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王妃様と睡魔

更新、間が開いてしまいました……


今回はちょっと大人なレティとシャルルです?

ここはアンバー王国王都ディアモンド。

うららかな陽気に、つい朝寝を過ごしてしまうような季節。

それでも日々の仕事はあるもので、次々に職員たちが登城してくる時間。

国王シャルルと王妃レティエンヌは朝食を摂ろうとサロンにやってきたところだった。

が、王妃の様子がおかしい。

なんだかまだ寝ぼけているような。




その朝。

「レティ。おはよう。もう朝だよ」

いつものように甘いシャルルの声で起こされるレティ。ちゅっとおはようのキスをされる。

いつもならそこで目を覚ますのだけれど、今朝は一向に目を覚ます気配がない。

「レティ?眠いの?」

「ん~~~。シャルー?」

むにゃむにゃ……といった感じでレティが答えるが、まったくもって瞼は開かない。

愛らしい、濃いはちみつ色の瞳はまだ見られない。

「起きないと、パールに怒られるよ?」

寝ぼけたレティもかわいくてたまらないー! とまたキスをするシャルル。

「あー、それ、こわいですー。起きるー」

それでも瞼は閉じられたまま、むくっと起きるレティ。

「だめだ、こりゃ。」

起こすことを諦めたシャルルは、レティを抱き上げると寝室の隣、レティのウォークインクローゼットに連れて行く。

そして、控えていた侍女のパールに、

「今日は全然起きないんだよ。このままでいいから用意させて。その頃には目も覚めるだろうし」

レティを預け、自分も支度をしに部屋を後にした。


20分後。

そろそろしたくもできただろう、とシャルルがレティの部屋に戻った。


最近の流行はコルセットがっちがちのようなドレスではなく、ふんわりとした軽やかなものである。胸の下で切り替えが入ったものや、ローウエストのものなど、デザインはいろいろであるが、『締め付けない、重くない』というコンセプトが貫かれている。というのも、『重い・苦しい』そんな拷問に等しいドレスを華奢なレティに着せているのは忍びない! という周囲の思いから(主にシャルル)、ふんわり優しい雰囲気の軽いドレスばかりを着せたところ、拷問衣装に苦しんでいた貴族の姫君たちの間で大流行となったのだ。

だから、レティの支度と言ってもそんなに時間がかかることもない。

しかし。

「・・・まだ寝ぼけてるのかい? レティは」

侍女たちによってすっかり身支度はできているものの、ソファに座ったままうつらうつらしているレティ。

「はい。……まさか陛下のせいではございませんでしょうね?」

ジロリ、と、パールに睨まれる。

「ない! 断じてない!! むしろ昨日は、オレが部屋に帰った時点でもうレティは寝てたんだから!」

あらぬ疑いをかけられたシャルルは慌てて弁解する。

昨日、自室で風呂に入り、寝支度を整えてから二人の寝室に行ったのが9時前。

その時点でレティはすでに御就寝だったのだ。

やむなく腕枕して眠ったシャルルだったのだ。

「ん~? シャルー? 用意できましたの~? 朝ごはんですね~?」

寝ぼけまなこなレティが言う。

「さ、食べなくちゃね~。でも、なんでこんなに眠いのかしら? 世界が狭くて仕方ないわ」

ほぼ目をつむっている状態のレティ。世界が狭いのではなく視界が狭いのだよ。

「ああ、もう。寝ぼけたまま歩いちゃ危ないよ。仕方ないなぁ」

全然仕方なさそうでなく、むしろ嬉々としてレティを抱き上げるシャルル。

「はーい。ありがと、シャルー」

と言って、シャルルの胸元にすり寄るレティは猫のよう。キュートさ倍増である。




サロンに着き、レティを席に座らせたものの、舟をこいでるレティ。


ぐーらぐーら……ゴンっ!!

「ぐっ……!!」

……ぐ~らぐ~ら……ゴツッ!!

「うう……っ。」


舟をこいだ拍子に、テーブルに嫌と言うほどおでこをぶつけてしまった。ぶつけた瞬間は痛みで目が覚めるのだが、またしばらくすると眠くて舟をこぐ。そして同じことを繰り返す。

あまりの間抜けさに、しばしこの状況を見守ってしまったシャルルやお付きの者たち。

2、3度ぶつけた頃にパールがハッと我に返った。

「レティ様!!たんこぶになっておりませんか?!」

やっと慌てる侍女たち。

「はやく冷やすものを! 腫れあがっては大変だ!」

過保護なシャルル。

「ちょっと痛いだけよぉ~。大袈裟なぁ~」

まだ眠げなレティ。

「もう朝食は諦めよう。レティ、今日は一日寝てなさい。いいね?」

寝ぼけてこれ以上おかしなことをされては気が気でない。

シャルルはまた抱き上げると寝室へ連れて行き、ベッドに寝かせた。


「念のため、侍医を呼んで診てもらおう。今日はオレもここで執務に当たる。宰相を呼べ」

ベッドにレティを寝かせたシャルルは、侍女に王宮侍医と宰相を呼びに行かせた。


先に到着したのは宰相、レティの父親トパーズ公爵だった。さすがにレティの心配はしているものの、きちんとシャルルの仕事を寝室に運び込ませた。

シャルルの仕事が運び込まれたところに遅れて侍医が到着し、すぐさま検診が行われるということで、シャルルとトパーズ卿は部屋を一旦追い出された。




しばらくして、侍女がレティの部屋の扉から顔を出した。

「お待たせいたしました、中へどうぞ」

シャルルとトパーズ卿が中に入ると、侍医はベッドの横でレティの脈を計っていた。

入ってきた二人に気付くと、満面の笑顔になり、

「おめでとうございます。お妃様はご懐妊されておられます」

と、告げた。

「かかかか、懐妊!?」

「レティがおめでたとな!!」


うわーーー!! きゃーーー!! やったーーー!! ドンドン!! ヒューヒュー!! パフパフ~!!


シャルル、トパーズ卿、侍女たちみんなで大騒ぎになった。

「眠気はつわりの一つでございますね。これから他にも症状が出てくると思いますが。」

侍医はにこやかにレティに言うのだった。




「ふわーーー!! 今ので一気に眠気が飛んじゃったわ」

目をぱちくりさせているレティだった。


もうちょっと後から出そうかなぁと思っていた話にもかかわらずもう放出……(笑)


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