邂逅の梅雨
軽やかな雨音で目覚めた。
何故か、怒っている君の夢を見た。
君は言った。
世界はすべて敵だ。
間違っているよ。
僕も、コトスも。
ユウも。
カナコも。
君を守ろうとした。
コトスは君のことが好きだったんだよ。
たぶん、
僕よりも
ちょっとだけ
ほんのちょっとだけ
君のことを心配していた。
君のことを気にかけていた。
君のことを愛していた。
コトスは最後まで君の大ファンだった。
ユウは
親友だと思っていた。
君の言葉を聴き
君の言葉を実行し
君のことを信じた。
そんなユウに君は難しい課題を与えた。
カナコはそんな君たちをいつも微笑んでいた。
カナコは
君を守っていた。
本当の妹のように。
高慢なカナコの態度に
いらついた君がいた
でもカナコは君を救っていたのだよ
反発する君をやさしく守り続けたカナコ。
皆、君の敵ではない。
君は人と時間、そして空間を共用するのが苦手だった。
ナガレハナサンゴのように。
君は攻撃用の触手、スイーパーを伸ばしていた。
夜だけでなく、昼間も。
ナガレハナサンゴとは違ってね。
スイーパーで周りのサンゴを溶かす。
キッカサンゴでさえ溶かす
君のスイーパー。
細い目を
さらに細め、うすい唇を引き結ぶ。
それが君のスイーパー。
僕は何もできなかった。
ただ、目を細め、
口をやや開く。
でも音はでない。
怖かった。
ただ君の目が怖かった。
僕はただのキッカサンゴだった。
君の前ではスイーパーの短いキッカサンゴだった。
君とみんなの夢を見た朝。
僕は泣いていた。
あの日に戻りたい。
君の明るい声をまた、聞きたい。
今朝も軽い雨だ。
梅雨でもない。
夏でもない。
軽い雨は、君の心を思い起こさせる。
あたたかくも、つめたくもない。
君の心。