暖房器具を動かすのにもガスを使う事があります」


「あらぁ、この世界の暖房って暖炉(だんろ)だものねぇ。と言っても使う事ってあんまり無いけどねぇ〜、そこまで寒くもならないものねぇ」


「ガス(かま)もありますよ」


 浅葱が言ったところで、カロムが「あ」と声を上げた。


「ロロア、浅葱、うっかりしてた」


 カロムは立ち上がり、棚の天板に置いた荷物の中から、土産(みやげ)として持って来たものを取り出した。


「僕もうっかりしていたのですカピ。大お師匠様、遅くなってしまって申し訳無いのですカピ。お土産なのですカピ」


 カロムがロロアの前に置いた品を、ロロアがひとつずつ前足を使ってチェリッシュの前に移した。


「あらあらぁ、こぉんなに沢山! 嬉しいわぁ〜」


 チェリッシュは言葉通りに嬉しそうな笑顔になって、胸元で手を合わせた。


「こちらは僕たちの村のお店の、ドライフルーツとナッツたっぷりの焼き菓子なのですカピ」


「あらぁ、私フルーツもナッツも大好きよぉ〜」


「こちらはアサギさんに作っていただいたクッキーなのですカピ。生姜(しょうが)胡麻(ごま)なのですカピ」


「あらぁ、アサギちゃんはお菓子が作れるのぉ〜?」


「僕、料理人なんです。お菓子も少しですが作れるんです」


「まぁ、凄いのねぇ〜。楽しみだわぁ。生姜って事は甘さ控えめなのかしらぁ?」


 浅葱が異世界から来た事が伝わっていても、料理人だと言う事は知られていなかった様だ。


「はい。お酒がお好きだと(うかが)ったので、甘さ控えめで作りました」


「そしてこれが、お米のお酒なのですカピ」


「お米のお酒? ロロアちゃんたちの村にはそんなものがあるのぉ!?」


 チェリッシュは驚いて眼を見開く。ヨランダも「へぇ」と感心した様な声を()らす。


「今でこそ村で作られて商店で買えるのですカピが、元はアサギさんが持ち込んでくださったお味なのですカピ。アサギさんの世界の作り方をこの世界でも作れる様に、アレンジしてくれたのですカピ」


「まあぁ、アサギちゃんはそんな事も出来ちゃうのぉ。凄いのねぇ〜!」


 チェリッシュは早速米酒を包んでいた布を開き、その(びん)をしげしげと眺める。


「透明なのねぇ〜。お米のお酒って言うから白いのかと思ったわぁ〜」


「まずは白いお酒が出来ます。それを(にご)り酒って言うんです。それを()して透明にするんです」


「それは漉す必要があるからそうするのよねぇ」


「濁り酒は味が強くて、好みが分かれるかなって思います。僕はそんなにお酒に強く無いので、濁り酒だと少しきついんです」


「そうなのねぇ。機会があれば漉す前のも飲んでみたいわぁ〜」


 それはすっかりと酒飲みの台詞である。


「晩ご飯の後、是非開けてみたいわぁ〜。おつまみは何が合うのかしらぁ〜」


「あ、じゃあそれを僕に作らせて貰えませんか?」


 浅葱が言うと、チェリッシュは「あらっ」と眼を丸くする。


「アルバニアちゃんの台詞じゃ無いけどぉ、お客さまにそんな事して貰うなんて申し訳無いわぁ〜」


「いえ、僕、料理をするのが楽しくて好きなので」


「うちの昼飯と晩飯は、アサギに作って貰ってるんですよ。この世界には無かった調理法とか調味料とかもあって、本当に勉強になるんです。それに米酒の味とそれに合う料理を1番知ってるのはアサギなので、ここは任せてみませんか。勿論俺も手伝いますし」


 カロムの口添えに、チェリッシュはまた「あらあらあらぁ〜」と声を上げる。


「カロムちゃんまでぇ〜。でも確かにそうねぇ。私もだけど、アルバニアちゃんもお米のお酒の味を知らないものねぇ〜。じゃあ申し訳無いけどぉ、お任せしちゃおうかしらぁ。お願い出来るかしらぁ〜」


「はい!」


「任せてください。作るのはアサギなんで、絶対に旨いもんが出来ますから」


「カロム、ハードル上げないで……」


 浅葱が焦って言うと、チェリッシュは「まぁ、おほほ」と楽しそうに笑みを浮かべる。


 その時、奥からアルバニアが顔を出した。


「皆さまお待たせいたしました。夕飯が完成いたしました。ヨランダさん、申し訳無いのですが、お運びするのをお手伝いいただけますか」


「ああ、良いよ」


 ヨランダが腰を上げる。


「今日は量も多いだろうからね」


 そんな事を言いながら、アルバニアに続いて奥に消えて行った。するとチェリッシュも立ち上がる。


「皆さぁん、お紅茶は飲み終わったかしらぁ? カップをお下げするわねぇ〜。ついでに私もお運びお手伝いしようかしらぁ」


 言って、トレイに空になった全員のカップを乗せて、奥に入って行った。それから間も無く、料理の皿を乗せたトレイを手にしたチェリッシュたちが現れる。


「はぁいお待たせ〜。今夜はアルバニアちゃん特製、トマトクリーム煮込みよぉ〜」


 そうして、ほかほかと湯気の上がる皿が浅葱たちの前に置かれる。それにサラダとパンが添えられた。


「さぁ、いただきましょう〜」


 全員で神に感謝を捧げ、浅葱たちは「いただきます」とそっと手を合わせた。


 早速スプーンを取り、トマトクリーム煮込みを(すく)う。


 具は玉葱(たまねぎ)馬鈴薯(じゃがいも)にブロッコリ、海老(えび)帆立(ほたて)がごろごろと入っている。しっかりと炒まった玉葱から出る甘味。トマトの酸味は生クリームが抑えてまろやかに仕上がっている。


 馬鈴薯はほくほく、ブロッコリはしゃきしゃき、海老と帆立はぷりぷりだ。どれもとても良い食べ応えである。


 サラダはとても色鮮やかである。千切ったレタスに茹でて粒に解した玉蜀黍(とうもろこし)、千切りの人参は生で。


 ドレッシングはシンプルなフレンチドレッシングである。なので口をさっぱりとさせてくれる。


 どちらもとても美味しく、やはり錬金術師の世話係りと言う人は、家事のプロフェッショナルなのだなと痛感する。


「アルバニアさん、とても美味しいです」


「ああ。本当に旨いですよ」


「はい。とても美味しいのですカピ!」


「でしょお〜。アルバニアちゃんはお料理だってとてもお上手なのよぉ〜」


 浅葱たちが賞賛(しょうさん)すると、アルバニアは少し口角を上げて「ありがとうございます」と、嬉しそうに首を小さく傾げた。

ありがとうございました!(* ̄▽ ̄)ノ

次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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