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異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。  作者: 山いい奈
4章 偏食お嬢さんと、血液を作るご飯
33/92

第5話 じゃあ仕上げはそれからしましょう

豚レバを持ってマリナの家へ。

どうぞよろしくお願いします!(* ̄▽ ̄)ノ

少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです!

 翌日昼食の後、浅葱(あさぎ)とロロア、カロムは揃って村へ。そして馬車を置いて、養豚場(ようとんじょう)へと向かう。


 またのんびりと暮らす黒豚の放牧場を周り、奥の建物へ。昨日コールが出て来た、そして浅葱が豚レバペーストを作った木造りの建物だ。


 ドアに付いている呼び鈴を鳴らすと、そう間を置かずドアが開かれ、コールが顔を出した。


「おう、待ってたぜ。あ、こちら錬金術師さまだな? こんにちは、コールです」


「こんにちはカピ。錬金術師のロロアと言いますカピ」


 ロロアはあまり村に来ないので、浅葱以上に知っている村人が少ないのである。


「済まんな、昨日の今日で」


「大丈夫だぜ。用意してあるからよ」


 コールは言うと、冷暗庫を開けた。


 昨日家に帰り、夕飯でロロアに豚レバペーストを塗ったバケットを食べて貰ったところ、大好評だった。


「凄いですカピ! 滑らかで濃厚で美味しいのですカピ!」


 なので、一昨日作った(まぐろ)ステーキとともに、早速マリナに食べて貰おうと言う事になったのだ。


 カロムがまずはマリナに電話をし、話を付ける。「食べ物で貧血が治るんなら嬉しい!」とマリナは喜んでくれた。「でも嫌いなものは使わないでね」と釘を刺す事も忘れずに。


 その後養豚場にも電話をして、豚レバを再び譲って貰う約束を取り付けた。


「今日も100グラムで良いのか?」


「はい。食べて貰う人の好みに合うのか賭けみたいなところがあって、もし無駄になっちゃったら勿体無いので」


「何だそりゃ。誰だ?」


「マリナだ」


「ああ〜」


 コールは合点(がてん)がいったと言う様に声を上げた。


「確か偏食(へんしょく)が酷かったんだよなぁ。それを治そうとかか?」


「いや、酷い貧血起こしてな。薬も出されてるが、食い物でも緩和(かんわ)出来んかって、アサギが料理を考えてくれたんだよ。偏食も原因だろうしな。豚レバには血を作る効果があるそうだ」


「へぇ、そうなのか? そりゃあ凄ぇな」


「食べ物毎にいろいろな栄養があるんです。体質さえ問題無かったら、いろいろなものをバランス良く食べていたら大丈夫ですから」


「成る程な。ここはやっぱり養豚所だからよ、肉と言ったら豚が多くなるんだけど、大丈夫かね」


「大丈夫ですよ。豚は動物性たんぱく質もビタミンも豊富なので」


「たんぱくしつとか良く分からねぇが、大丈夫なら良かったぜ。マリナが食ってくれると良いな」


「ああ」


「はい」


「はいカピ」


 そうして浅葱たちは瓶に入れられた豚レバを譲って貰い、マリナの家に向かった。




「あらあらあら、いらっしゃい! あら、こちらが錬金術師さまと助手さんだね? こんにちは、マリナの母のルビアだよ。さぁさぁ入って入って。紅茶と珈琲(コーヒー)どちらが良い? クッキーは好きかい? パウンドケーキが良いかい? ああ、両方出そうかね」


 マリナの家を訪ねた浅葱たちは、マリナの母ルビアに迎えられ、怒涛(どとう)の勢いで言われながらあれよあれよと家の中に招き入れられた。自己紹介も挨拶もする間が無い。


「いやいやルビアおばさん、俺ら飯作りに来ただけだから」


「少しぐらい良いじゃ無いか。カロムたちが来るって言うから、クッキーもパウンドケーキも朝から焼いたんだよ。昨日は時間が無かったけど、今日は大丈夫なんだろう?」


「おばさんの少しは少しじゃ無いからなぁ」


 カロムが苦笑すると、ルビアはぷぅと頬を膨らませた。


「お客さまが来たらお()()しするのは当然だろう?」


「おばさんのは過剰なんだって」


 子どもの頃からの古い付き合いだから、こんな言い合いも出来るのだろう。だが浅葱とロロアはおろおろするばかりである。


「分かった分かった。じゃあ紅茶とクッキーをいただくよ。飯の作り方はルビアおばさんに覚えて欲しいが、マリナには見られたく無いんで、そう時間がある訳じゃ無いんだ」


「あら、見られたく無いって、どうして?」


「マリナが嫌いな野菜を、形が判らない様にして使う」


「へえぇ、成る程ね。それは私も参考にしたいよ。あの子、本当に嫌いなものが多くて。ああ、紅茶用意しなきゃあね。座ってておくれ」


 ルビアはそう言い置いて、台所へと向かった。


 この家の内装も、浅葱たちの家とそう変わらず、玄関から入ってすぐに居間兼食堂、奥に台所が繋がっている。


 居間兼食堂の真ん中に置かれているのは大きなテーブルセット。浅葱とロロアはカロムに促され、椅子に掛ける。その頃には浅葱もロロアも落ち着いていた。


 やがてルビアが、紅茶が注がれたティカップとクッキーがどっさりと盛られた木製の器を、盆に乗せて戻って来た。


「はい、お待たせしたね。たんと食べておくれ」


「ありがとう」


「ありがとうございます」


「ありがとうございますカピ」


 浅葱たちは有り難く紅茶に口を付け、クッキーをいただく。クッキーは素朴なプレーンと砕いたアーモンドが混ぜられたものの2種類で、どちらも紅茶に良く合った。


「ルビアおばさん、マリナの体調はどうだ?」


「そうそう、貧血だって聞いて吃驚(びっくり)したよ。そうだ、助手さんにはお礼がすっかり遅くなっちまったね。マリナが世話になったね。本当にありがとう。で、今日は貧血が楽になるご飯まで作ってくれるって言うんだろう? 本当に助かるよ。あれからマリナは元気でやってるよ。でも倒れた時はよっぽど辛かったんだろうね、自分基準で不味いと思ったもんは絶対に口にしないあの子が、苦い苦いって言いながら薬をちゃんと飲んでるよ」


「ごめんなさいカピ。苦く無いお薬が作れれば良いのですカピが……」


 ロロアが申し訳無さげに項垂(うなだ)れると、ルビアが「あらやだ」と眼を開いた。


「薬が苦いのは当たり前じゃあ無いか。そりゃあたまにはそう苦く無いものもあるんだろうけどね。錬金術師さまが謝る様な事じゃないよぉ」


 ルビアはあっけらかんと言い、プレーンクッキーをぽいと口に放り込んで「うん、今日も巧く焼けてる」と満足げに頷いた。


「さてアサギ、そろそろ調理始めるか」


「そうだね」


 話をしている内に、全員のカップは空になっていた。


「あら、クッキーがまだ残ってるじゃ無いか」


「多過ぎたんだよ。また後で貰うからさ。マリナが帰って来るまである程度まで進めておかんと」


「そうかい? じゃあクッキーは包んであげるから、持って帰って食べな」


「ありがとうございます。じゃあ台所お借りしますね」


「はいよ。材料は言われたもの用意してあるから、好きに使っとくれよ」


「はい」


 そうして浅葱とカロム、ルビアは立ち上がる。ルビアは紙片と鉛筆を用意した。


「ロロア、少し待っててね」


「はいカピ」


「あら、退屈しない様に、絵本でも出そうかね。ああ、でも錬金術師さまに絵本は子どもっぽいかね」


「いえ、お気遣いありがとうございますカピ。よろしければ、絵本をお借り出来たら嬉しいですカピ」


「はいよ」


 ルビアは壁際の棚から絵本を数冊抜き取ると、ロロアの前に置いた。


「楽しめるものがあると良いんだけど」


「ありがとうございますカピ! 絵本を読む機会がこれまであまり無かったですので、嬉しいですカピ」


 ロロアが言うと、ルビアは「そうなのかい」と微笑んだ。


 さて、台所へと向かう。


 洗い物などの手伝いはカロムに任せ、ルビアはメモを取りながら浅葱の手元を凝視する。


 まずは豚レバペーストに取り掛かる。


「あら、ホルモンのレバ? あの子、お肉駄目なんだよ。大丈夫かね。牛ホルモンの試食会も「牛は嫌いだから行かない」って言ってね」


「お肉の脂が駄目だって聞いたので、脂が殆ど無いレバならどうだろうと思いまして。これは牛じゃ無くて豚のレバなんですよ」


「豚なのかい。ああ、だから持って来てくれたんだね、売って無いもんねぇ。豚のレバも美味しく食べられるのかい?」


「ああ、食ったが旨かったぜ」


「牛のレバよりも少しあっさりしてるんですよ」


 豚レバペーストが完成し、冷暗庫に入れると、次はほうれん草のソースに取り掛かる。


 鍋で沸いた湯の中にほうれん草を茎から入れる。


「煮るのかい?」


「いえ、茹でて灰汁(あく)を抜くんです。これで渋味と苦味が抜けますよ」


「この一手間で味が変わるんだぜ。初めて食った時には吃驚したもんだ」


「そうなのかい? それも味だと思って食べてたけど、確かにマリナは口に残るそれが嫌だって言ってたねぇ」


「じゃあこれで少しは食べ易くなるかなぁ」


 そうして灰汁を抜いたほうれん草を微塵(みじん)切りにし、炒めた玉葱とにんにくを合わせて乳鉢(にゅうばち)で潰していると。


「成る程ね、そうすれば確かにほうれん草って判らないね」


「はい。なのでマリナさんにはこれがほうれん草って事は内緒ですよ」


「勿論さ。知ったらあの子は絶対に食べないからね」


 出来上がったほうれん草のソースも冷暗庫に入れておいて。


 鮪のステーキは、マリナが帰って来てから焼く事にする。マリナと弟のマルスは、ともに製紙工房に勤めているのだそうだ。


「そろそろマリナたちが帰って来る頃かね」


「じゃあ仕上げはそれからしましょう」


「じゃ、紅茶でも淹れ直すかね」


「おう、洗い物もすぐ終わるからさ」


 浅葱が一足先に居間に戻ると、ロロアが眼を輝かせて熱心に絵本を読んでいて、浅葱はつい笑みを漏らした。

ありがとうございました!(* ̄▽ ̄)ノ

次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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