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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
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第2話 勇者の印と蒙古斑

「どどどどどうしようイクスゥゥゥ私勇者なんてむむむ無理だよ!!」

「あっ、こら! 俺を巻き込むなよ!?」

「そそそんにゃこといわにゃいでよぉぉおおおおぉ!!」

「レイラさんやめて下さい、襟を掴んでガクガク揺らさないで下さい、悪酔いしてしまいます」


「心の距離をとらないでぇぇえええええええぇ!!」


 あ、やべっ本当にちょいと気持ち悪くなってきた。


 オッホン!

 二人の内、背の高い方のイケメンが咳払いをする。


 今は兵士達は外へ、二人は中央の丸テーブルに腰を落ち着かせている。

 他の男衆はというと、酒を飲み続けていた。


 何故なら今日の酒代は、コイツらが持つと宣言したからだ。

 金なんて役に立たねぇよ!と誰かが言ったら幾つもの酒樽が運び込まれ、男衆は嬉々としてそれを受け入れた。

 ……俺も呑みてー。


 イケメンの咳払いにレイラはピタッと動きを止めると、錆び付いた扉の様にギギギとイケメンの方を向く。


「レイラ様、話をしてもよろしいか?」


 さて、無関係の俺はあっちで呑み直すか。


「イ、イクスも一緒で良いのなら!」


 レイラはこともあろうか、俺の腕をがっちりホールドして話さなかった。


「「…………」」


 無言で威圧してくるイケメン達。

 いや、わかるよ。俺だって離れたいよ? でも、離してくれないんだよ!? だからそんなに殺意向けないで!


 そんな俺の気持ちが通じたのか、はたまた諦めたのか、溜め息を吐くと手のひらを出してきた。

 隣の元凶を見ると何故か頬が膨れていた……コイツなんなの?


 俺も諦めて席に着くことにした。


「先ずは私達の紹介をしよう。私達はヴァルスティン神聖王国に仕えている。名をステラ・スカイストファという。職業は……まぁ今は良いだろう。」


(ステラとか随分可愛らしい名前だな。)


 カミュナ村にも、女名のような男はいる。総じて、自分の名前にはコンプレックスを抱いているものだ。

 幸いにして、イクスは名前ネタで煽るような年ではないので、大人の対応でスルーすることにした。


 話は変わるが、エルフは精霊術を操る。

 精霊術は文字通り、精霊の力を借りた術だ。


 体感速度、索敵、翻訳を始め様々な術がある。

 とりわけ精霊術で代表的なのは幻惑だ。


 精霊は幻惑が得意なのだ。

 つまりは、そういうことだ。


 イクスがエルフにびびっていると、レイラがとんでもないことを言い出した。


「ヴァルスなんとかって何?」


「「「え?!」」」



「……おまえ、自分の国の名前も知らないの?」

「そんなの日々の生活に必要なの?」


 事も無げにレイラは言った。


「まぁ、確かに」

「納得しないでください!!」


 ちっこいのが声を荒げて訴えた。


「実際、この村は王都から大きく離れているからな。この村のほぼ全てが自給自足によって賄われているんだから、神の威光も弱いのは仕方ないさ」

「ぐぬぬ、由々しき事態なのです」

「レイラ様の教養の無さには恐怖すら覚えたが、話が逸れていくので戻させてもらうぞ」


 イケメンの言い種に俺は腹も……立たなかった、事実だし。


「神聖王国で先月御神託が降りた。この村のレイラという娘が勇者の印を与えたと」

「印? おまえそんなもん貰ったの?」

「もも貰わないよ!? 知らない人から物を貰っちゃダメって、お婆ちゃんに言われてるし!」


 なぜキョドる?


 じとーと見つめてみた。

 あははと目が泳いでいるものの……まぁ、嘘は無いだろう。

 何て言ったって『勇者の印』なのだから。怪しいって程度じゃ済まない。お菓子じゃないんだからな。


「印って具体的にはどんな物なんだ?」

「我々は『聖痕』と呼んでいる。物ではなく、身体の何処かにそれが現れているはずだ」

「失礼ですが、ご確認させていただいても良いです?」


 ちっこい神官はそう言うと、レイラを店の奥へつれていこうとする。


「ちょっと待てエロガキ」

「え、エロガキ!?」


 ちっこい神官は怒ったようにこっちを見た。


「いくらガキでも立場に託つけて、異性の裸を堪能しようなんざ見過ごせるかよ」


 そう言うと、ちっこい神官は頭上にハテナマークを浮かべた。

 次第に言葉の意図を理解したのか、ちいさく「……あっ」と呟くと顔を赤く染め上げる。


「ボボボ、ボクは――っ!?」

「すまない、不躾だったことを詫びよう。誓って言うが、この者は決して不埒な意図はなかったと、私が保証しよう。今女官を連れてくるので、確認させていただきたい」


 ちっこい方がなんか言おうとしていたが、ステラと名乗ったイケメンが手で制止、素直に謝ってきた。

 しかも、その上で自分達の主張を通し、「店の奥を借りても?」と店長の許可を取り、あれよあれよという間に女官二人がレイラを連行していった。


 そもそも、さっきの女官は何処から出てきた?

 ……もしかしたら、酒場の外には奴らの仲間が大勢いるのだろうか?


 神官がいるのだから、偽者という事はないだろう。

 この大陸で彼らを敵に回す馬鹿はいないだろうしな。


 という事は……もう成り行きに任せるしかないんじゃないか?


「あ、あの……」


 再び酒を呑もうとしたところ、先程のちっこい神官が声をかけてきた。


「先程はごめんなさいなのです!」

「良いさ、それに俺に謝ることじゃない。無関係って意味でもな、完全に俺は部外者だよ」


「ボクはイースラと言うのです。イースラ・ミュスラ、神聖王国では特別神官という立場なのです。」

「特別神官? 聞き馴染みのない役職だな」

「特別、とはいっても与えられている権限は大したものではないのです。実際には見習い神官と何も変わりはしないのです」


 見習い神官は勇者宣告なんてしに来ないだろうに……その辺りを含めて特別なのかもしれないな。

 若いうちから謙遜してちゃ将来大きくなれないぞ?


 そんなことを考えながら返事をしたもんだから「ふーん」なんて気のない返事をしてしまった。

 イースラと名乗った少年は唇を尖らせてすねてしまった。


 ついでにステラにも睨まれていた。


 どうしたものかと困っていたらレイラが戻ってきた。


「……印がございました、間違いございません」


 女官がそう報告してきた。


「ふーん? で、どこにあるんだ? 見せてみ?」

「ちょっ!? 見せれるわけないでしょ! イクスのえっち!!」

「……すまん、見せなくて良い。」


 えっちと言われて大方どこにあるのか予想が付く。

 そういったデリケートな部分には、触れない聞かない近づかないが俺の過去の経験だ。


「臀部にございます」


 女官が余計な事を言い出した。


「言わんで良い!!……臀部?」


 臀部っておまえ、それって、ただの……蒙古斑じゃねえの? とイクスは思った。思ったが決して口には出さなかった。


「……ブふっ」


 が、堪えることが出来なかった。

2017/06/05 初校のテキスト投げてました。

2017/07/12 一部加筆修正


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