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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
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第3話 時既に遅し

 思いっきりひっぱたかれた。

 ステラとイースラも笑うのを、必死で堪えていたのだから同罪じゃないんですかね?


 二人と目線が合うと、表情から感情が消えた。

 無かったことにする気だな……いいけどさ。

 あと二人とも顔こわいから、無の感情がかえって怖くなっているから。

 こっちみんな。


 レイラも赤かった顔が今では青くなり若干震えながら、俺の隣に座り直した。


「勇者の印が確認できた。レイラ様、間違いなくあなたは勇者だ。魔王討伐のため、我々と共に来てほしい」


 予想通り、とも言える台詞が出てきた。

 サカモトが言っていたように、王都は相当盛大に『勇者宣言』を行ったのなら……その威信をかけて絶対に引くことは無いだろう。

 これは勧誘なんて優しいものじゃない、接収だ。


 レイラはこの村から出たことがない。


 そんな人間が、生きていけるほどこの世界は優しくない。

 その事は俺が身に染みて学んでいた。


「あんたらの話はわかったけど……なぁレイラ、世界救う気ある?」

「割とどうでもいいわね」

「だよなぁ……」


 この村しか知らないレイラに世界とか言ってもな。


「あなたにしか出来ないことなのです、どうかお力をお貸しくださいなのです」

「私も重ねてお願いしよう。このままではかつての様に、数え切れないほどの無辜の民の命が散ることになる。我々にはあなたに頼る以外、道はないのだ」


 二人が頭を下げる。

 どうしたものかとレイラと目を見合わせた。


「もちろん、国を始め私たちも全力でレイラ様を支えよう。戦い方も常識も、この先覚えていけば良い。過去の勇者達も、初めから一騎当千の腕前というわけではなかったと伝え聞いている。問題にはならないさ」


 それに、とステラは続けてこう言った。


「それに悪いが、既にレイラ様は印を受け取っている。選択の余地はもうないのだ」

「……どういうことだ?」


 思わずステラを睨みつける。


「……たかが一村民風情が、随分な口を利くじゃないか」

「あっそ、席を離れていいなら離れるけどな――

「絶対ダメ」

「……勇者様はこう仰せなのだが?」

「ぐっ」


 忌々しそうに睨み返してくるステラ。

 ……まぁ俺が場違いなのは自覚してはいるんだけどな。


 恐らくステラは分を弁えていない俺にイラついているんだろう。

 俺は村人でしかないのだから。


 だが俺は俺で黙っているつもりはない。

 ここでレイラを一人にすれば、意に沿わない勇者業に身をやつしたうえ、使い潰されるのが目に見えている。

 俺がこの村で穏やかに暮らせるのも、偏にレイラが俺を庇ってくれたからでもある。


 受けた恩はきっちり返したい派なのである。


「すまんすまん、そういじけないでくれ。でも質問には答えてもらうぞ。何故もう余地がないんだ? レイラ以外に勇者を任せられないのか?」


「……いじけていない!! ……ので、お前の質問に答えよう。印は1度その身に受け入れたらそれを無かったことには出来ない。つまり、返上または譲渡は不可能だ。ついでに言うならば、肉を削いだり、焼いたとしても無駄だ。『聖痕』は痣等の類いではない」


 ちっ、とイクスは舌打ちをする。

 返上が出来なかった場合、イクスはレイラの尻の肉を削ぐか焼くかすれば良いと考えていたからだ。


(なんだそれは、そんなの呪いの類いだろ。質が悪いにも程がある!)


「二つ目の回答だが、他の者には不可能だ。何故なら印は1つのみ……それは印を授けた神がそう仰られたからだ。それは過去6人の勇者がこの世に現れた事で、いずれも印を持つ者は勇者以外にいなかった事から証明されている」


 なんと云う事でしょう。レイラは詰みました。

 それはすなわち世界が終わると云う事……残りの余生を皆で自堕落に過ごそうぜ。


「だが妙だな、レイラ様はご自分の意思で受け入れているはずなのだが……」


 ……

 ………………


 なんですと?

 逃避しかけていた思考が、ステラの一言で現実に引き戻された。


「神が一方的に印を与えるなど聞いたことがない。過去、6人の勇者は神から魔王討伐の依頼があり、それを受け入れた者だからこそ印は与えられたと伝え聞いている」


「おいこら給仕係どういうことだ」

「え? んーー覚えがないんだけどなぁ……」

「と、こいつは言っているが?」

「ふむ……印を持つのだから、神と接触しているのは間違いないと思うのだが……」


 確かに、印がある事がその証拠だ。


「――――あ」


 ん?今こいつ『あ』って言いやがったか?


「あー、昨日ここで酔っぱらってる女の人に『悪い奴いるから懲らしめて欲しいのぅ』みたいな? 事言われたかも」

「それでいいよーとか答えたのかお前は!!」

「え?だだだだってそんな壮大な話だと思わなかったもん!! どうせエッチなことしようとしてくる酔っ払いを追い出す程度にしか……どうしよぉイクスぅ」


 それは、あれだ……世間一般でいうところの――


「詐欺じゃねぇぇぇぇかああああああああああぁぁぁあああ!!」

2017/07/12 一部修正


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