最終章.帰還
「異世界観光はいかがですか」の最終章.帰還です。ストーリーはだらだらと続いていますが結末が気になる人は先に読んで下さい。
誰がルート(千里拓道)を異世界へ転移させたのかが明らかになります。
最終章.帰還
王都での観光を終えて、僕達三人は村へ戻って来た。
翌日になると村を挙げての宴会を開いてくれた、三十名程の慎ま
しい宴でリュオンが旅の体験を身振り手振りで話している。
そして、翌朝僕はリュイナとリュオンを誘って大きなケサナの木
の切り株がある場所へ行った。僕は持っていたナイフを切り株に突
き刺した、伝説の剣の様にこの世界に足跡を残すのは何となく格好
良いかなと思ったから、一応リュオンとリュイナにナイフが抜けな
い事を確認させた。
もしも村が発展を願うならスピナの町の冒険者ギルドに懸賞金依
頼でも出して貰おう。こんな感じで、
報酬:1金貨(十万円)
対象:大魔導士ミリオンのナイフ
期限:一ヶ月後
ルートの橋通行料有効期間一ヶ月:1銀貨(千円)
切り株に付き刺さったナイフを抜き取って来る依頼です。
地図有り、F級冒険者でも挑戦可能、但し難易度はS級です。
橋の通行料の一部を一ヶ月毎に賞金に上乗せして行けば何時かは
報酬が10金貨になるかもしれない百万円ならミリオンの名に相応
しい、ミリオンは架空の大魔導士をでっちあげようかと思ってます、
だって自分の名前に大魔導士なんて恥ずかし過ぎる。
一応√(ルート)の百万で千の事なんだけど。
(・・・・・・)
そして、僕とリュイナとリュオンは僕が作った橋の近くへ行き、
橋を眺めながら三人でサンドイッチを食べた、この場所で僕はこの
世界に来て初めての食事をした、リュイナと二人で。
それから僕とリュイナが初めて出会った場所に向かった。
僕が地球つまり異世界に帰る事は既に話しておいた。最後は笑顔
でなんてとても無理だからせめて涙は見せない様に明るく振る舞お
う。リュイナはずっと俯いて僕の隣を歩いている、何時もは隣にい
るリュオンが今日は少し離れて付いてくる。
僕はポケットからスマホを取り出して液晶画面を見ながら歩いた。
液晶画面には地球への帰還予定時刻が表示されている。
そして僕達はその場所で立ち止まる、僕とリュイナが初めて出会
った場所、
「ここでリュイナと出会ったんだよね」
「はい、ルートさんが現れて助かりました」
「僕の方が助けられたよ、お互いに助けて助けられたね」
「そう、ですね」
そして僕は残り時間を告げた。
リュイナが僕に抱き付いてきた。
リュイナが泣いているような気がして僕は上着を脱いで
リュイナの肩に掛けてあげた。少し離れて様子を見ていたリュオン
を手招きして二人を抱きしめた。
「これからも仲良くするんだよ」
「元気でね」
特に気の利いたことも言えないまま、転移時間になった。
周囲の景色が次第に薄れて真っ白になり、別の景色が現れる、見
慣れた景色―引越してからまだ三年程だけど―、懐かしい景色―異
世界で過ごしたのは二十日間なのにとても長く感じる―、僕が住ん
でいるマンションの廊下、そして久しぶりの僕の部屋の玄関へと歩
みより、気付いた僕の手にはスマホ、あれ?部屋の鍵は?
異世界に置いて来た上着のポケットの気がする。
何だか自嘲した気分で周りを見ると、それが見えた。
ぼんやりと浮かび上がって形を取ったのは、つい先程別れて来た
リュイナの姿だった。
<分岐>
ルートさんが地球と言う名の異世界へ帰る事になった日、私は何
だか離れるのが寂しくて最後に抱き付いた。そしたらルートさんは
着ていた上着を私に羽織らせて
「この服は僕と一緒に消えちゃうかも知れないけど、もしも残せる
のならリュイナにあげるよ」
と言ってくれました。
ルートさんが消えた後、羽織っていた上着に袖を通すと目の端に
私には読めない文字が見えました、ルートさんが前に書いて見せた
文字と似ています多分そうでしょう。
そして、周囲の景色が薄れて真っ白になった後、私の前にはルー
トさんがいました、私の周囲は見た事も無い景色に変わっていまし
た。ルートさんが驚いた顔で私に近づいて来て抱きしめました。
ガチャと音がしてドアが開き中から女の人が出て来ました。
「××××―ひとん家の前で何やってんの?―」
「こんにちは、お隣さん、これはですね」
「××××―緊急事態よ、さっさと家へ入りなさい―」
「どうしたんですか、いきなり」
女の人が何か言っていますが私には理解出来ません。女の人はル
ートさんの手を引っ張って部屋に誘っている様です。
「××××―妹を助けたいの、回復薬を出して頂戴―」
「何故、回復薬の事を?」
「××××―あなたを異世界へ送ったのは私の妹なの―」
「リュイナ、ポケットから回復薬を取り出せるか?」
「良く分からない」
ルートさんが私に問いかけに、私は首を振りました。ルートさん
は私に上着を脱ぐ様に言って上着を着るとポケットから回復薬を取
り出して、女の人に渡しました。そして回復薬を手にした女の人に
付いて隣の部屋へ行くとベットに寝ている人がいました。
その姿を見た瞬間、私はベッドに駆け寄りました。
「お母さん」
女の人がお母さんに回復薬を飲ませると、お母さんは目を開き、
私の顔を見ると少し驚いて、そして笑顔になって
「リュイナ」
「お母さん」
二人で抱き合いました。
(・・・・・・)
それから30分程、説明して貰いました。お母さんが地球にいた
事やルートさんが私の世界へ来た事について。
ルートさんがポケットからプリンを出して皆で食べようと言って
食べました。プリンは美味しかったです、ルートさん、こんな美味
しい物を持っていたんですね、何故早く食べさせてくれなかったの
ですか?そう言うとまだほかにもあるよと言って、ポケットから部
屋の鍵と財布を出した後、上着を私に差し出しました。お母さんな
らメニューを読める様に出来るらしいです。
そして、私はお母さんと一緒に私の世界へ帰りました。
私が消えてしまった後リュオンは泣いていたそうです。辺りを探
し回った後村へ戻って、私が消えた事をお父さんに連絡して、もう
一度私を探そうと戻って来た時に、私とお母さんを見付けたと言っ
ていました。
リュオンはお母さんがいなくなった時に幼かったので、お母さん
の事はあまり覚えていなかったそうです、でもお母さんに抱きしめ
られた時に何だか懐かしい想いがこみ上げて来たと後で教えてくれ
ました。お母さんと私とリュオンの三人で村に戻ると村人全員が喜
んで歓声が上がりました。そしてお父さんとお母さんは皆の前で抱
き合っていました、お父さんはホッとした様子で涙ぐんでいたけど
お母さんはクールだね少しはにかんだように言った
「ただいま」
「お帰り」
「ただいま」
「ただいま」
「お帰り、リュイナ、リュオンもお帰り」
お母さんとお父さんのやり取りを聞いていたら私もただいまと言
っていたリュオンも釣られるように言って、お父さんがお帰りと言
ってくれた。こうして私たちは村へ帰還しました。
ほんの一月前には村を出た事も無かった私とリュオンの長い様で
短い旅はこれで終わりです。
(Fin)
リュイナとリュオンの母親ルアンナは、異世界への転生者で魔法使いです、地球に転移して帰還するには魔力不足でした。
ルアンナが地球で死亡したのは数年前なので、なんとか姉を頼り姉の協力を得てルートを異世界へ送り込みます。
設定ではルートの魔力に反応する転移魔法陣を使用した事にしました、ルアンナ本人は魔力不足でルートは魔法が使えません。
<分岐>はリュイナが地球で二泊三日の観光をする、半年間地球に残って異世界に戻る(リュオンと同じ年に)、なんて妄想です。