表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
12/67

第9話 反省会はディナーの中で

「おぉ~良い感じに焼けてきたな」


 肥翼竜に仕留めた後、それを解体する頃には日も暮れてきたので、今日はここで野宿することにした。

 そして今は解体した肥翼竜を焼いているところだ。


 ただ火で焼くだけの野性味溢れるものだが、肥翼竜という名前だけあって脂がすごいあるようで、あっという間に表面が飴色のカリッカリに色付き、香ばしい匂いを出している。


 余談ではあるが、ショートダガーを研ぎ直すのに凄い労力を使うことになった。

 竜の血が全然落ちないし、次第に血が固まってちょっとかっこ良くなったりもした。

 とはいえ、そんなモノこのまま放置するわけにもいかない。

 そもそも研ぎ石がない。

 仕方ないので濡らした岩肌の壁に擦りつけてガリガリ研ぐという、なんとも間抜けな事をやる羽目になった。


「凄く良い匂いがするのです!? どうしてなのです?」


 目をキラキラさせながらイースラが聞いてきた。


「ふふん~、こんな事もあろうかと。いくつか調味料を持ってきていたんだ」

「お兄さんは天才なのですとボクは純粋に喜ぶのです!」

「イクス! 早く食べたいわイクス!」


 イースラとレイラは一緒になって両手を挙げて、全力で喜びを踊りで表現している。

 ……流行ってんの?その踊り。


「ボクは腿を御所望するのです♪」

「おぉ、どんどん食べろよ」

「その台詞に別の意図を感じるのですが、今は気にしない事にするのです」


 別の意図とは聞き捨てならないな。

 あるとすれば感謝だろう。イースラがいなかったら肥翼竜の最初の攻撃で俺達は瓦解していただろうからな。


「わーい、なのですー……むぐっ!? 肉汁が溢れてくるのです! 外はパリパリで中はフワトロ……これが腿肉!?」

「わ、私は胸よ! 頑張って捌いたもん!」


 イースラの感想に触発されたのか、レイラも辛抱堪らないようだ。


「了解だ。初めての戦闘であれだけ動ければ上出来だな。止めも躊躇せずに出来たし、よく頑張ったな」

「ふむ、では私は手羽先を貰おうか」

「あ?草でも食ってろ駄目ルフ」


 そう、問題はこの駄目ルフである。

 村でのどや顔は何だったと言うのだろうか。


「な、またしても私を駄目ルフなどと!? それに私だって活躍をしたではないか魔術で、そう魔術で!!」


 そう、魔術で……精霊術ではなく。


「そうだよ、なんだってエルフが魔術使ってんだよ!? 吐け、飯が食いたければ洗いざらい吐きやがれ!」

「だが断る、エルフが魔術を使って何が悪い!!」

「それだけじゃねぇよ、楽勝だったはずのこの試練でなんで苦戦してんだよ!?」

「もぐもぐ、楽勝なら試練にならないんじゃない?」


 レイラがまともなことを言った。

 だが無視する。


「そもそも、今回の試練どうやって三人で乗りきる気だったんだ?」


 この編成では囮役、盾役が不可欠だ。

 後衛が精霊術師と神官なら、前衛が初心者であるレイラだけでも問題はなかった。


 だが、精霊術師が実際には魔術師だった。

 これが問題だ。


 精霊術師なら相手を邪魔する呪文がいくらでもあるからだ。

 これならレイラでも前衛として機能できる。


 魔術は攻撃呪文しかない。

 そうなると前衛は常に後衛に気を配る必要が出てくる。

 今のレイラでは到底無理な話だ。


 村でのステラには、何か策があったように見えたのだが。


「私の魔術とイースラの神聖術があればどうにか出来るはずだった!」


 どうも具体的な対策は何も考えていなかったらしい。

 確かにステラの魔術とイースラの神聖術は一級品といえるだろう。

 それは実際に目の当たりにしたので異論はない。


 だが、どんなに優れた武器を持っていても、生かせなければ意味がないだろう。


 こいつはアレだ。


 駄目ルフなんかじゃない。

 馬鹿ルフだ。


 そう思うと可哀想になってきた。

 身体中に倦怠感が押し寄せて、もう割とどうでも良くなってきた。


「手羽先だったな、ほら」

「うむ、分かれば良いのだ」


 なんだろう、この気持ち。


「もぐもぐ、お兄さんが哀愁に満ちた優しい顔をしているのです?」

「あー、あれね。私も時々されるわ……あと猫に発情した犬を見たときとか」

「あ、そういえばレイラ。お前の剣どうしたんだよ」


 俺はその場にいなかったが、その剣は村長から受け渡された聖剣らしい。

 なんで辺鄙な村に聖剣があるんだよ……。


「おじいちゃんが『来るべき時が来たらこの『聖剣』は必ずやレイラの助けとなるであろう』って……」

「なんだよその口調!? ちょっと貸してみろ……ん?なんだこれ?」


 そういって聖剣を手に取ってみる。


 特に変なところは無い。

 …………語弊あった。

 柄鞘ともにいたって平凡すぎる程に、平々凡々な剣だった。


 聖剣らしさの欠片も感じない剣を握りながらも、刀身を見てみるまではと思いとどまった。

 ところが鞘から抜こうとすると、何か突っ掛かっているのか抜けなかった。


 少しムキになって力を込めたらズズズリと刀身が少し顔を出した。


「錆びてんじゃねぇぇかああああ!?」


 地面に叩きつけたら刀身の根本からポッキリ折れた。


「あぁっ、家の家宝がぁぁ!?」

「もぐもぐ、そういえば聖剣の出所は、昔村長が首都に旅行した折に金貨15枚で露店で買ったと言っていたな」


 でっかい手羽先を幸せそうに頬張りながらステラは言った。


「金15!? あの爺いあの村でそんなに溜め込んでいたのか!?」

「帰り際ですが、その事を聞いていた夫人が村長をボコボコにしてたのです」


 あの村で金貨15枚の価値を知るのは恐らく村長夫妻と俺以外だとボルカの爺さん位だろう。

 それが分かるだけに村長の悪質さが頭にきた。

 帰ったら……覚えておけよ、糞爺。


「まったく……レイラ、そのショートダガーはやるから繋ぎで使っておけ」

「やたー」


 何がそんなに嬉しいのやら。

 能天気な勇者様を少し羨みながら、飯をほどほどにして寝るのであった。

2017/07/22 一部加筆修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ