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テラシスⅠ 操縦士と特務機関・出撃、デアイ


はあ、毎日つまんねーな。

なんか楽しいことはねえのかな。

幼馴染みのカズネとの何気ない帰り道、何気なくそう思った。



「へくし!!」

風邪でもないのに嚔が出た。


「もータカシ、風邪でもひいたの?」

カズネが横から顔を覗き込んでくる。


「さあな、誰かオレの噂でもしてんじゃねーか」

ったく、近いんだよ。

昔からなにかとオレのことをきにかけてくれる。

ありがたいが、少し迷惑だ。


いくら幼馴染みでもいつまでも一緒にいられるわけじゃない。


「お前、オレはいいから自分のことを心配しろよ

操縦士試験テストの結果散々だったろ」


オレもカズネも、いつかは違う道にいくはずだ。


たとえば地球を出て、他の星で暮らすとか―――。


「馬鹿いってないで、早く家帰って寝なさい!」

「うっせーなあ、オメーはオレのカーチャンかよ!」

風邪を寝て治すなんて、何百年前の話だ。


「それにしても、最近平和だね」

「ああ、キュラソーの話もこの頃聞かないな」


西暦2200年、地球は謎の生命体に脅かされていた。


侵略者の名は【キュラソー】。

どこからともなく姿を現しては、気に入った人間に寄生する。


寄生されたら最後、感覚を鈍らせられる。

キュラソーは生命組織を破壊し、人間が行動するための機能を成り立たなくする。


やがて廃人と化したヒトは、空気に消えてしまう。


奴等が現れた原因はわかっていないが、政府は対策を練っている。


存在は人知を越たものだった。

太刀打ち出来ないのは仕方がない。


地球の全勢力は、捕獲キュラソーから遺伝子を抜き取り、人間に操作出来るようになる。

【戦闘型重装甲・ウォルター】を開発した。

――――――



宇宙機関【ユグラシル】の会議室では、キュラソーのこと、ウォルターの操縦士のことが議論されていた。


「貴様等!」

壮年の男は、机を叩く。

室内に大きな音が響いた。


「まず、新兵器のパイロットを決めようと思う」

やる気のない幹部等は、言葉無き威圧に、大袈裟なまでに姿勢を正した。


「はい、はいっ!」

少女は何度も手をあげる。

自分に考えがあることを強くアピールした。


「なんだね」

壮年の男はため息をつき、少女の発言を許可する。


「ディーツの“サラエイル”大佐がいいと思います!!」

少女の言葉に、他の面々も、納得したように頷いた。


しかし、壮年の男は、考えが違うようで、少女の意見を認めなかった。


サラエイル大佐は、その位に相応しく、優秀なパイロット、名のある軍人だ。



大佐おにいちゃんじゃないなら…誰がやるんだろう?」

―――――


二時間歩いて、ようやく家の前に着いた。


親父はいま仕事で惑星に行っている。


母さんは8年前に、キュラソーに寄生されて死んだ。


家に“おかえり”といってくれる人がいないのはもう慣れた。



この時代、進歩のおかげで用があるならすぐに宇宙移動も可能になった。


さすがに死んだ人間に会いにいくことは出来ないが、大きな文明の進歩ともいえる。



荷物を部屋においた。


《おかえりなさい、ぼっちゃん》

メイドロボのロボ子だ。


「ああ、ただいま」

話し方は滑らか、だが機械音。


《手をあらいましょう》


両手を洗浄装置にかざして、除菌は終わった。


「これで満足か?」

《はい、ぼっちゃん…》

なんだかロボ子の様子がおかしい。


「どうした?」

《だんなさまから連絡です》


ピピ、カガガ、といかにも旧式、といった様子で、機械音が鳴った。


鷹紫たかし

「親父、どうしたんだよ」

仕事で多忙連絡を寄越すなんて珍しい。


「今すぐ惑星“マキュス”に来い」


―――――



「ここがマキュスか…」

小さい星のわりには、建物は大きい。


内観はそこらに人がまばらにいる。

もっと入り乱れたようなのを想像していたが、あまりいないみたいだ。


「親父、来たぞ」

「ああ、まずは中に入れ」

親父に誘導され、ドアを開くと中は会議室だった。


「やっほーはじめましてー!!」

小学生くらいの女子が、軽快なステップを踏みながら俺に近づいてきた。

テンション高いな。なんでこんな堅苦しい場所に子供がいるんだ。


「彼女はアズサ=サラエイル。サラエイル大佐の妹だ」

「あの超エリートの!?」

「えへへ~」

兄貴を褒められて嬉しかったのか、アズサはまるで自分のことかのように照れる。


「で、親父はなんで俺を呼んだんだ?」

「お前が最新機体に乗るパイロットだ」


「は?」

「リーダー。どういうことです」

「言葉の通りだ」

「なぜあのサラエイル大佐になさらないんですか、せっかく妹君がこちら側にいるというのに」


「いや、サラエイル大佐は忙しいだろうからな」

「そんなこと言って…単にご自分の息子を活躍させたいだけではないんですか?」

…親父、親馬鹿すぎるだろ。


「冗談はさておき、タカシは学校でもトップの成績です」

親父がタイムを見せろと言うので、腕時計型測定器を確認する。


案外記録は気にせずやってきたので、自分でも初めてみたような気がする。


「エリア撃破は…」


装置からポップアップが浮かびあがる。


【10秒・エリア6】

「エリアフィールドって広いのに、たった10秒なんて信じられない!」

「プロでも無理だろ…その装置壊れているんじゃないか?」


ざわざわと会議室内は騒がしい。


「まさかこれほどとはな」

腕を前に組んだ親父は誇らしげにこくりこくりと頷いた。


そんなにすごいことなのか。知らなかった。



「なっなんだ!?」


急にアラートが鳴った。


〔警報! キュラソーです〕


ついに敵が攻めてきたのか―――――!

―――――――――――



《緊急事態発生!》

けたたましい音が、そこら中から鳴り響いた。


この音をきいたのは初めてだが、まずいことが起きた合図なんだと、すぐに理解した。


《異生体反応確認、こちらに接近中。キュラソーです!!》


「く…まさかこちら(マキュス)にまで現れるとはな…」


最近アイツ等がおとなしいと思っていたが、最近地球にいなかったのは、移動したからだったのか。


挿絵(By みてみん)

パネルに、気持ちの悪い生物が映った。


「タカシ、これがキュラソーだ」

親父は、険しい顔で、画面に映る其れを見ている。


(これが、母さんの仇なのか……!)


「……ねえ、どうするの、マキュスって小さいんだよ!?」

アズサの声は沈黙を破った。


「感傷に浸る場合ではなかったな…タカシ、【ウォルター】に乗れ。“お前なら乗れる”」

「ああ…俺、乗るよ」


更衣室で装着ボタンを押し、スーツに着替える。


<仇伐ちなんか、これまで考えたこともなかった。

英雄を気取りたいわけでもない。

けど、母さんのような犠牲者を出したくないと、強く思った>


「これがウォルター?」

学校にある機体に比べ

全体的に一回りほど大きい。


繋ぎ目がほとんどなく、なめらかな青の素体。


外装は艶やかな赤。


騎士のように武装された白のボディパーツ。


ヘッドの側面には二角獣の如く鋭い二つの角。


水のように透き通った透明なブレード。



挿絵(By みてみん)



「さあ、行くんだタカシ!」

「いやこれ、どうみても…」


有無を言わさずウォルターにぶちこまれた。


―――外装を視たときは微妙だったが、案外乗り心地がいい。


飛ぶ際の雑音もほとんどなく、G負荷も訓練機より軽く感じる。


しかし、まさか俺一人でキュラソー達を倒すのか?


こういうのは仲間と協力して戦うもんじゃないだろうか。


〔タカシくーん〕

アズサから通信が入る。

「なんだ?」


「キュラソーが近くにいるから気をつけてー!」

「わかった」


意識を集中させ、敵がどの方向から来るかを探る。


――――ナナメ下から這い上がってきたらしい。

ふよふよと、触手のような生物は舞っている。


しまった。どこを押せば武器が出るのか、聞いてないぞ。


とりあえず適当に押すか。


水のような液体が手から出て、キュラソーにかかった。


なんだこの役に立たなそうな機能は――――

そう思っていると、キュラソーが動きを止めた。


「なんだ?」


―――嵐の前の静けさ、というやつか?


早くブレードを構えなければ。


斬りかかろうとしたところで、キュラソーが萎んだ。


「……は?」


そして人間の少女の姿になった。


なんでこんなところに人間がいるんだ。


とにかく、少女を連れて一旦戻ろう。

―――


「――誰よその子?」


カズネは俺が宇宙にいる間、マキュスに呼ばれたようだ。


「……わかんねーけど、宇宙に漂流してた」


幸いまだ息がある。


「まあまあ、話は後だ。この子の治療をしなければ」


少女は自動タンカでホスピタルームへ運ばれていった。

―――


「あの、さっきの子は大丈夫なんですか?」

「ああ、どこにも異常はみられないよ」


少女はしっかり呼吸をして眠っている。

それにしてもまだ10才くらいの子がなんで宇宙に投げ出されていたんだろうか。



「……その子が気になるの?」


カズネは怪訝な眼差しで少女を見ている。


「こんな小さい子が親とはぐれたんだぜ、心配するのは当然だろ」


「……普通ならね。でもその子って普通じゃないでしょ?

肌も髪も死体みたいに白いし、頬に体温がないように見えるし」


たしかに肌は白いが、

どう見ても人間の女の子にしか見えない。

カズネは何をわけのわからないことを言っているんだ。


「さっきの話を聞いた分だとその子、キュラソーなんじゃないの?」

「……そんなこと、あるわけないだろ」

「わかんないわよ、他のキュラソーにも水をかけたら同じように人間の姿をとるかもしれないわ」


「たぶん、この子がキュラソーに取り込まれて、たまたま助かったとかさ」

「……わかった。そんなに言うなら、タカシがちゃんとその子を監視するのよ!」


カズネはさっきまでの険しい顔じゃくなった。


「まあ親が見つかるまで面倒は見るって」



「カズネちゃんから聞いたぞ鷹紫」

「親父」


「反対しないがちゃんと面倒は見るんだぞ」

「ああ」

少女が目を冷ましたようなので、向かえに行った。


「おお、鷹紫くん」

「目が覚めたと聞いて」

「……きゅ~?」


「それで先生、この子の身元とか名前はわかりましたか?」

「一通り調べた結果、彼女は恐らくキュラソーだね」


「……そうですか」


その場で見た通りだった。


キュラソーは母の仇。けど、少女を無下にはできない。

外見もあるが―――――



「なあ、向かえがくるまで家に来ないか?」

「きゅ~」

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