私たち用語の基礎知識
「あ、ねえ、誰かバイブわけてくんない?」
「いいよー、3、4本いる?」
解説せねばなるまい。
教室でいきなり何を話しているのかと思われるだろうが、これは本校生徒間でのみ通じる隠語なのだ。
バイブ、はシャーペン、もしくはその替え芯のこと。
ここでは後者の意味で、だから先の会話は、
「あ、ねえ、誰かシャーペンの芯わけてくんない?」
「いいよー、3、4本いる?」
となるわけだ。
隠語、というのは本来いかがわしいこと、いやらしいことを、そうは聞こえないように言い換えるものだと思うが、私たちの女子校では何故か逆。
何でもないものをわざわざエロく言う。
代表的なものをいくつか挙げると、
【オナニー】
予習・宿題など。
「英語でオナってきた?」
「うん、バッチリイッてきたよ」
のように使う。
ちなみに【イク】は、順調だったり、予定通りだったり、広い意味があるので、その時々で解釈しないといけない。
【中出し】
授業で指されたり、先生や部活の先輩に呼び出されること。
特に悪い意味での呼び出しの時、「生中出し」と言ったりする。
「今日職員室で生中出しなんだよー」
「イケる(大したことない)といいね」
【コンドーム】
教科書、参考書など全般。
「数学で中出しされる日なのに、コンドーム忘れてきてヤバイ」
【早漏/遅漏】
先生や先輩の優しい/厳しい。
「あの先生、早漏だから良いよね」
「最近部活の先輩が私にだけ遅漏な気がする」
【パンツ/ブラジャー】
予定・準備。
特に何の予定もなくて暇なことを指して、「私今日ノーパンだから誘って」のような形で使われることが多い。
この他、一部の部活でだけ通用する独自の符丁もあったりして、時々ややこしい。
これは私の体験談になるけれど、もうすぐ自分の誕生日だと言ったところ、
「あー、それじゃ輪姦してイカせてあげないとだね」
と言われてしまったことがある。
「お祝いして喜ばせてあげないと」だったらしい。
運動部ではそう言うようだ。
ソフトボール部の友人に聞いたところでは、試合は【ファック】、特に負けられない大事な試合は【アナルファック】と言ったりするらしいが、これがバレーボール部だとそれぞれ「頑張る」「死ぬ気で頑張る」の意味になって、両方の部員が居合わせた時など、ちょっとおかしなことになる。
「今度アナルファックだからさー」
「えー、そんなのうちはいつもだよ」
「先輩たちみんなパイパンにしちゃって」
「え、何でハメ撮りしないの?」
「青姦だもん」
「そっか、立ちバックなんだ」
こんな会話が飛び交ってはいても、本校の風紀が乱れているということはない。
明治からあるそれなりの名門校で、世間で思われてるほどではないにしても、まずまず真面目な方だと思う。
平成も半ばごろまで「男女交際禁止」が校則の条文の中に残っていたというくらい、歴史的にはお堅い校風で、逆にだからこそガス抜きとしてのそんな言葉遊び文化が発展したのだろう。
昭和の末ごろから始まったものとも、原型らしきものは戦前からあったとも言われる。
教師陣もどうやら私たちの悪ふざけは察していて放任しているらしい。
一度、本校出身の先生にそれとなく聞いてみた。
このままでいいんですか、と。
先生はちょっといたずら娘っぽく微笑んで言った。
「そんな遊びが流行ってる間は、本当にいかがわしい話はできないでしょ?」
そういう考え方もあるか、と乳首を立てて(感心/納得して)しまった。
そんなこんなで、今日も今日とて名門お嬢様学校に謎言語が飛び交うのである。
「ねえ、どうせみんなノーパンなんでしょ、マックで手マンしてく?」
「あー、いいね、最近私潮吹いてなかったし」
「フェラチオするんだって言ってなかった?」
「あんなのいつだってできる!」
「あ、新しいピンクローター買ったの?」
「うん、いいよ、ブッカケがはかどる」
「緊縛?」
「ううん、スパンキング!」




