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王妃様の悪戯

『逃げる令嬢~』番外編「Livraison de maison de nourritures cuites」のレティ視点です(^^)


今日のレティちゃんはちょっと黒色です☆

ここはアンバー王国の王都ディアモンド。

春も終わりに近く、麗らかな日が続いている。

先日王城にも新しく就職してきた者たちが配属され、初々しい、そしてどこか落ち着かない雰囲気に包まれている。

そんな中、王妃レティエンヌは懐妊も8ヶ月目を迎えていた。

ここまでは至極順調。レティ自身もお腹の子も元気なのだが、レティの夫である国王シャルルを筆頭に、周りは相変わらず過保護になっていた。




過保護な周囲ゆえ、最近のレティは退屈していた。

身体のために、毎日の適度な散歩はしていたが、それ以上に楽しいことがあまりない。

いや、させてもらえない、と言っても過言ではない。

さすがにレティ自身も、王都まで出歩くなどとは考えもしないが、なんだかそこはかとなく退屈なのだ。


そんなある日。


そう言えば、前にジルが言ってた幼馴染にまだ会ってなかったわね。確かパティスリー・マダム・ジュエルで修行するとかなんとか言ってたと思うんだけど。


少し前に、近衛騎士のジルコニスが休暇で実家に帰るところに出会って、レティが自分で焼いたマドレーヌを手土産に持たせたら、それを食べた彼の幼馴染が『菓子職人になる!』と決意したと言っていたということを思い出した。

そんなかわいい事を言ってくれたジルの幼馴染に会いたいと思っていたレティは、


マダム・ジュエルと言えば、今、王都でマカロンが大流行してるわね。それも食べたいから、彼女に持ってきてもらいましょ♪ しかもあそこにはアウイン侯爵夫人のシシィもいるじゃない! ……ふふふ、いいこと思いついちゃった♪


いつもの超絶カワイイ微笑が、今日はなんだか黒い微笑みになっているのには、誰も気付いてはいなかった。




「今日は食べたいお菓子があるの」


今日も猛ダッシュで執務を片付けたシャルルと共にお昼をとり、サロンの一番気持ちのいい陽だまりでまったりとしている時に、超絶カワイイ笑顔でおねだりするレティ。

「何が食べたいの? すぐさま料理長に伝えよう」

レティの破壊的かわいらしさにメロメロなシャルルは、愛妻の可愛いおねだりを実現すべく腰を上げる。しかしレティは、すぐさま彼の上着の裾をきゅっとつかみ、それを引き留めた。

「じゃなくてね、王都で今すっごく流行ってるパティスリー・マダム・ジュエルのマカロンが食べたいの」

「ものすごくピンポイントだね……」

「だって、とっても有名なのよ? 一度は食べたいじゃない」

「まあ、それもそうだね。じゃあ使いを出そう」

そう言ってシャルルは、侍女と近衛を使いに出そうと、今度こそ腰を上げたのだが、


「あのね、パティスリーには看板娘さんがいるらしいのよ。その子たちに会ってみたいなぁ。なんて♪」


お祈りのように手を組み、上目づかいにシャルルを見つめてみるレティ。

「へえ、よく知ってるね。で、レティは彼女たちに持ってきてほしいというわけ?」

「ええ! 前々からお会いしたいなぁって思ってたの!」

「……むこうも仕事があるわけだし……。聞いてみてOKだったら持ってきてもらうのでいい?」

「ええ、それでいいわ!」

「わかった。じゃあ近衛を使いに出そう」

「ええ!! ありがとう! シャルー!」

満面の笑みで頷き、シャルルにぎゅっと抱き付くレティであった。




近衛が遣いに出てからすぐ、シャルルの目を盗んで行動に移すレティ。


「作戦その1、お手紙。……シシィは預かった、ばーい王都の魔女……っと、これでいいかしら?」


どこにでもあるような真っ白の便箋と封筒を用意して、そこに手紙を記した。切れ者と名高いアウイン侯爵に渡すものだから、用心に用心を重ねて、レティの仕業だと簡単にばれないように痕跡を消した。


「作戦その2、目くらまし。シシィの近くに警備兵を置いてるらしいじゃない。侯爵様ったら、全く、過保護ねぇ」


人のことを言えないレティだけど。

警備兵の位置を確認する。どこに居ても見たい場面がすぐ見れる(どっかの録画テレビのキャッチコピーか!)『魔法の手鏡』を取り出し、パティスリー周辺を探してみる。

「ふむ、二人ね」

すぐさま見つけたレティは、パティスリーに近衛が入り、シシィ達と一緒に出て行く様子を目くらましした。

これで警備兵は、シシィ達がパティスリーから出かけたことに気付いていないはず。


それからレティは、シシィ達がパティスリーを出たのを見計らい、お手紙をアウイン侯爵の元に届けた。

丁度シシィ達と入れ違うタイミングを見計らって。

ちなみに、パティスリーのマダムとオーナーのだんなさんには『侯爵様を驚かせるので、シシィとルビーのお使いの件は内緒にしててね☆』と一筆書いて近衛に持たせていた。


「よ~し、準備はOK♪ さ、シシィとルビーちゃんとお茶を楽しみましょ!」


満面の笑みでスキップしながら玄関までお迎えに出ようとしたら、シャルルに抱き上げられてしまった。




初めて見るジルコニスの幼馴染は、とっても素朴でかわいらしい少女であった。


「待ってましたわぁ!! あなたがルビーちゃんね?!」


ゴムまりのように飛び出して、ぎゅっとルビーに抱き付くレティ。


「えっ???」

抱き付かれた本人のルビーは、何が起こったか理解できていない様子。

「うわっ!! レティ!!」

ルビーに飛びついた身重の妻に、慌てるシャルル。ルビーが尻餅をつかなくてよかったと内心ほっとしていたが。

「「「きゃー!! レティ様!!」」」

侍女たちも慌てふためく。


そんな周囲の動揺なんて気にも留めず、レティはルビーを抱きしめたまま、この上ない超絶カワイイ笑顔を繰り出して、

「私のお菓子を食べてくださったんでしょ? もう、とおってもうれしくて、こうやってぎゅ~ってしたくて、わざわざお呼びしたの!!」

破顔一笑、事もなげに言い放った。

「え?? え??」

まだ事態を飲み込めていなかったルビーだったが、抱き付いてきた超絶かわいらしい存在が王妃様ご本人で、しかもさっきから大きなお腹が当たっていることに、はっと我に返り、

「おっおっ、王妃様ぁ!?」

目を白黒させて、隣にいるシシィに助けを求めていた。

「レティ様。ルビーが驚いていますわ。少し離していただけませんか?」

苦笑いしながらシシィはレティに進言した。

「あらあ、ごめんなさい! 私としたことが! うれしすぎてつい」

にっこりと超絶スマイルで謝るレティ。そんなレティにぽかんと見とれるルビー。

「いっ、いいえ! 滅相もございません!! 初めてお目にかかります、ルビーにございます」

しかし、挨拶することをすっかり忘れていたことに気付き、慌ててスカートをちょんとつまみ礼をする。

「ふふ、かわいらしい。さ、お茶の準備ができてるのよ? 出前してくれたお菓子を一緒にいただきましょう」


かねてからの望み通り「ぎゅっ☆」とルビーを抱きしめたレティは、上機嫌でお茶の用意をしてある庭園へとシシィとルビーを案内した。




今流行りのマカロンを頬張りご満悦なレティだったが、


「レティ様! 犯人は貴女でしたか!!」


と、いつもなら余裕綽々な態度のアウイン侯爵が、若干取り乱した様子でお茶会に乱入するや、


「あらあ、もう見つかっちゃったのぉ?」


いたずらが成功した子供の様にニヤリと笑い、さらに上機嫌になったのだった。


今日もありがとうございました(^^)


いつもと違って「計画的犯行」のレティちゃんでした(笑)

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