第5話 従者契約(仮)
ど————しよ、これ。
目の前に灰となったレイラと軽蔑の視線を向けてくるステラとイースラ。
「この男、最悪なのです」
「乙女心というものを意にも介さないとは、下衆めっ!」
「まるで自分達には、乙女心を熟知しているような言い種だな?男のくせに」
ビクリっと二人は一瞬震えるが————
「それでも言い方というものがあるのです!」
「そ、そうだな、何となくこの勢いがあれば許される? みたいな雰囲気に任せて、ただでさえ塵のごとき微量な勇気を奮い起たせた結果がこれでは……トラウマになったらどう責任をとってくれるっ!? 言葉の暴力は心に深く刺さるのだぞ!」
ステラ、その言葉はレイラに刺さっているが良いのか?
レイラは白く虚ろな目でステラを見ていた。
「じゃあ、俺が『わかったレイラ、共に世界を救おう!!』とでも言えば良かったと?」
「あ〜〜ほかっ!? たかが一村民が何の役に立つというんだ! 連れていけるわけがないだろう!?」
「ほらぁ~、じゃあやっぱり俺が正しいんじゃないか」
「……解せないのです」
なにが解せないのだろうかね。
「レ、レイラ様。そろそろ元気になってください」
ステラが膝を抱えるレイラに恐る恐る声をかけるが、ぷいっと顔を逸らしてしまう。
その姿に某かの感情を覚えたのか、頬を桜色に染めつつ、こちらを恨めしそうに振り返る。
「うっ……うぅ~貴様! 何とかしろ!」
「何とかしろと言われてもなぁ……おいレイラ、あんまり仲間を困らせるもんじゃない!」
「ヤダヤダヤダ一緒に行く! 行くの! 行くでしょ!? 行くって言え!!!」
「お前いくつだよ!? 17だぞ! ……17だったよっ!? やだ……5歳児にしか見えねぇ」
「ぶーーーーーーーーーっ」
こいつ、段々幼稚さに磨きがかかっていっているぞ。
「で、ではこうしましょうレイラ様!」と何かを思い付いたステラ。
「元々はこの後、レイラ様と共に我々はとある試練を受ける予定だったのです。そこに彼も従者として連れていき、我々の仲間に相応しいか、見定めましょう」
「おい、何を勝手にーー
「報酬なら出すぞ」
「身を粉にして尽くしましょう……はっ!? 反射的に答えてしまった」
報酬って言ったって、この村にいる限りあったって使い道がないんだけどな。
自分の逆らえない本能に驚愕しているとイースラが傍によって来て声を落として言ってきた。
(ごめんなさいですが、一度だけ付き合ってほしいのです。大丈夫なのです、ボク達が絶対にお兄さんを守るのですよ)
(……いや、そこは別に良いんだけどな)
巻き込まれてしまったが、一度だけなら付き合っても良いかもしれない。
レイラがいくらポンコツでも、エルフと神官ならいくらでもサポートできる。
大事になんてならないだろう。
それに、今こいつは盾宣言までしたんだからな。その気構えに答えてやりたい。
いざ安心・安全の試練の旅……何だろう、ワクワクしてきたぞ?
「そこでイクスが合格すれば、連れていってもらえる?」
「ええ、もちろん」
「分かったわ! イクス一緒に頑張りましょっ!」
ま、合格する事はないだろうけどな。
「で、試練っていったってどこで何をするんだ?」
俺の言葉にステラはニンマリと微笑み言った。
「あの窓から見える山、そこでドラゴン退治だ」
そこはサカモトが向かった山だった。
2017/07/15 一部修正