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一般人の不幸 一話 中立のモブ



茶髪の男子生徒は椅子に座り他の生徒と書類を管理していた。

そこに金髪の女が現れ、耳打ちした。


「転校生が来る?」

「ええ、なんでも親の転勤とか」


女はソファに座り、返事をした。


「素質のあるやつなのか?」

「さあ」


■■■


「ここが……」


僕が父の転勤で通う事になったのは名門私立学園。

家に近いからと選んだ学校で、絵に書いたような広い校舎にわくわくわくしている。


きっとクラスのマドンナとか美人女教師がいたりするんだろうな。


「え?」


共学なのに女子生徒が少ない。というか見当たらない。


「ここ元男子校なのよね」


振り替えれば美人女教師かと思いきや幼女だった。


「お嬢ちゃん、小学校サボり?」

「失礼ね私がアンタの担任教師よ!」

「え、マジで?」


あれなのかな闇医者に改造された合法ロリ的な?


教室の壁には絢爛な装飾の施された額縁がいくつも飾ってあり、一番左にはまだ絵がない。


「そこには優秀な生徒が飾られるらしいわ」

「へえ……」


クラスメイトに挨拶をし、漫画にいる不良生徒とかはおらず特に変わった事はなく普通に打ち解ける。


■■



「まーたやるんですかクラーケのアニキ」


オレンジ髪の女子生徒は竹刀を肩にかけながら声をかける。


「あたぼうよ。チョーシこいた生徒会の連中に泡食わせてやんぜ!」


長ランの男子生徒は窓から一般生徒の様子をうかがう。


「お、見かけねーツラあんな」

「そういや今日は転入生くる日らしいっすよ」


朱髪ロングスカートの女子生徒がしゃがみながら言った。


「ならそいつが……」

「なにしてるの?」


左腕に生徒会のタグを巻いた黒髪ボブの女子生徒が窓をあける。


「お前は生徒会書記で会長の女って噂のナゴミ・シノブ!」


オレンジ髪の女子生徒が指をさす。


「この前は中庭のベンチで一緒に弁当タイムだったらしいなアバズレが!!アタシ生徒会長狙ってたのによォ!!」


朱髪の女子生徒は地団駄を踏む。


「ここは不良クラス立ち入り禁止区域、報告面倒だからさっさと消えて」

「見逃してくれるのか。生徒会役員にしちゃ、ずいぶん優しいなあ……」


男子生徒は立ち去る素振りをみせて、女子生徒二人があとを追う。

生徒会書記が窓を閉め、その場を去ると草むらから別の男子生徒が姿を現し、外から窓を開けてなにかをなげた。


「なんだアイツ……?」


■■


「なあ転校生、オレらと学食食わね?」


昼になり、クラスメイトから食事に誘われた。


「あ、うん」


前の高校じゃ購買くらいしかなかったし学食楽しみだな。


「ハンバーグ定食か肉じゃが定食かカレーうどん。どれにするんだい」

「カレーうどん一択」

「あいよ」

「肉じゃが」

「ハンバーグ」


なんかセレブ校の割りに随分と庶民派メニューだ。


「なんでこの選び辛いメニューなんだろうな」

「全部食いてえやつだったわー」


食事が終わり三人バラバラになった。普通に前の学校や住んでいた町の特産品の話をした。

転校生だからかめっちゃ質問ぜめだったが母親がおしゃべりな人なので慣れている。

なんだかんだで放課後を乗りきった。


「はい下校時間です。速やかに帰宅の準備を……おや、君は転入生の」


紫髪眼鏡の男子生徒は左腕に生徒会のタグをつけている。


「ベンド・サンシャです」

「私はサウラ・ウギリ。副会長を勤めています」


まさか初日で副会長に出会えるとはすごいや。


「寮の部屋を案内するとかでリカン・リン先生が探していましたよ」


誰かと思ったが多分ロリ担任なんだろう。


「そうでしたか、ありがとうございます」


副会長が良い人そうでよかった。


「いえいえ~」


リカン先生を探していると、カバンを忘れたことに気がつきとりに戻る。


「きゃー!!」

「うわあああ!!」


なにやら悲鳴が聞こえる。野次馬が集まるそこに行くと、外壁が崩れて荒れていた。


「はいはい、野次馬は帰ってください」


副会長や他の生徒会が周りを抑える。


「なんの騒ぎだ」


白いマントを着けた男子生徒が現れる。


「会長、この辺りで爆発が起きたようです」

「……どうせまた不良クラスの仕業だろう。怪我人の有無は?」


生徒会長は薄茶髪でマントで学園の王子感がはんぱない。

さすがセレブ校、やっぱ庶民の僕がいたとこと違うなあ。


■■



「昨日はすごい騒ぎだったなあ」


話題は爆発事件で持ちきり、転校生の騒がれる期間は一週間より早くブームが去った。


「ねえグラウンドでさあ」

「マジで!?」


なにやら生徒たちが一斉にグラウンドに向かった。


「きゃ~!」


昨日の悲鳴とは違って歓声があがる。


「今度はなんの騒ぎだろ」

「お前知らないのか、生徒会長と不良クラスリーダーの公式喧嘩だよ」


不良クラスは隔離された旧校舎で、僕らの新校舎には立ち入り禁止らしい。

だがグラウンドはひとつなので使用可能だという。


「へー」

「お、はじまる!!」


双方はまるで傍観者など眼中にないかのようだ。


「昨日は君が校舎を爆発させたのか」

「あ?なにわけわかんねー話してんだテメー俺様昨日は予備校いってんぞ」


不良が予備校なんて絶対嘘だろ。他校の不良生徒と喧嘩にちがいない。


「超爽やかイケメンだからって調子こくなよ、このイケメン会長!!」


スケバン女子は貶しているつもりなんだろうが逆にほめている。


「父親が公務員で母親が宝石商だからって調子のるなよ、いつもカーチャンがアクセ買ってますけどー!!」

「それはどうも、ありがとう」


スケバンのカーチャンが生徒会長のカーチャンのお得意様かーい。


「昨日は校舎で爆発があった。日頃が日頃の為、犯人は君達だと断言せざるをえない」

「いいぜ、そういうことにしといてやるよ」

「ちょアニキ!」


二人の決着はあっという間についた。




「リオス、転入生の件だけど……」

「ああ、入っていいよ」


金髪の女がドアをノックして入るとパタパタと顔も知らない女子生徒が逃げていった。


「それで?」

「リカンの調べでは特に何も感じられないらしいわ」


調査資料のプロフィール欄には一般人にありがちな経歴しか記されていない。


「そうか」

「生徒会長の貴方が行けないなら私が見にいくけれど?」


女はソファに座り、会長椅子に背を向けながら語る。


「いや、学園の関係者ではない君が行くのは怪しまれる」


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