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BAD END  作者: ももかん。
目で追いかける
1/5

出会う話

 今日もきれいだなぁ。

 かっこいいなぁ。

 きれいな髪に、きれいな瞳に、きれいな体つきに、きれいな手…。

 私の…“僕”のものにしたいなぁ。


 三日前。

 文化祭が近づいてきていた。クラスではコスプレ喫茶をすることになっていた。

 いやだなぁ。こんなの、いやだなぁ。コスプレなんて、いやだなぁ。

 私は頬杖をついて窓の外を見ていた。

 クラスの人たちは私には目もくれずに、準備に急いでいた。バタバタとうるさい。

 やだなぁ。やだなぁ。最悪だなぁ。帰りたいなぁ。

「ねぇ、美月さん」

「…なん、ですか?」

 それはクラスの人気者、東野くんだった。

 私は少しうつむきながら返事をする。

「美月さんって、絵、上手だったよね?チラシ作ってもらえないかな?」

「なに、描けばいいの?」

「ん~…」

 考えるしぐさをしていた。

 クラスの女子たちの目がいたい。小さい声で「何アイツ」「生意気なんだけど」「オタクが」と言っていた。

 このクラスだけ、以上にリア充が多かった。ほかのクラスはアニオタが多かったのに、私だけハズレをひいてしまった。

「コスプレだから、いろんな服を着た人を描いてもらえば」

「……わかり、ました」

 私はそう返事した。

 いやだなぁ。

 最悪だなぁ。

 クラスの女子たちにいびられるに決まってる。もうやだなぁ。

 がすッ。

「ねぇ、何描こうとしてんの?」

 ほら、きた。

 最悪だなぁ。

「描くなら、この雪乃さんにしなさいよ?ひらっひらの純白のドレスがいいかしら?」

 クラスの女子たちのトップ、雪乃さん。裏の通称“雪の独裁政治”。

 このクラスの女子を全員下につけてみせた雪乃さん。私が最初に“奴隷”になった。

「モデルはわ・た・し!わかったわね?」

「………はい」

 こう返事しなければいけない。それはわかってた。

 やだなぁ、やだなぁ、やだなぁ。


*     *     *


 アイディアが思いつかない。

 雪乃さんを描くのはきまっていたけど、服がおもいつかない。

「まだ残ってたんだ?」

「…東野、くん?」

 私の前の席の椅子に東野くんがすわった。私の机のうえで頬杖をつく。

 いやだなぁ。話しかけないでほしいなぁ。

「…これ、雪乃さん?」

「…!描けって、いわれて」

「ま、“裏の独裁者”だからね…」

 東野くん…?

 たしか、東野くんは、雪乃さんの“お気に入り”だったはず。それは東野くんもしっていて、実は付き合っているっていう噂もあったようなきがする。

「俺、気に入られても困るんだよね。どっちかっていうと、大人しい人のほうが好きだし」

「そう、なんだ」

「うん、そう」

 にこりと笑ってみせる東野くん。その笑顔は夕日にてらされて、綺麗に私の瞳にうつった。

 ………きれいだなぁ。きれいだなぁ。うつくしいなぁ。

「…雪乃さんのこと、どうおもっているの?」

「……正直言って、嫌いかな?」

「…!」

 私は息がつまった。

 雪乃さんのお気に入りの東野くんが、そうおもっていたなんて。

 東野くんは、私の唇に指をあてた。

「これ、内緒ね?」

 片目を瞑ってみせる。ウィンクのつもりだろうが、ヘタっぴだ。

 かわいいなぁ。かわいいなぁ。かわいいなぁ。

 そっと、東野くんは私の唇から指をはなした。

 私に再び笑いかける。

「絵のアイディア、俺も一緒に考えるよ」



 それが、私と東野くんの出会いだった。

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