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裏切りのメシア ②


「私はドライン=ヴォルディオン、彼女はエレゴイラ=シュヴェアンヴァニウム」


その名字は五大魔導一族、しかもその家名は当主のみが名乗る事ができるものだ。

つまり彼等は相当の魔力を使える強者だ。


「さっそくだが君達に一つ質問だよ。これにどう返事するかで君達を判断する」


大佐は指揮棒で俺達の真ん中あたりを差す。


「は、はい」


質問一つで俺達の価値が決まるなんて厭だな。


「1億を貰ったらどうする?」

「はい?」


例え話だと理解はしたが思わず聞き返した。


「おやっ、ずいぶんと普通の反応をするんだね」


けらけらと笑うドラインは、上官らしからぬフランクな態度だ。


「はい、オレなら株に使います」


ユースは真面目に働く気はないが、怠けながら大金稼ぐタイプである。


「さすがは知力推薦入隊者の回答だ」


俺もなにか答えたほうがいいだろう。一億と言われても親が金をくれるので、どのくらい価値があるかなんてわからない。

寄付するなんて答えはドラインのようなタイプには嫌われ、偽善者レッテルが確定なので絶対になしだ。

貯金もなんかありがちで、やはりドラインは詰まらないと言うだろう。

かといって一日で使うのも無計画バカという事でなしだ。

貧困市民にバラ撒くのは、どこのマウス野郎だと思う。

そんなことするくらいなら嫌いな奴のツラをビンタするのに使う。

では意表をついて燃やすか?


「いくら考えても答えが出ません。この質問に答えるのは今でなければだめでしょうか?」

「いいよ、生きていれば答えはいつでも聞けるからね」


「ところで、採用ですか?」


ユースが質問するとドラインは笑う。


「ああ、どちらにせよここに来られた時点で君達の採用は確定だ」

「え?」


俺達は拍子抜けして顔を見合わせる。


「この入り口付近は魔力の強い者しか入れないようになってる」


全然気がつかなかったが、よく考えたらなんのセキュリティもないのは変だよな。


「どうもハイテクマシンは苦手でね」

「は、はあ……」


大抵の入り口は自動で開くし、手動はここくらいだ。


「それと、エレゴイラ中佐とは口を聞いたらだめだよ」

「え、苛めですか?」


ユースがバカらしい質問をした。

軍人がガキみたいないやがらせするわけないだろ。


「シュヴェアンヴァニウム家の方には先天的な言霊呪力があるからですよね」

「そうだよ」

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