第6話 チーズも肝心だと思うわ
さて、追加のお品を作ります。
どうぞよろしくお願いします!(* ̄▽ ̄)ノ
少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです!
まずはピーマンである。萼を取り中の綿を丁寧に取り、縦方向に千切りにして行く。
玉葱は薄切りに。
馬鈴薯は皮を剥いて、1センチ程の角切りに。水に晒して表面のでんぷんを取っておく。
マッシュルームも薄切りにして。
燻製豚は短冊切りにする。
そこでガス窯に火を入れておく。
フライパンに多めのオリーブオイルを引き、弱火で燻製豚をじっくり焼いて行く。
こんがりと香ばしい焼き色が付いたら馬鈴薯を入れ、さっとオイルが回ったら玉葱とピーマンを入れ、炒めていく。
「ピーマンは多めのオイルに入れても、苦味が抜けます」
浅葱が言うと、「へぇ」「ほう」と声が上がる。
炒まったら塵紙を使って余分なオイルを吸い取る。
「オイルにはピーマンの苦味が出ていますので、こうして取り除いてくださいね」
そこにオリーブオイルを足し、マッシュルームを入れて炒めて行く。軽く塩胡椒をして。
そうして出来上がったものはそのまま置いておく。
次に、ボウルに小麦粉を入れ、用意した牛乳を半分入れる。
泡立て器で良く混ぜ、そこに卵を加えて更に良く混ぜる。
残りの牛乳と生クリームを入れて、混ぜ合わせる。
更に粗く下ろしたゴーダチーズを加えて混ぜたら。
出来た液体を、オリーブオイルを塗った耐熱のパイ皿に流し込み、炒めた具材を入れて軽く混ぜたら、余熱しておいたガス窯に入れて、焼いて行く。
「ガス窯を使って料理するなんて初めてだわ」
「そうだな。パンとか菓子とか焼いたりにしか使った事が無いな」
「後は焼き上がりを待つだけです。30分程ですね」
「結構掛かるのね」
「そうですね。今日はピーマンを食べ易くする様にいろいろな具材を入れましたけど、薫製豚や塩漬豚と、お野菜1種類だけでも良いんですよ。そうすると下拵えの時間がもっと少なくて済みますし」
「あら、そうなのね。だったらもっと手軽に出来て良いわね」
「ガス窯に入れている間に、サラダとか作ったら良いんじゃ無いか?」
「そっか。時間的にはいつもの煮込み料理と変わらないものね」
皆がわいわいと話をする中、最前にいた女性が、小さくヴンと音を立てるガス窯を、考え込む様にしながら見つめ、ぽつりと呟いた。
「ガス窯を使って作れるお料理って、他に無いのかしら」
「ありますよ」
浅葱が事も無げに言うと、その女性は「まぁ」と眼を輝かせた。周りにいた数人も興味深げに浅葱を注視する。
「是非知りたいわ。ガス窯でお料理なんて、お献立の幅がとても広がりそう。あ、そう言えば、ミリアがナリノさんの為に、ガス窯でのお料理を教えて貰ったって言ってたわね。いいなぁって思ったんだけども、ご年配の方用のお食事だから、もっとあっさりしたものかと思っていたから詳しくは聞かなかったの。チーズとか使えるんだったら、そんな事は無いのね」
ナリノの神経痛緩和の為に、娘のミリアに教えたグラタンの事だろう。
「はい。ミリアさんにお教えしたのも、チーズを使ったご飯ですよ。全然あっさりなんてしていない、食べ応えのある料理です。それはナリノさんの症状緩和の為に少し手の込んだものだったのですが、もっと簡単に作れるものを紹介しましょうか」
「是非お願いしたいわ!」
女性は胸元で手を組んで、嬉しそうに眼を開いた。
「では早速。ええと、まだある食材だと……」
浅葱は残されている幾ばくかの種類の食材から、数種を取り上げた。そして冷暗庫を開けさせて貰う。
「牛乳、使わせて貰って大丈夫かなぁ」
「良いと思うぜ。後で村長に言っておくからよ」
「ありがとう。僕もお礼言わなきゃ」
まずは馬鈴薯の皮を剥き、厚めの銀杏切りにしたら、水に浸けて表面のでんぷんを流し、水から茹でて行く。
玉葱とマッシュルームを薄切りにする。燻製豚は短冊切りに。
フライパンにオリーブオイルを引き、まずは玉葱を軽く塩をして炒める。しんなりしたら燻製豚を入れて炒めて、マシュルームを加える。
炒まったらバターを入れ、溶けたら小麦粉を振り入れる。
粉っ気が無くなるまでしっかりと炒めたら、牛乳を少量ずつ加え、混ぜながら火を通して行く。
すると、とろりと簡単ベシャメルソースが出来上がる。
「小麦粉と牛乳の代わりに、生クリームでも大丈夫です。少しとろみは足りなくなりますが」
「でも味は変わっちゃうのよね?」
「そうですね。ベシャメルソースの方があっさりはします」
馬鈴薯が茹で上がったので、笊に上げて水気をしっかりと切って、フライパンに加える。良く混ぜて。
「今は具材はこれだけなのですが、他のお野菜どんどん使っちゃってください。ただピーマンは茹でて苦味を抜くとか、アスパラとかブロッコリとかも下茹でしてくださいね」
オリーブオイルを塗った耐熱皿に流し入れる。
その頃に、先程ガス窯に入れた料理が出来上がった。火傷に注意しながら取り出して。
中心に串を刺してみる。その穴からは何も出て来ない。大丈夫だ。
「さっき作った料理が出来上がりました。キッシュです」
表面に薄っすらと美味しそうな焼き色が付いている。仄かなチーズの香りが立ち上がっていた。
皆は台に置かれたそれを見下ろし、鼻をひくつかせ、「美味しそう!」「良い匂いだ」と一様に口角を上げる。
「じゃあ今作っているこれをガス窯に入れましょう」
ベシャメルソースの上に粗削りのゴーダチーズをたっぷりと乗せ、ガス窯へ。
「こちらはチーズが溶けて焼き色が付いたら完成です。10分ぐらいでしょうか。その間にキッシュの味見をしましょう」
浅葱はスプーンを使って、ほかほかと湯気を上げるキッシュを小皿に取り分けて行く。
小皿を手にした皆は、早速フォークを取った。切り分けて口に運ぶと。
「わぁ、卵と牛乳で優しい部分と、チーズのしっかりした部分で面白い!」
「ピーマンの苦味も殆ど感じない。生地と一緒に食べたら尚更ね。食べ易いし美味しい!」
「他の野菜も一緒に食べたらもっと良いな。馬鈴薯がほっくほくだ」
「もう、アサギくんが食材少なくても良いって言ってたけど、こんないろいろ入った美味しいの食べちゃったら、そう作りたくなっちゃうじゃ無いのよ」
そんな感想が方々から上がった。
「キッシュは、本当ならパイ生地を使うんです。パイ皿でパイ生地だけを焼いて、その中に生地を流し込んで焼くんです。でもパイ生地は作るの大変ですからね。無くても美味しく食べられると思います」
「へぇ、さくさくも味わえて、それも美味しそうね。でも本当に無くても充分に美味しいわ」
さて、そうしている内に10分が経つ。
ガス窯を開けて、中身を出したら。
ホワイトグラタンの完成である。
「うわぁ、焦げ目が綺麗。美味しそう!」
「チーズの香りがキッシュよりも濃いのね」
「そりゃあ混ぜ込んであるキッシュと違って、上に乗せてるんだからさ」
「チーズって溶けたらこんなになるんだ。へえぇ」
そんな感想を聞きながら、浅葱はグラタンを取り分けて行く。皆はそれを早速スプーンで口に運んだ。
「ん! チーズがとろっとろ! 伸びる!」
「さっきも思ったけど、チーズって火を通したら味わいが変わるのね。美味しい! ソースと凄く合う!」
「これならピーマン入れても食べ易いな。さっきのキッシュにしても、一緒に食べるものでも食べ易くしてるんだな。特にチーズが良い仕事してるぜ」
「キッシュ食べていても思ったのだけども、馬鈴薯と一緒に食べるのも良いなと思ったわ。馬鈴薯は必ず入れる様にしたいわね」
「チーズも肝心だと思うわ。このまろやかな味が、全体を食べ易くしているんだとも思う」
「今回は牛乳と小麦粉とバターでベシャメルソースにしましたが、トマトソースでも美味しいですよ。ミリアさんにお教えしたのはトマトなんです。いつも作られているトマト煮込みを耐熱のお皿に入れて、チーズを乗せて焼いても美味しいですよ」
浅葱の言葉に、「成る程」と声が上がる。
「そう思うと、このお料理がそんな特別なものが無いって気がするわね。ぐっと作り易くなったと言うか」
「そうね。早速作ってみるわ。でもやっぱりまずはこのベシャメルソースから食べてみて欲しいわね。絶対夫と子どもも喜んでくれるわ。こんなに美味しいんだもの」
皆喜んでくれて、浅葱は胸を撫で下ろす。ロロアとカロムと顔を見合わせて、にっこりと微笑み合った。
ありがとうございました!(* ̄▽ ̄)ノ
次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。




