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限界の初夏

すみれ色と黄色のコントラストの美しいスミレヤッコ。

日本で発見されたケントロピーゲだ。

主にフィリピンや沖縄で採集された個体が入手できる。

大きくなればなるほどすみれ色の部分が増える。

警戒心の強い魚で岩陰に隠れている場合が多く、

ダイビングで見るのは難しい。


そんな魚が僕の水槽にはいる。

水槽は僕の心を投影しているかのようだ。


限界を試したい…


そのために走る。

ただ走る。


目的はない。

限界を知りたいだけなのだ。


それと同じこと。

悲しさの限界を。


いや違う。


そんな限界は知りたくなかった。

でも今日知った。

悲しさの限界を。


好きな子が瞳を見せてくれない。

ゆらぐ瞳。

それだけだ。


でもそれで十分。

僕のこころはゆっくりと締め付けられる。


僕は水槽内のスミレヤッコのように行き場を失った。

アーチ上に組み合わされたライブロックの陰から

上目づかいで飼育者を覗き見る。

不安な心を抑えながら。


でも期待していた結果は得られない。


残ったのは悲しさ。


限界など知りたくなかった。

限界など覚りたくなかった。

限界など試したくなかった。


こんなかたちでは。


19回目の初夏。


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