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異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。  作者: 山いい奈
6章 肝臓不調のお爺ちゃんと、癒しのご飯
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第5話 バリーさん、美味しいですよ!

おや、バリーさんが……?

どうぞよろしくお願いします!(* ̄▽ ̄)ノ

少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです!

 すっかりと食事を堪能(たんのう)し、皿には浅蜊(あさり)(から)だけが綺麗に残されていた。


「ああ、お腹一杯だ。旨かったなぁ」


 バリーが満足そうに溜め息を吐いた。浅葱たちも満たされている。


「バリーさん、お酒を飲まれる時、何か食べてますか?」


 浅葱(あさぎ)の問いに、バリーはふるりと首を振った。


「いいや。食べる気にならんでなぁ」


「お酒だけを飲むって言うのは、身体に良く無いんですよ。出来たらそうだなぁ、チーズが良いですね。チーズでしたら切るだけですからね」


「商店に頼んだら、好きなサイズに切ってくれるぜ。一口大とか。それで買っても良いんじゃ無いか? 作業料金少し払う事になるが」


 それは浅葱は知らなかった。それなら包丁や俎板は汚れないから、もっと手軽だ。


「後はナッツ類ですね。胡桃(くるみ)もですけど、アーモンドとかも。食べ過ぎは良く無いですけど、適量(つま)んだら胃にも肝臓にも優しいですよ。あ、きゃべつを生のままばりばり食べるのも良いです」


「そうかぁ。心掛ける事にしよう」


 本当は飲酒量を減らして欲しいところだ。酒は「百薬の長」とも言う。飲み過ぎなければ、適量ならそう悪いものでは無いのだ。


 しかし深酒が寂しさから来ているのであれば、医者でも無い浅葱たちが「減らせ」と言うのも酷である。


 これは根本を解決しないといけないのでは無いだろうか。その方法は、今はまだ判らないのだが。




 それから3、4日に1度、バリーの家にお邪魔する事になった。


 バリーに料理を教えながら、一緒に作って食べるのだ。


 始めた時は、簡単なものからだった。この世界の人に馴染みのある煮込み中心だ。


 馬鈴薯(じゃがいも)や人参は、皮を()かなくても綺麗に洗えば皮ごと食べられるし、肉類も薄切りで無ければそう難しいものでは無い。


 玉葱もざく切りで充分だった。


 そうして徐々に、バリーは包丁に慣れて行った。


 馬鈴薯の皮剥きも、始めた頃は手付きも危なっかしく、剥かれた皮も厚かったり薄かったり、仕上がりもぼこぼこだった。


 それも数をこなしている内に、滑らかに剥ける様になって行った。


 そうして調理技術を上げて行き、そして今日。


「今日はアサギくんの教え無しに、いちからひとりで作るんだなぁ。緊張するなぁ」


「大丈夫ですよ。バリーさん、本当にお料理上手になりましたもんね」


「いやいや、アサギくんが教えてくれていたからこそだ。儂ひとりじゃと、どうかなぁ」


「もし判らなければ聞いてくださいね。でも包丁の使い方も、本当にお上手になりましたから」


「アサギくんにそう言って貰えたら、何だか心強いなぁ」


 そう嬉しそうに微笑んで、バリーは調理に取り掛かる。


 まずは海老(えび)の下処理。殻も頭も使うので良く洗い、殻を剥いて頭を落とす。


 尻尾(しっぽ)は先端を切り落とし、中に含まれる水分を包丁で(こそ)ぎ出す。


 それらを火に掛けてオリーブオイルを引いた鍋で香ばしく炒め、ブイヨンを入れて海老の旨味を煮出して行く。


 海老の剥き身は、背の部分に包丁を入れて背腸(せわた)を取り、片栗粉と塩、水を入れたボウルに入れて良く()む。


 汚れと臭みがしっかりと出せたら、水で綺麗に洗って、塵紙(ちりがみ)で水分を拭き取っておく。


 次に玉葱を薄切りにする。最初の頃はざく切りすらも恐々だったのに、もうすっかりと慣れたもので、玉葱はすっすっとスライスされて行く。


 馬鈴薯は皮を剥いて、適度な厚さの半月切りにし、水で表面に浮いた澱粉(でんぷん)を洗い流しておく。


 鍋を火に掛けてオリーブオイルを引き、玉葱を炒めて行く。全体にオイルが回ったら塩を振る。


 しんなりして甘い香りがして来たら、馬鈴薯と海老を加えて更に炒める。


 海老の表面が赤く色付いて来たら、海老の頭と殻を煮出し、海老味噌も溶け出したブイヨンを()しながら入れて、煮込んで行く。


 海老に火が通ったら、一旦取り出しておく。


 馬鈴薯に火が通ったら火力を弱火にし、そこに牛乳を入れ、ふつふつと小さく沸いて来たら、常温に戻しておいたクリームチーズを加える。


 クリームチーズが溶けたら、海老と下茹でしたグリンピースを加えて混ぜて、塩と胡椒で味を整えて。


 海老と馬鈴薯とグリンピースのクリームチーズ煮込み、完成である。


 これはバリーが包丁の扱いが慣れて来た頃に、一緒に作った料理なのである。


 これも勿論肝臓の為の料理だ。甲殻類である海老にもタウリンは豊富だし、馬鈴薯のビタミンや、グリンピースの繊維質やタンパク質も必要な栄養素だ。


「凄く美味しそうに出来てますよ、バリーさん!」


「そ、そうか? 旨く出来てると良いがなぁ」


「大丈夫ですよ。僕が何も言わなくても、さっさって調理出来てました。ばっちりです」


「そうか。それは良かった」


 バリーは安堵した様に頬を綻ばせた。


「早速いただきましょう」


 煮込みを注いだ器とパンを盛った(かご)をトレイに乗せて、食卓に運ぶ。パンは、今回はシンプルなバケットだ。


「ロロア、カロム、出来たよ〜」


「お! バリーさんがひとりで作った飯だな。楽しみだ」


「とても良い香りがするのですカピ!」


 テーブルに置いて席に着き、祈りを捧げ、いただきますをして。


 早速スプーンを手にする。クリームチーズのソースをしっかりと(まと)わせた海老とグリンピースを(すく)い、口に運ぶ。


 濃厚で、しかし程良い酸味でどこか爽やかさも感じさせるクリームチーズ、そして含まれる海老の風味が合わさって、とても良い旨味を生み出している。


 程良い火通しでぷりぷりの海老の歯応えは抜群だ。グリンピースもぷちぷちと弾ける。


 次に口にした馬鈴薯はほっくりと仕上がっていた。


「バリーさん、美味しいですよ!」


「本当だな! 凄く旨い!」


「はい! 美味しいですカピ!」


 大袈裟では無い。本当に美味しかった。


 レシピは確かに浅葱のものだ。バリーは以前に教えて貰った通りに作っただけだ。


 だがそれは、料理の技術が無ければ不可能な事なのだ。浅葱も口出しは一切しなかった。


 バリーは毎回熱心にその技術を習得した。この料理がその(あかし)なのだ。


「そ、そうか。それは本当に良かった」


 バリーは安堵した様に口角を上げた。自分でも食べてみると、「おお」と表情を輝かせた。


「儂にしては、確かに良く出来ているなぁ。アサギくんが何も言わんものだから不安だったんじゃが」


「何も言う必要が無かったんですよ。だってバリーさんちゃんと作っていたんですから」


「そうか。うん、うん。嬉しいなぁ」


 そうして笑みを(たた)えたまま、また一口。満足そうに口を動かした。


「儂なぁ、アサギくんたちに、飲む時は何か食べながらと言われてからそうしているんだが、そうすると酒の量が減ったんだよ。お陰でしんどくなる事も減ってなぁ」


「それは良かったです」


「本当に無理しないでくださいよ、バリー爺さん。俺らも心配ですから」


「お辛いのが少なくなったのは良い事なのですカピ。良かったのですカピ」


「勿論錬金術師さまのお薬のお陰も大きいなぁ。ありがとうございます、錬金術師さま」


「いえいえ、とんでも無いのですカピ」


 頭を下げたバリーに、ロロアは恐縮した。


「しかし、これで家で飯を作れるなぁ。やはりアサギくんがいないと不安でなぁ、皆が来ない日は外食か惣菜だったんだが」


「やっぱり家で作った方が、味も自分の好みに出来ますし、温かいですからね。今は僕の作り方をお伝えしてますけど、もう少し甘い方が良いかな? とか、もう少し塩を減らしても良いなか? とか出て来ると思います。そう言う調整も出来る様になりますよ」


「そうかぁ。そうすると、それは「儂の味」になるのかなぁ」


「そうですね。調味料の量を少し変えたぐらいじゃ失敗しませんから。味見しなから作っても良いですし。材料もいろいろ試してみてください。牛肉は(くせ)が強いのでクリーム系には合いにくいかもですが、マスタードとか赤ワイン煮込みとかで美味しいですし、いろいろなお野菜も合いますしね」


「そうだなぁ。そうだ、妻が作ってくれた料理を思い出して、作ってみようかなぁ。儂の妻なぁ、料理上手だったんだよ」


 バリーはそう言って、懐かしそうに眼を細めた。


「はい。今度、バリーさんのお料理を食べられるのを、楽しみにしてます」


「また来てくれるかなぁ」


「はい。勿論です」


 浅葱の返事にロロアとカロムも大いに頷き、バリーは嬉しそうに微笑んだ。

ありがとうございました!(* ̄▽ ̄)ノ

次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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