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王妃様のお茶会

いつも読んでいただき、ありがとうございます!

ここはアンバー王国王都ディアモンド。


アンバー王国は平和で安定しているので、同じ大陸の国々や海を隔てた国々とも外交・交易が盛んであった。

モノだけでなく人の交流も盛んで、王都の学校には多数の外国人留学生が在籍していたし、王城にも、行儀見習いとして外国の高位高官の子女が出仕している。

王城の方はさすがにスパイなどの外交機密上、かなりの後見がないと受け入れはされていなかったが。

そんな中で、王城の、王妃レティエンヌの元に一人の侍女が新しく付くことになった。




「ヒイヅル国のサンゴね。よろしくね。私はレティでいいから。」

いつものサロンで、新しく来たサンゴと言う令嬢がレティに紹介されていた。

サンゴはヒイヅル国のカンパクという、アンバー王国では宰相に当たるという、えらいさんの娘で、嫁入り前の行儀見習いをするために、レティの元に預けられたのだった。

「不束者ではございますが、よろしく願いいたします。一生懸命にお仕えさせていただきます!」

アンバー王国では珍しい艶々の黒髪をもつこの美しい少女を、レティはすぐに気に入った。


色々な国からの留学生はいるが、ヒイヅル国の人間に会うのが初めてのレティやお付きの侍女たちは、根掘り葉掘り彼女の国のことを聞くことが日課になっていった。




ある日のお茶の時間。

「わたくしの国では緑色のお茶を好んで飲みます。」

というサンゴの発言から、みんなで「ヒイヅル国のお茶を飲もう会」をすることになった。


サンゴが自分の国から持参した道具を示しながら説明をしていく。

「これがチャガマ、これがチャワン、これがチャセンとチャサジ…」

ほうほう、と熱心に見つめるレティ以下侍女連中。

「チャワンにこのオマッチャという、茶葉を粉にしたものを入れます…」

説明を入れながらも、流れるような優美な仕草でお茶を点てていくサンゴ。

その仕草に見とれている間にお茶は出来上がり、

「どうぞ。」と差し出された。

レティが一口いただくと、それは苦みの中にも甘みのある、なんとも奥深い味わいのものであった。

「まあ!美味しいわ!」

とろけるような笑顔で言うレティ。

「ありがとうございます。それから、これをどうぞ。」

レティの超絶笑顔にうれしくなりながら、サンゴはお茶菓子と言って一口大のかわいらしい花の形を模ったものを差し出した。

「まあ、これもこちらにはない珍しいお菓子ね!とってもこのお茶に合っていて美味しいわ!」

またもや感嘆の声をあげるレティ。

周りの侍女たちからも賛同の声があがる。

「これは是非シャルーにも味わっていただきたいわ!」




レティが、自分で入れてみたいということを言い出したので、サンゴによるお茶の入れ方講習が開かれることになった。

せっせとお茶を点てるレティ。

侍女のパール達や侍女長なども一緒になって練習した。

何日もしないうちに、基本はマスターできたらしいレティは、

「じゃあ、早速シャルーをお茶に誘わなくちゃ!」

と、国王シャルルが籠っているだろう執務室に向かった。




コンコンコン!バターーーーーン!!


かわいらしいノックとほぼ同時に執務室のドアが全開になった。

「!!!!!」

書類の山に集中しきっていたシャルルはドアが蹴破られたのかと思い、飛び上がらんばかりにびっくりした。

勢いよく開いたドアのところには、最愛の奥様が満面の笑みで立っていた。

「シャルー!まだお仕事は終わりませんの?わたくし、お茶にお誘いしようと参りましたのよ!」

いつもの超キュートな笑顔付きで、執務中のシャルルを誘惑するレティ。

「う~~~~。レティ。すっごいうれしいんだけど、まだ終わらないよ…。まだ10時半だよ?これで終えてたら自己新だよ。」

可愛いレティの誘惑に涙目になる。

レティのお誘いを断るなんて、ありえない、あってはならないのだから。

「あら、わたくしとしたことが勇み足ですわね!ごめんなさい、シャルー?サロンで待ってるから早く終わらせてきてね?」

聞き分けよく引き下がるレティに、後ろ髪ひかれつつも

「わかった!いつもより頑張るから、待ってて!!」

と、闘志を再燃させるシャルルであった。


レティはそのまま、父である宰相につまみだされた。




「へえ、これがヒイヅル国のお茶会か。」


午後のお茶の時間。

サロンの、日当たりのいい窓際に赤い布を敷き、紙でできた傘をさし、お茶会の準備はされていた。


レティは、習ったばかりのお点前を披露すべく、チャワンに向かっている。

しゃっしゃっしゃっ、と小気味よい音をさせながらお茶を点てていく。

「どうぞ。」

と、シャルルの前に差し出されたチャワンを受け取り口にするシャルル。


「・・・・・・・・???」


口にした途端、シャルルの顔が渋くなっていく。

眉間に皺まで寄っているのだ。

「・・・・・・レティ、すっごい苦いね・・・」

これはなんかの精神修行か?と考えるシャルル。

「ええ?苦みの中にも甘みがあって美味しいでしょう?」

きょとんとするレティ。

「いや・・・?苦みしかないよ?」

シャルルの手からチャワンを受け取り、口にするレティ。

とろりんとした液体が口に入る。

「あれれぇ?とろとろしてて・・・苦い。」

レティもしっぶい顔になる。


「・・・あの、レティ様・・・」

おずおずとサンゴが発言する。

「チャサジ、わたくしがご用意させていただいたものではなく、いつものお茶の時にお使いになられているティースプーンをお使いになっているようなのですが…。」

サンゴの指差すものを見ると。

抹茶の茶壺の中に、銀のティースプーンが突っ込まれている。

サンゴのチャサジとティースプーンでは大きさがエライ違う。

10倍は違うだろう。

レティがサンゴに点ててもらっていたのは、慣れていない者でも比較的飲みやすい「おうす」というもので、レティが今点てたのは、本格的な「濃茶」というものよりもまだ濃い、抹茶の原液みたいなものになっていたのだ。

「あ~!どうりでとろとろしてると思ったわ~。」

まあ、レティ様ったら~!おほほほほ~!と笑うレティと侍女たち。





オレの口の中、めっちゃ苦いんだけど…


お茶菓子も忘れられているが、言い出せないシャルルであった。


次あたり、レティとシャルルの出会いとか書きたいなぁと思っています!


今回もお付き合いいただき、ありがとうございました!

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