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公爵令嬢の魔法陣

いつもの設定より3年ほど前のお話です。


レティ14歳、シャルル22歳です。


2011/2/3 誤字修正しました。

ここはアンバー王国王都ディアモンド。

王城とは少し離れたところにあるトパーズ公爵のお屋敷。

トパーズ公爵家は、アンバー王国の筆頭貴族で、当代当主は宰相を務めている。




王城とはまた違った趣の、アットホームな感じのお屋敷。


朝、家族みんな-父、母、長男エメリルド、次男サファイル、長女ミリーニア、次女レティエンヌの6人家族-で朝食を摂った後、宰相の父とその見習い事務官の長兄は執務のために王城へ、近衛騎士である次男は王城内にある騎兵隊詰所へと出かけるのを、母と娘二人がお見送りする。

いつも通りの平和な一日の始まりだった。


お見送りの後、3人は優雅にお茶をしていた。

そこへ、侍女の一人が慌ただしくやってきた。


「奥様!旦那様が忘れ物をなさっているようでございます。昨日、これは明日必要だからと取り置かれたものがそのまま机の上に残っておりまして。」

掃除をしているところで見つけたのだろう。封筒に入った書類を公爵夫人に手渡す。

「あらまぁ、それは旦那様もお困りになるでしょう。誰かに城まで届けさせましょう。」

おっとりと公爵夫人は言う。

「お父様も、たまにはこんなことあるのね。」

長女ミリーニア-通称ミリィ-も笑いながら言う。

「あ、私がお届けしましょうか?」

次女レティエンヌ-通称レティ-が言った。

「魔法陣で空間移動の術を使えば、ちょちょいのちょいですわ!」

にっこり笑ってレティが続けた。

「まあ、大丈夫ですの?レティ。」

ちょっぴり心配げな公爵夫人。

魔法を使うのが得意とはいえ、まだ失敗も多いレティ。

「大丈夫よお!お母様!直接お父様に渡す方が、お父様の失態が皆に知られなくていいでしょ?馬車でなんてお届けしたら、ばればれですわ!」

「それもそうね、レティ。」

ミリィもレティの言い分に同意する。

「じゃ、お願いしようかしら。」

そもそも楽観的な公爵夫人。レティに任せることにした。




いそいそと自室に戻り、魔法陣で移動する準備に取り掛かるレティ。

レティの異動魔法は、魔法陣をドアに張り付け、そのドアをくぐっていくというモノ。

どこかの国の青色猫崩れロボットが、不思議なポッケから出してくる『ドア』みたいなのもだ。

ガチョっと開けたらもうそこは目的地。何とも便利な魔法陣である。


「移動先座標はお父様の執務室っと~♪ふんふ~ん♪」

鼻歌交じりで魔法陣を組んでいく。

「ふん、ふん、ふん♪できた!よし、発動っ!」

発動と共に勢いよく扉を開けたレティ。




がちょっ!

「おとーさまぁ!レティがお忘れ物を届けに来ましたよぉ!」

「!!!!!?????」

「あれっ?」

・・・がちょっ。

「誰ぇ??」




王太子シャルル-23歳-は、父王の執務室で仕事を手伝っていた。

政≪まつりごと≫を見習うという意味でも。


「シャルル、これを宰相のところへ持って行ってくれ。」

今、サインをしたばかりの書類の束を渡された。

「わかりました。」

書類の束を受け取ると、シャルルは国王の執務室を出て、すぐ隣の宰相執務室に向かう。


コンコンコン。

「失礼する、陛下からこの書類を預かってきた。」

ノックをし、扉を開けて宰相の執務机に向かっていくシャルル。

「わざわざご足労でございます、殿下。」

トパーズ卿が立ち上がってシャルルの元へ行こうとした時だった。


突然、壁に扉が現れたかと思ったら、


がちょっ!


その扉がおもむろに開いた。

シャルルとトパーズ卿が唖然と扉にくぎ付けになる。

勢いよく開いた扉から少女が現れた。


「おとーさまぁ!レティがお忘れ物を届けに来ましたよぉ!」


「!!!!????」


驚きすぎて声にならないシャルル。

「あれっ?」

少女はちょっと首を傾げて、目の前の光景を見つめてから


・・・がちょっ。


静かに扉を閉めた。


扉が閉まると、そこは元の壁。

まだ呆然としたままのシャルルとトパーズ卿。


「・・・トパーズ卿。ご令嬢か・・・?」

「はあ、まあ・・・失礼いたしました・・・」

「・・・いや、いいんだ。末のご令嬢だな?」

「そうでございます。まだまだ子供でして・・・。」

「・・・めっちゃかわいいなぁ・・・」




「誰ぇ??」

思わず扉を閉めてしまったレティ。

「うおおおおお、びっくりしたぁ!誰かいた!」

まさか、父親の執務室に他の人がいるとは思ってもみなかったのだ。いや、むしろいてもおかしくないのだが、世間知らずなレティにはわかっていなかったのだ。

「あ、忘れ物。」

肝心の届け物を渡せていない。


今度は恐る恐る扉を開いた。

「・・・お父様?」

そっと、扉から顔を出すと、まだシャルルはいた。

「おお、レティ殿と言いましたね?私は王太子のシャルルと申します!」

満面の笑みで扉に近づいてきてレティの手を取るシャルル。

「え?え?王太子様?」

握られた手に困惑の表情のレティは父親のほうを見た。

「そうなんだよ、レティ。」

苦笑いのトパーズ卿。

「むきゃー!手を離してくださーい!!」

握られたままの手をぶんぶん振るレティ。しっかりと握って離さないシャルル。

「お茶でもいかがですか?美味しいお菓子もありますよ!さ、どうぞどうぞ!」

レティをソファーのところまでグイグイエスコートするシャルル。

苦笑しながらもお茶の用意を侍女に言いつけるトパーズ卿だった。




宰相執務室で、思わぬお茶会をしている頃。

「シャルル、どこいった?」

休憩もとれず、息子に回すはずだった仕事までもせっせと処理する父王であった。


レティとシャルーの出会い編でした。

また、過去篇は書いてみたいと思っています。


この時点で、長兄は23歳、次兄は21歳、ミリィは18歳です。


今日もお付き合いありがとうございました!

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