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たまには冷たいのも良いでしょう?

冷たいお菓子を作ります。

どうぞよろしくお願いします!(* ̄▽ ̄)ノ

少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです!

 浅葱(あさぎ)がこの世界に来てから食べたスイーツと言えば、クッキーやケーキなどの焼き菓子ばかりで、そう言えば冷菓(れいか)が無かったなと思い至る。


 カロムに聞いてみると、「ああ、そうだな、冷たい菓子は確かに無いな」と事も無げに言われてしまう。


 この世界では、冷暗庫は食材の保存の為だけに使われているらしい。


 確かにこの世界の今の気候は、浅葱の世界で言うところの春や秋の様なもので、これまで「ああ暑い!アイス食べたい!」となった事は無い。


 気候の移り変わりをカロムに聞く。


「凄く寒くなる時季があるんだ。暑さはそうだな、これ以上は気温上がらないな、この世界は。へぇ、アサギの世界は4つも季節があるのか。これ以上暑くなるって? 汗だらだらで暑さで死ねる? そりゃあ大変そうだ」


 そう言って顔を(しか)めていた。


 浅葱は暑がりで、毎年必ずと言って良い程夏バテを起こしていた。物もまともに食べられなくなり、アイスキャンディを(かじ)ったり饂飩(うどん)蕎麦(そば)素麺(そうめん)(すす)ったりしてどうにか遣り過ごしていた。


 なのでこれ以上暑くならないと言うのは、本当に助かる。


 冷菓や、そう言えば冷たい飲み物も余り飲まれないのは、暑くならない事が要因なのだろう。


 しかし浅葱は冷菓の美味しさを知っているので、たまには食べたくなるのである。


 なら、作ってしまえば良い。


 と言う事で。


 鍋に牛乳と砂糖を入れ、火に掛ける。沸騰させない様に注意して、砂糖が溶けたら冷ましておく。


 フライパンに砂糖と少量の水を入れ、火に掛ける。じっくりと色付く様にフライパンを回しながら煮詰めて行く。


 出来ていた大きな泡が小さくなり、程良い焦げ目が付いたら少しの湯を入れ、火から下ろして混ぜて(だま)を消す。


 そうして出来たソースをマグカップに入れておく。


 次にボウルに卵を割り入れ、泡立て器でしっかりと撹拌(かくはん)する。そこに冷ました牛乳を少しずつ入れ、しっかりと混ぜ合わせて行く。


 そうして出来た液を細かい網目(あみめ)()し器で漉してなめらかに。


 マグカップに液を静かに注いで。


 鍋を用意して、底に布巾(ふきん)を敷いて水を浅めに入れて火に掛ける。沸騰(ふっとう)したら弱火にし、マグカップを入れて、布巾で包んだ蓋をして、蒸して行く。


 蒸し上がったら火を消してそのままの状態で数分置いて落ち着かせる。


 その後鍋から取り出して粗熱を取り、冷暗庫に入れてしっかりと冷やす。


 夕飯の後にいただくとしよう。




 その日の夕飯は、ビーフステーキにした。


 3センチ程の厚さにカットしたロース肉を室温に戻し、筋切りをして塩胡椒をし、中火で焼いて行く。


 良い焼き目が付いたらひっくり返して、蓋をして蒸し焼きに。小さめの鍋に敷き詰める様に移して、蓋をして余熱で火を通す。


 フライパンに出た余分な脂と灰汁(あく)塵紙(ちりがみ)で拭き取り、赤ワインを煮詰め、バターを落としてソースを作っておく。


 そうして出来たステーキは、ミディアムレアの焼き加減で、とてもジューシーに焼き上がっていた。


「んん〜柔らかくて旨い!」


「肉汁が溢れますカピ。これぞ牛肉!と言う感じがするのですカピ。美味しいですカピ!」


 そう言ってうっとりと眼を細めるカロムとロロアだった。


 そうして皿がすっかりと空になり。


「今日はね、食後のお菓子を用意してるんだ。ちょっと待っててね」


「ああ、昼に作ってたやつか。手伝うか?」


「ううん、大丈夫だよ。ありがとう」


 浅葱は立ち上がると、空いた皿を手早く(まと)めて台所へ。後で洗う事にして、とりあえず流しに置いておいて。


 冷暗庫を開けてマグカップを取り出す。それはしっかりと冷えていた。


 (ふち)をスプーンで押さえ、中身をカップから優しく外して行く。


 それを皿に逆さに置くと、中身がつるんと滑り落ちて来た。


 カスタードプリンの完成である。


 カップの底に入れておいたカラメルソースがプリンに沿ってとろりと流れて来て、とても美味しそうだ。


 スプーンを添えてトレイに乗せ、食堂に運ぶ。


「お待たせ」


 プリンをふたりの前に置いてやると、「へぇ?」「カピ?」と少し驚いた様に眼を見開いた。


「初めて見るな。これは何だ?」


「カスタードプリンって言うんだ。冷たいお菓子だよ。牛乳と砂糖と卵を混ぜて、蒸して作るんだ」


「それだけの材料で出来るのか?」


「うん。シンプルでしょう?」


「だが、その材料にしては色が濃い気がするんだが」


「上のカラメルソースの色だよ。砂糖を焦がして作るんだ。中はクリーム色だよ」


「食べて良いですカピか? 甘い香りと香ばしい香りが、とても美味しそうなのですカピ」


「うん。思い切って(かじ)っちゃって。カロムはスプーン使ってね」


 そうしてふたりはプリンを口に入れた。


「ん!」


「カピ!」


 また驚いた様に眼を開いた。


「冷たくてとろりとして甘くて旨いな!」


「本当ですカピ! ぷるぷるしていますカピ。冷たいお菓子ってこんなに美味しいのですカピね!」


「勿論焼き菓子も美味しいけど、たまには冷たいのも良いでしょう?」


「ああ。これは確かに暑い時に食べたら更に旨いんだろうな。そうか、この世界は今以上に暑くなる事が無いから、冷たい菓子って発想が出なかったんだな」


「冷たい飲み物も、そう言えばお酒ぐらいしか飲まないですカピね」


「水なんかはそのまま飲むから冷たいが、確かにな」


 浅葱もプリンを(すく)って、口に運ぶ。


 香ばしいカラメルソースを(まと)ったカスタードの(かたま)が、ぷるぷると口で揺れる。歯で()まずともほろりと崩れ、程良い甘さが広がって行く。


 バニラの(さや)やエッセンスが無かったが、風味も充分だ。


「冷たい菓子って、他にもあるのか?」


「あるよ。材料が無くて作れないのもあるけど、今度別のものも作るね」


「楽しみだ」


 カロムはまたプリンを食べて、「旨い!」と声を上げた。

ありがとうございました!(* ̄▽ ̄)ノ

次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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