鍵師 1
「俺ですか? 鍵師ですけど」
「え? 今時?」
デジタルやバーチャルの発展、近代化により電子ロックや携帯機との遠隔操作での戸締りが当たり前となったこの時代。
電子的なものはウイルスやハッカー等で危うい。アナログの鍵職人の起用はまだ終わっていなかった。
「今日は初任務だったんですけど、この有様ですよ」
鍵職人の束田盗十・通称タバトは就職後の最初の任務中にドジって廃墟に閉じ込められた。
「マジごめんなさい」
その原因を作ったのはクリケッタ。この近くのお屋敷に住むハーフのお嬢様である。
閉じ込められたばかり、顔も人の動きすらもわからないことから今は夜だろう。
時計の文字盤の蛍光部分は光っているが、この時計はオシャレ用のため電池がもうない。
小腹がすいてしかたなくポケットの非常食の実家から贈られた果物を食べる。
「何たべてんの?」
「柘榴」
めっちゃ酸っぱいらしいが、俺の味覚は幼少期に鍛えられ酸味がほぼ感知できない。
「へー男の子で酸味の強い食べ物好きなんてめずらしいね」
「なんか関係あるんですか? そういうの今時は男女差別っていうんでしょ?」
「関係あるっちゃあるけど、長くなるよ?」
「ま……どうせ暇だし、何かの役に立つかもしれないんで」
生きて帰れればの話なんだがな!
「遺伝子的に狩りをしない女は男が狩りから戻るまで果物の選別をして
腐っているかいないかを食べて判断していたの、腐ってたら男が狩りできなくなるから
酸味=腐敗というわけで男は必然的に酸味を避けるわけ」
「たいして長くないですね、一応合コンに使えそうっちゃ使えそうですが」
日本語うまいけど話し方はお嬢様っぽくない。外人はみんなこうなんだろうか。