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王妃様のショコラ

バレンタインということで・・・

ここはアンバー王国王都ディアモンド。

明日にヴァレンタインデーを控えた王都のショコラティエやパティスリーは大忙しである。

アンバー王国のバレンタインというモノは、淑女たちが意中の殿方にショコラを渡すというのはもちろんのことだが、老若男女、誰でもショコラに限らずプレゼントを贈り合うという、ほっこりとした行事である。

決してお菓子業界の陰謀とかではない。

まあ、どういう習慣にせよ、大告白大会には間違いなかった。




最近シャルーは忙しいから、体にいいショコラを手作りしてあげよう。


アンバー王国王妃のレティエンヌも、明日のバレンタインを前に計画を練るのであった。


旦那様である国王シャルルのために手作りショコラを用意しようと考えたレティは、早速レシピを考える。

ショコラは元来、滋養が高い。

それを増幅かつ補強するようなものを混ぜたらいいのではないかと考えたレティは、

「オニキス爺やのところへ行ってくるわね!」

と、お付きの侍女たちに言い置いて、庭園へと駆けて行った。




「ねえ、爺や。滋養強壮にいい薬草ってどれがいいと思う?」

レティ自身でも薬草を見ながら、傍らに立つオニキス爺やの意見を聞く。

「滋養強壮でございますか?」

「そうなの。最近忙しいシャルーのためにね。」

「それはそれは。ではとっておきの薬草をお使いくださいませ。」

シャルルの体を想うレティの姿に、つい微笑んでしまうオニキスだった。


それから二人で薬草を採り、新鮮なそれらを手にしたレティは、

「ありがとう、爺や!これをショコラに混ぜたら完璧ね!!」

と、ある意味爆弾を投下してから、手を振りつつ庭園を後にした。

「はい??今ショコラに混ぜるとおっしゃったような…?いや、幻聴だ。そうだ、そうに決まっておるわい。」

さっきまでうかんでいた暖かい微笑みが、だんだん引き攣っていくのを感じるオニキスであった。




ガラスシャーレーに砕いたショコラを入れ、湯煎にかけて溶かす。

いくつかの乳鉢には、すり潰された薬草たち。

実験道具を使ってショコラを作るレティ。とてもショコラ作りをしている様には見えない状況である。

しかし、当のレティは至って大真面目。

薬草と溶けたショコラを混ぜ合わせてから、型に流し込んだ。

食べやすく一口大になっている小さなハート形。

「うん、我ながら上出来ぃ!!」

上機嫌なレティはこの時すっかり忘れていた。――― 味見を。




そしてバレンタイン当日。


今日も頑張って午前中に執務を終わらせたシャルルと一緒に昼食を摂った後、食後のお茶を侍女たちが用意している時に。

二人仲良く並んでソファに座って。

「シャルー。はい、今日のバレンタインのショコラよ。自分で作ったの。食べて。」

と、お茶菓子にすべくシャルルに例のショコラを渡した。

もう、それはそれは満面の笑み付きで。

レティの超絶カワイイ笑顔にくらくらしながらも、

「うわっ!うれしいよ!!ありがとう。早速いただくことにするよ!」

と、こちらも全開スマイルで応えるシャルル。

かわいらしくラッピングされた包みを開け、一粒つまんでポイッと口に入れる。


「~~~~~!!!????」


口の中に入れた途端に・・・滂沱の涙が流れてきた。

「まあ?!シャルー!!どうしたの??」

レティがびっくりしてシャルルの顔を覗き込んだ。

シャルルの背中を伝う冷たい汗。飲み込むことを拒否する自分の脳を叱咤して、ごくりとショコラを嚥下してから、

「いや、あまりにうれしくて、感激で涙が出てきたんだよ。で、レティ。このショコラには何を入れたの?」

「はい、最近シャルーは忙しいから、身体を壊しちゃ大変でしょ?だから滋養強壮に効く薬草を混ぜ込んでみたの!」

「…薬草ね…。そうか…。あまりの味…いや、美味さに、口の中でテロが起こったのかと思ったよ。ははは…。」

先ほどショコラを受け取った時のような爽やか全開スマイルは何処へ、今はもはや引き攣った笑みを貼り付けるので精一杯のシャルル。

そんなシャルルにお構いなしのレティは、

「お口に合ってよかったわ!全部召し上がってね!」

と、ますます輝くような笑顔で言ってのけるのであった。


書いてる自分でも、想像のできないお味でした(笑)

チョコ、大好き!!


ありがとうございました。

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