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異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。  作者: 山いい奈
2章 関節痛のお婆ちゃんと、骨を強くするご飯
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第3話 錬金術師の先生方にはご足労を掛けるがの

アントン先生の病院に行きますよ。

どうぞよろしくお願いします!(* ̄▽ ̄)ノ

少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです!

(「カロス」を「カロル」に改名しました)

 カロムの案内で、浅葱(あさぎ)とロロアは物珍しげにきょろきょろと視線を彷徨(さまよ)わせながら、人通りのまばらな道をゆっくりと歩く。


 この村を知っているレジーナ(いわ)く、村の造りはレジーナのいる村とそう変わらないらしく、ならロロアにとってはそう珍しいものでは無いだろうと思うが、やはり初めての村だからか、眼を輝かせている。


 浅葱はこの世界に来てから村と言うものに行ったのは、着替え調達の為のたった1度である。浅葱の世界で言うところの「田舎」ともまるで違う景色に、興味津々だ。


 噴水を中心に村が広がっていて、その周辺が所謂(いわゆる)中心地だ。役場もそうだが、手紙や荷物の配送所、各種商店などが集まっていた。


 仄かに漂って来るパンが焼ける香ばしい香り、惣菜や食堂の甘やかな匂い、そのどれもが食欲を刺激する。


「美味しそうな匂いがするね」


「商店もいろいろあるからな。野菜と果物、肉なんかは農家なんかの組合みたいなのが(まと)まって店出してるが、パンとか菓子とかは何軒かあるな。持ち帰り用の惣菜とか食堂もそうだな」


「食べてみたいなぁ」


「昼は食堂で食うか。それともパンや惣菜を食い歩きしても良いか?」


「どっちも魅力的だなぁ。迷うなぁ」


 浅葱は腕を組んで「んんん」と困り顔を浮かべる。


「そうですカピね、僕も迷いますカピ」


「つっても、食堂も惣菜も煮込み料理がメインだがな。トマトだったりコンソメだったりスパイスだったり。そうだな、俺としちゃあ、お薦めの食堂があるから、そこでゆっくり食うのを提案するぜ」


「カロムさんのお薦め! じゃあそうしよう」


「そうですカピね。カロムさんのお薦めなら間違い無いですカピ」


「嬉しい事を言ってくれるぜ。じゃあ、ん、まだちょっと早いか?」


 カロムがボトムのポケットから懐中時計を出して開く。


「11時か。だがその食堂は結構人気で、11時半頃から混み出すから、今から行っても良いかもだ」


「じゃあ行こう。あ、病院に行くのは?」


 昨日訪ねて来てくれたアントンの病院である。行く事は決めていた。メリーヌの事も気になっていた。


「午前中は混むから、俺らの相手してられる状況じゃ無いと思う。午後の落ち着く時間帯にしようぜ」


「そっか、そうだね。じゃあ食堂行こうか。お腹空いて来たかも」


「楽しみですカピ」


「ははっ、ふたりの口に合うと良いがな」


 そんな事を言いながら、並んで食堂へと向かった。




 ゆっくりとお腹いっぱい食事を()り、食堂を出た浅葱たちは病院へと向かう。その途中少し遠回りをして、カロムが中心地を主に村を案内してくれる。


「向こうに行ったら畑とか田んぼとか。この村の産業は農作物が中心なんだ。それを周りの村なんかに(おろ)してる。肉類は隣村から卸して貰って。レジーナさんの村と反対方向の隣村な。魚は、この村海が結構近いからな、毎日漁に出てる」


「海が近いの? その割には潮風の香りとかあまりしないけど」


 カロムの言葉に、浅葱は鼻をひくつかせた。


「しおかぜ? って何だ?」


「え? 海の近くって独特の匂いがしない? 海の水って塩水だから、その匂いって言うか」


「もしかして、アサギの世界の海水って塩水なのか? こっちは普通の水だぜ」


「そうなの!?」


「そうなのですカピ。真水ですカピよ」


「へぇ、じゃあ金属も錆びないし、海水浴でベタベタしたりしないんだね。それは良いかも」


「まぁそうだな。確かに塩水だとな」


 思わぬ事実に驚きながらもそんな話をしつつ、村をぐるりと(めぐ)る。


 建物は浅葱たちの家とは違い、木造りのものが多かった。道は舗装されておらず、風が吹くと軽く砂埃(すなぼこり)が舞う。だが人々の歩みに寄ってしっかりと踏み固められており、そう巻き上がる程では無い。


 商店には洋服店や雑貨店などもある。浅葱たちはそれらをちらちらと覗きながら、病院へと向かった。


 さて、やがて到着した病院は、浅葱の世界では「医院」や「クリニック」と言える、小規模な木造の建物だった。2階建てである。


「カロムさん、ここは入院とか出来るの?」


「いや、街のでかい病院なら出来るところもあるんだが、ここは出来んな。だからアントン先生が往診するんだ。ほら、昨日来たメリーヌ、あそこの婆さんなんかも入院施設がありゃあ、そうした方が良いんだろうがな。ま、あそこの婆さんが大人しく入院するとも思えんがな」


 カロムの苦笑に、浅葱も「はは……」と笑うしか無い。一体どんな強烈なお婆さんなんだか。


「じゃああの2階部分は?」


 浅葱が指差すと、カロムは「ああ」と声を零した。


「アントン先生とクリントの居住スペースだ。医者はそこに住む事になってる。そしたら深夜の急患にも対応出来るだろ」


「ああ……どこの世界でもお医者さんは大変だね。凄いなぁ」


 浅葱が感心して言うと、ロロアが口を開く。


「その場合は錬金術師も起こされる事があるのですカピよ。一般的なお薬では間に合わない場合もあるのですカピ」


「そうなんだ。じゃあその時には僕も起こしてね。僕はロロアの助手なんだから」


「有り難くそうさせていただきますカピ。その場合はお急ぎの場合が殆どですカピ、お手伝いをしてくれる方がいると、とても助かるのですカピ」


「うん」


 浅葱はにっこりと頷いた。


「さ、行くぜ。そろそろ患者も少なくなってる時間帯だと思うんだがな」


 カロムが病院のドアを開けて入って行き、浅葱とロロアも続く。


「こんちは。アントン先生います?」


 入ってすぐに受付台があり、そこには淡い水色のワンピースに白いエプロンを着けた、少しふっくらとした女性が座っていた。


「先生は診察中よ。急ぎかしら?」


「錬金術師を連れて村を案内してるんです。なら出直した方が良いっすかね?」


「いえ、今の患者さんが終わったらひと段落するわよ。少し待ったら?」


「じゃあそうさせて貰います」


 そんな会話の間に中を見渡してみると、そこは待合室の様で、ソファが2列並べられている。だが人はいなかった。


 やがて奥のドアから患者と思われる若い男性が足を引き()って出て来た。


「先生、ありがとうございました」


「はいはい。無理をして動かん様にの。負担を掛けん様にするんじゃぞ」


 中からは昨日も聞いたアントンの声がする。男性はどうやら足を怪我している様だ。


 患者に続き、見送る為かクリントが顔を覗かせた。


「お大事になさってくださいね」


「ありがとう」


 男性はにこやかに言うと、受付で診察費と払って帰って行った。


「あれ、錬金術師さまたちじゃ無いですか。こんにちは!」


 クリントは今日も元気である。浅葱たちを見つけて、にこにこと(なつ)っこい笑顔を浮かべた。


「こんにちはカピ」


「こんにちは」


 浅葱とロロアは揃って頭を下げる。


「よぉ。先生は手空いてるか?」


「今ちょうと患者さんが落ち着いたところですよ。どうぞ」


 そうして診察室に案内される。そこには机があり、その前の椅子にアントンは掛けて、カルテらしきものに何やら書いていた。他に室内にはベッドや棚が置かれている。幾ばくかの医療器具らしきものは、アントンの奥のワゴンに乗せられているのが見えた。


「おや、錬金術師の先生方。ようこそようこそ」


「こんにちはカピ」


「こんにちは」


 浅葱とロロアはまたぺこりと会釈(えしゃく)する。


「はいはいこんにちは。今日はどうされたんじゃ?」


「ちわっす、先生。ロロアたちに村を案内してんですよ」


「成る程の。そのついでに来てくれたのかの」


「ついでだなんてとんでもないですカピ。本当はもっと早くに来たかったのですカピが、午前中は混むとお聞きしたので、午後まで待ったのですカピ」


「ほっほっほ、それは嬉しいのう」


 アントンは言葉の通り、嬉しそうに声を上げた。


「お薬は昨日から調合を始めましたカピ。今寝かせていますカピ、明日にはお渡し出来ると思いますカピ」


「それは助かるのう。そうじゃの、時間が出来る昼にでも、クリントに取りに入って貰うとするかの」


「分かりました!」


 クリントの元気な返事。アントンは「うんうん」と頷いた。


「あの、アントン先生」


 浅葱は1番気になっていた事をおずおずと切り出す。


「昨日か今日か、メリーヌさん来られましたか?」


 すると、アントンはくるりと眼を軽く見開く。


「昨日来たぞい。そちらに行ったそうじゃの。ナリノ、メリーヌの婆さんの事じゃろ?」


「そうです」


 お婆さんの名前はナリノと言うらしい。


「なかなか困ったものでのう。メリーヌと話して、今日往診に押し掛ける事にしたんじゃ。一緒に来るかの?」


「え?」


 浅葱が予想外の事に声を上げると、ロロアは少し逡巡(しゅんじゅん)し、やがて頷いた。


「お願いしますカピ。もし痛み止め薬の特注が必要になるのでしたら、ご様子を拝見しておきたいですカピ」


「そうじゃの。ではそろそろ行こうかの」


 アントンが「よいしょ」と立ち上がる。するとクリントが棚の下段を開き、大きな鞄を取り出した。


「爺ちゃん、荷物の準備は出来てるよ」


「はいよ。ではの、錬金術師の先生方にはご足労を掛けるがの」


「こちらこそ有難いのですカピ」


「そう言って貰えると助かるの。では行くかの」


 アントンは言って、のんびりとドアに向かった。

ありがとうございました!(* ̄▽ ̄)ノ

次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] カロスをカロルに改名って書いてあるけど、文章には初めからずっとカロムって書いてあるんですが…?
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