0003話 えっ3人もいるの
ようやく転生完了。孤児院の前からです。
「また捨て子ですか。今度は…ヒューゴ(Hugo)君とウィンセント(Wincent)君とですか。」
「珍しいね。今どき捨て子なんて。」
2人の老婆が話し合う。
意外と孤児院に捨て子があるのは少ない。親を亡くした子供が人伝いに入るのが多い。
「しかも2人同時なんて。100年ある孤児院で初めてのことじゃない?前いたところではいたけど。」
孤児院を手伝う母子家庭のおばさん達がつぶやく
「血のつながりはなさそうさね。」
メンデル先生と呼ばれた老婆がおばさん達の後ろから近づきながらそうつぶやく。
「メンデル先生。どうしてそんなことがわかるのですか?2人ともここら辺では珍しい黒髪なんですけど。普通血縁ありとみられるのではありませんか。」
「い、いやなんでもないさね。ともかく何か置手紙とかあるさね。この年齢さね。育児の関係で何か月か知りたいんでさ。大方5か月っていったところだろうさね。」
「どうしてわかるのですか」
「まあね。赤ん坊が母親の母乳以外を食べ始める時期から考えた事さね。あと一昨日の子もそうだったし。」
「なるほど。母乳は私たちも与えられませんからね。」
「ひっひっひ特に私のような垂れ下がったしわだらけの代物じゃ無理さね。」
メンデルは冗談を言う。
この時代、人に与えるミルクのような代物はない。そのため乳母の伝手がない場合、赤ん坊が死んでしまう例もある。
彼らの親はどうやら自前の乳をあげ、世話ができなくなってから捨てたようだ。
「ともかく孤児院の部屋に連れて行きましょう。一昨日の女の子と一緒にね。」
「ローザちゃんでしたっけこちらも黒髪のかわいい子ですね。周りには注意しないと。」
おばさんが言う。
悪徳貴族による誘拐の対象になりかねない。特に艶のある黒髪の幼女は。
「ローザちゃんは彼らと一緒に行動させましょう。その方が手間もないさね。だけど母乳の手配は必要さね。とりあえず乳母を探すさね。3人も見捨てるのは嫌だね。その間は人肌に温めたヤギの乳を飲ませておいてさね。」
メンデルは町の産婆のところに行き、赤ん坊を持つ母子家庭を探し出し、孤児に母親ごと収容した。
むろん弱者の救済という一面もあったが、3人の赤ん坊の母乳の提供を求められたのだった。