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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
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第1話 勇者に選ばれた少女

初投稿になります。

よろしくお付き合いください。

ご意見・ご感想等あれば、是非いただければ幸いです。


 とある快晴の日中。

 良く云えばド田舎、悪く云ってもド田舎のカミュナ村の酒場には、昼間から男衆の笑い声が沸いていた。


「へぇ~、魔王復活ねぇ」


 店の一角にある丸テーブルでは、二人の男が物騒な話をしていた。


 俺ことイクスはエールを呑みながら、行商人のサカモトの話を聞いている。


「今王都じゃその話で持ちきりだよ。なんでも近いうち、勇者宣言しに聖騎士団が動き出すとか。」


 勇者宣言とは、勇者を早い段階で保護するための慣例的な儀式なのだそうだ。

 勇者を保護する目的以外にも、国民、諸外国にその存在を明らかにすることでアレがソレでどうこうするんだとサカモトは言っていた。


「僕も『こっち』に来た時は勇者になったと思ってたんだけどねぇ」

「はははっ、なんだそりゃ。じゃあ頑張って世界を救ってくださいよ、勇者様」

「やめてよぉ~。そもそも柄じゃないし、今の行商人としての人生に僕は満足しているんだから」


 サカモトは肩を竦めて苦笑いを浮かべた。

 そもそも男じゃ『勇者』にはなれないしな。


「道楽でこんな田舎にまで来るぐらいだからなぁ」

「人生とは壮大な道楽であるべきだ」

「ははっ、その道楽のおかげで助かっているさ。いくら自給自足とはいえ、限度は確かにあるからな」


 この村には、サカモトの他に行商人が来ることはない。

 山と森に囲まれ、街道もまともに整備されておらず、魔物もいなく、特産物というものは何もない。

 そんな村に外から人がくるはずもなかった。


 まぁサカモトは来たんだけどな。


 サカモトとの出会いは割愛しておきたい、蛇足でしかないのだから。


「これから世界は動くよ、色んなものが、色んな意味でね」

「こんな田舎じゃあ関係ないなぁ」

「それフラグだからね?」


 時折、サカモトはよく分からない言葉を使う。


「こんな田舎で悪かったわねっ!!」


 ドンっ!とつまみの皿を乱暴に置かれる。


「やぁレイラ様、今日もウェイトレスが素敵だね」


 この女はレイラ・カミュナ、この酒場で給仕係をやっている。

 なんで様付けで呼ばれたかというと、このカミュナ村の村長の孫娘であるからだ。

 村長の孫とはいえ、こんな辺鄙な村では特にすることもないので、この酒場で給仕係をしている。


「う、うぇい???」

「どうせまた異国語っぽい何かだろ?」

「ぽいって酷いなぁ」


 はははっと笑いながらサカモトは鞄を手に取る。


「なんだ、食っていかないのか?」

「言っただろ? これから『稼ぎ時』なんだ、そろそろ出ないと夜までに山を越えられないからね」


 今は昼だぞ?

 とてもじゃないが、半日で越えられる山ではない。

 でも恐らく、このサカモトなら可能なのだろう。

 出来ないことは口にしない男なのだ。

 呆れて良いものか、驚いて良いものか……


「まったく、死ぬんじゃないぞ」

「はいよっ、それじゃあレイラ様もお達者でー」

「オタッシャデー???」


 よく分からない挨拶を残し、サカモトは出ていった。


「……何の話をしてたの?」

「ん? 外の事とか色々だな。あっ、エールおかわりな」

「ちょっと、昼からちょっと呑みすぎじゃない?」

「俺は畑持ちじゃないからな。男手が必要なら声がかかるし、友人をもてなしてたんだから良いだろう?」


 給仕係なのだから仕事しなさい。

 しっしっと手を振る。


「……もぉっ!」


 レイラは少し怒って店の奥に引っ込んでいった。


(魔王の復活……ね)


 青年はつまみを頬張りながら、サカモトの言葉を思い出していた。


 過去6度、世界は魔王によって壊滅的な被害を受けている。

 国こそ滅ぶことは免れたが、幾つもの村や街が被害に遭い、多くの命が奪われた。


 それでも国がなんとか維持できたのも、勇者のお陰。

 もちろん魔王との戦いによってだ。

 突如として世界に現れた勇者が魔王を倒し、親玉を失った魔物達はどこかへ消え去る。


 なんとも現実味のない話である。

 前の復活が300年前、本当にあったのかも怪しいものだ。

 大体、突如として現れたとか言いながら『勇者宣言』なんて慣例がある時点で胡散臭いぜ。


(あぁ、食っちゃ寝しながら一生を終えたい)とかなりダメなことを考えながら、酒のお代わりの催促をしようとレイラの方を向こうとすると、入口から二人組の余所者が入ってくるのが視界に入った。


 何故余所者と分かったのか。

 それは二人とも深めのフードを被っていたから。

 一人は背が高く、もう一人は小さい……まだ子供だろう。


 自然と酒場は静かになる。


 そりゃそうだ。

 こんな辺鄙な村に余所者が来ること自体ないうえに、ローブで顔を隠しているのだから。


「おい、そこのお前」


 背の高い奴が俺に話しかけてきた。


「レイラ・カミュナ様はこちらにおられるか?」


 いきなり怪しい風体の輩がレイラの名前を口にした。

 どう答えるか一瞬迷う、がその迷いを肯定と受け取ったらしい。


 フードを被った二人組が一歩前に出てきてフードを放り投げた。

 そしてそれを見た誰もが目を見張ることになる。


(これはまた、大した美形が出てきたものだ)


 小さい方は紫色のショートヘアー、着ている服と帽子で神官であると断言できる。

 まだ幼さが残っているが、着ている服は司祭またはそれに準ずる上級神官のものだ、こちらのちっこい子供もまた、良い身分なのだろう。


 そして背が高い方……とはいったものの、身長は俺と同じぐらいの人物は、エメラルドグリーンの長髪、青年のようにボサボサの髪ではなく、艶やかで手入れが行き届いている癖の無い髪をしている。

 髪の隙間から細長い耳が顔を覗かせていることから、エルフ族だという事が分かった。

 また着ている黒いローブも金の刺繍が施されていて、彼?彼女?自身がそれなりに身分の高いことは容易に窺えた。


(魔術師っぽい服を着ているが、精霊術師だろうな。何でこんな辺鄙な村に……)


 そんなイクスの思考を遮るようにエルフは言った。


「皆の者! 清聴するがいい!」

((やかましいのオタクらですけどね!?))


 遺憾ながら、そんなツッコミを出来る者は一人もいなかった。


「ふむふむ。田舎とはいえ、皆聞き分けが良くて助かる。さぁイースラ」


 イースラと呼ばれた子供神官はおずおずと前に出て、意を決した様に言葉を発した。


「レイラ・カミュナ様をお迎えに上がりましたのです! 今代の神に選ばれし勇者様!」


 ……レイラ・カミュナ。


 それはこの村の村長の娘で、酒場の給仕係で――


「え? ごめんなさい。注文聞いてて……あれ? なんでみんなこっちみてるの?」


 俺の幼馴染が、勇者に選ばれた。


 ――選ばれてしまったのだ。

せっかく『なろう』に投稿するのだからと考え、生まれたのがサカモトくんです。

主人公は異世界人じゃないからジャンル違いじゃないですよね?


村から出るまでは連続投稿になります。


2017/07/12 一部改稿


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