幻想郷の英雄達
「宴会やるわよー!!」
次の日の夜、ハイテンションでそう言う紫に龍二は勿論嫌な表情で見る。
「無理矢理飲ませたりしないよな?」
「あれぇ?そんなことありました?」
(雑なボケだ……)
惚けるように言う紫を見て、龍二はそう思った。
「第一、貴方が主役なのよ?主役が出ないのはおかしいですわ。」
「俺が主役?」
「ええ。“一応”貴方が幻想郷に来た、そのお祝いってことですわ。誰かが幻想入りしたら毎回やっていますの。」
微笑みながら紫は言う。一応という言葉が引っかかったがすぐにどうでもよくなり、他のことにつっこんだ。
「毎回やってるのか……」
「ええ。まぁデジャブなことがおきそうだから、霊夢や魔理沙とはアポをあらかじめとっておいた方が良いですわよ?」
(そうか、あいつらは覚えているのか……確かに後で話しておく必要があるな……)
そう考えているときに、また襖が開く。
「言われなくても、こっちから来てやったぜ。」
襖を開けて入ってきたのは魔理沙だけだった。
「あら?霊夢は?」
「あいつは他のやつらと話してる。呼んでくるか?」
「いいよ、めんどくさい……後で俺が適当に言っておく。」
「わかった。で、今日はどうすれば良い?」
魔理沙は龍二に聞く。
龍二はそうだなと呟き、少し間が開いて答えた。
「とりあえず、今日は初対面な感じで頼むよ。デジャブでも良いから初対面の相手に必ず質問することがあるなら、してくれ。」
「成る程な……わかった。とりあえず、私は先に行くぜ。」
「私も行きますわ。」
そう言い二人は部屋から出る。
「にしても、お前相手に随分と突っ張っていたな……」
「なんでも、妖力がある相手にはああなってしまうようよ。」
前に言っていたことを紫は言った。
「成る程な……今までいろいろなやつを見たがあんな外来人初めてな気がするぜ。」
「まるで、興味ないねとか、夢見が悪そうだとか、指先がチリチリするとか言う人みたいだわ。」
「誰だそりゃ?」
「外の世界の話よ。」
わけがわからない魔理沙に紫はそう答えた。
二人が出て少し経った後に、ようやく龍二が部屋の外へ出る。
騒がしい方へと進むと、霊夢と会った。
「あら、貴方が新しい外来人かしら?」
いかにも初対面という態度をとる霊夢を見て、龍二は肩をすくめて呟いた。
「アンタとはアポを取る必要はなかったみたいだな……」
「大体予想はしていたわよ。」
歩きながら二人は話をする。
「まぁ自分のことをなかったことにするのはアンタが初めてな気がするけど。」
「あくまでも、幻想郷の活動だけだ。」
そう言う龍二に腕を組ながら聞いた。
「そこまでする必要がああるかしら?」
「それは……アンタには関係ない。」
「そう……まぁ良いわ。なんにせよ、無理はしないでね。」
そう話してると、いつの間にか大広間について、二人は中に入った。
「二人とも遅いぜ。」
「お!貧乏腋巫女の隣にいるのが今日の主役か!!」
「誰が貧乏腋巫女よ。」
外来人の一人が言った言葉に霊夢は目をつり上げて反応した。しかし龍二は全く反応せずに、空いている席に座った。
「ほら、なんか言いなさい。」
近くにいた紫が、龍二にそう言う。
「は?なんで俺が……」
「決まってるじゃない。貴方が主役だもの。乾杯の前に言う台詞任せたわよ。」
紫にそう言われ、少しため息をつく。
しかし、考えてはみるが特に言うこともなく――
「………乾杯。」
結局そう言った。
前フリは……?
宴会が始まってから、龍二は周りをただ観察していた。
人間は勿論、悪魔や魔法使いに妖怪、更に鬼や幽霊に妖獣までいる。
「彼女はいないわ。」
後ろから紫にそう言われて、少しだけ不機嫌な口で龍二は答える。
「何故アンタはそう、人の体調を悪くするようなことを言う…」
「あら?会いたかったんじゃないの?」
「逆だ。まずそんなことは考えてないし、そもそもどうしてその考えになる?」
「あら?私はてっきり会いたくて周りをキョロキョロと――」
「もう良い。聞いた俺が馬鹿だった。」
話し途中で龍二はそう言う。
「………まぁ良いわ。貴方からも話しかけたらどう?」
「あまり話したくない。」
「またそんなこと言って……でも確かに、今日は普通の外来人ばかりだわ。」
それはつまり、普通じゃない外来人もいるのか?
そう聞こうとする前に答えられた。
「この幻想郷に来る外来人の中にはね、英雄的存在もいるの。神と戦った者もいれば、幻想郷の破滅の危機から救った者もいますわ。仲間を大切にして、幻想郷を愛した者達が……」
「…………」
「彼女……東條雪菜が貴方を戦わせる為に異変を起こしたら、貴方はどうする?」
「………さあな。俺にもわからない。」
ため息混じりに龍二は答えた。そして一息いれてから話し続けた。
「けど、それは俺を戦わせる為……なら、その前になんとかすれば良い。」
「なんとかするって?」
「それをこれから考えるんだよ。」
「ふふっ良い答えを待ってますわ。」
紫は微笑む。
突然彼女の背後から、ピンク色の髪をした少女が現れた。
「その子が新しい外来人?」
「そうよ。」
(ふと現れたのに驚かないのか…?)「その人は?」
内心そう思いながら龍二は聞いた。紫が口を開く前に、その少女は自ら答えた。
「私は西行寺幽々子。紫のお友達よ。えーっと藤崎龍二だっけ?」
「そうだが……」
幽々子は龍二の瞳を見つめ、聞いた。
「貴方……剣か何か持ってるかしら?」
「!……これのことか?」
龍二は青龍剣を出し、幽々子に見せる。幽々子はその剣をまじまじと見ていた。
「気づいたらあったんだが、何か知ってるのか?」
「……いえ、特には覚えてないけど……何か懐かしいわ。」
幽々子はそう話しながら青龍剣を見続ける。
「もしかしたら、私は貴方の親類と会ったことがあるかもしれないわ。」
「何故そう言い切れる?」
「女の勘よ。」
(当てにならなさそうだ……)
キリッとした表情で言う幽々子に龍二はそう考えた。
「そうだ!今度うちの屋敷に来なさいな。剣を使う二刀流の庭師がいるから。」
「今はいないのか?」
少々デジャブかもしれない台詞を龍二は言う。
困ったように幽々子は答えた。
「それがね、みょんフルエンザっていう風邪にかかったらしいの。」
(やっぱりか……)「そうか…まぁ今度行けたら行く。」
「えぇ。その時は一度私に行ってね。あの子たまに人を見た瞬間斬りかかる癖が出るから。」
(殺人鬼だ…!)
ニコニコしながら幽々子が言うのに対し、龍二は苦笑いが混じった笑顔を見せた。
幽々子はその後他の場所へ行った。
「おーっ!見かけない顔だぜ!!」
後ろから声がする。
「アンタは?」
「普通の魔法使いだぜ。」
「……名前を聞いたんだ。」
呆れながら聞く龍二。
魔理沙は気がついて答えた。
「へ?ああ。私は霧雨魔理沙。あんたの名前は?」
「藤崎龍二だ。」
「そうか、よろしくな龍二!」
魔理沙は元気そうに言う。
龍二はため息をついて、
「やっぱ極力俺に話しかけないでくれ。」
と、小声で魔理沙に告げた。
「……了解。」
「にしても、ホントにみんな貴方のことを忘れてたわね……藍や橙にも聞いたけど。」
宴会の後、紫は龍二に話しかけた。少し息をはいて、龍二は答える。
「まぁ……望んだことだし、別になんとも思わない。」
そう言った龍二を、紫は不思議そうに見た。
「………貴方って、いつも同じことしか言わないわね。」
「そうか?特に意識した覚えはない。さて、俺は風呂に入ってくる。」
龍二は立ち上がり、その場を去った。彼の後ろ姿を見ながら紫は思う。
(人も妖怪も普通はワンパターンじゃない。半人半妖は特別?まさか………自己暗示かしら?)
いろいろ考えたが、それらしい理由はない。
「ワンパターンなだけね……」
紫は最後にそう呟いた。




