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悪の組織の改造人間が敵になるのはデフォルト

Kさんに付いていく道中、俺と先輩は可能な限り情報を集めようという方針に切り替えてどこまでも続く廊下の細部に目線を送り観察した。


結果は特にめぼしいものは無し。至って普通の廊下、至って普通の雰囲気。知り合いの知り合いが行方不明になる前に最後に接触したのがこの企業という状況証拠がなければ確実になんの疑いも持たず金魚の糞のように後を追っていただろう。


「特に何も無いですね。」


「そうね。不思議なくらい何もないわ。」


もっとこう初代仮面のバイク乗りの敵みたいな露骨な敵キャラや怪人とか改造手術室とかで溢れてるイメージで来たのに実状は普通。不謹慎だとか不適切な発言と言われても仕方ないがはっきり言って肩すかしをくらった気分だ。



「さあ皆さん着きました。」


適当に急用ができたと言って帰ろうかと思っているとKさんが一つの部屋の前で足を止めてそう言った。


部屋のネームプレートを見ると健康管理室と書かれた部屋は、今まで見た部屋の扉と比べると群を抜いて物理的にもセキュリティ的にも完全にここには何かありますとバラしているような堅牢な作りだった。


「この先にある機材はまだ世間には秘匿しなければならない最新鋭のものばかりです。よってこの先から見た聞いた内容は他言無用でお願い致します。」


そう言うとKさんは人差し指を立てた手をヘルメットの中央にやりあざと可愛い幼馴染み風のポーズをとった。どうせやるならヘルメット脱げばいいのに。


「では皆様、検査用の特殊スーツを支給致しますので着替えてここに集まって下さい。私は準備がありますので。」


そう言うとKさんは部屋の中へと消えていった。





「……あんまり見ないでくれる?」


専用のスーツに着替えて戻ってきた瞬間先輩からそう浴びせられた。


特殊スーツとか専用スーツ、それらの大体のイメージと言えばこれが一番だろう。


ピッチピチ


俺達に渡されたスーツは案の定身体のラインが際立つピッチピチのデザインだった。

しかも添付されていた着用マニュアルには下着の着用を禁止する項目もあるわけでつまりは俺達このスーツの下……全裸です。


流石に倫理面から透けちゃまずい部分には細工があるしカラーリングもネイビーブルーだから健全っちゃ健全だがやはりスーツ姿=全裸100%トレースゆえに恥ずかしさが女性にはあるみたいだ。


「皆様準備が出来たようですね。では案内致します。」


タイミングを図ったかのように現れたKさんに続き俺達は部屋へと入った。


「なんかすごいSFチックっすね。」


誰に向けてか解らないが室内に入った瞬間そんな言葉が漏れた。


室内は水族館の通路のように薄暗く、光源は青のLEDライトのみ。そこを抜けると機材のコードが複雑に張り巡らされた空間に両側に5つずつシリンダー型の筐体が等間隔で並んでいた。

心なしかこの部屋だけ異様にひんやりとした空気を感じる。


「それでは皆様、こちらにどうぞ。」


そう言われ俺達は筐体へと入っていく。まるで脱出ポッドかコールドスリープ装置に入れられるような気分だ。


「ではこれより診断を行います。」


瞬間、足先から順に冷気が登ってきた。

末端から感覚が麻痺し全身が冷えていく、出たくても扉はロックされて出られない。やがて強烈な眠気に襲われ俺はそのまま意識を手放した。




「……ここは?」


夢、なのだろうか。

目を覚ますと小高い丘に1人佇んでいた。


ふと見下ろせば城壁に囲まれたヨーロッパの古城都市が広がり、後ろを見れば深い森が広がっている。


単純に古風な感じが凄く美しい。そう思った瞬間―、


夕日のようなオレンジ色の光が一筋、古城に降り注ぐように一閃するとそこを基点に耳をつんざく爆音が響き、城が消し飛び遅れてやってきた衝撃波が俺の全身を突き抜けた。


それだけでは終わらない。今の爆音がまるで何かの合図のように空を得体の知れない何かが埋め尽くし何かをばらまいていく。それらは空中でミサイルのように後部から火を噴きまっすぐ都市に向かい城壁にその姿を隠すと火柱を立てていく。


さらには俺の後方に広がる森が不自然に騒ぎ出し木々の隙間から3メートルはあろう角張ったフォルムをした兵士のような軍勢が顔をだしまっすぐ都市へかけていく。


「なんだよこれ。まるで虐殺じゃねえか……」


そう呻くとすぐ近くを走り去ろうとした一体につかみかかる―が、その手は触れることなくまるで何も無かったようにそのボディーをすり抜け空を切った。


すると景色が揺れ俺の視界は真っ白な空間へと変わった。


「今の光景を目の当たりにしてどう思いましたか?」


不意に背後から声をかけられ振り向くとフルフェイスヘルメットにリクルートスーツ姿の女性、Kさんが立っていた。


「今のは一体ー」


「安室澪さん、貴方はこことは違う異世界というものの存在を知っていますか?」


突拍子もない問に俺は頷いた。異世界ってよくある魔法があるファンタジー世界とかパラレルワールドってヤツだよな。


「はい、貴方の想像する世界と同意と思って頂いて結構です。」


そう言うとKさんはヘルメットに手をかけそれを脱ぎ捨てた。

するとリクルートスーツが光の粒子になって霧散しその下から純白のドレスが現れた。そしてー、


「私は異世界の神です。」


確かに俺に聞こえるようそう言った。


「せ、先輩!?」


そして露になった彼女の顔は先輩に瓜二つだった。



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