とある人の怒り具合
いじめを受けた、その友人の思考回路とキレ具合。おそろしいです。
ですが、ある意味では―――あたりまえの思考?
苦手な人は回避してください。ただキレて怒り狂っている人がいるだけです。
ひとつ、思い出せば連鎖的にひろがっていく記憶。
苦い味。
かえしてよ。
声が響く。声にならない私のなかに響く声。ずっと泣いて、怒って、哀しんで悲しんだ声。
忘れられない。
忘れるつもりもない。
いくつ壊れた?
そして、また・・・今度はこいつが壊す?
人が―――――――――必死にこらえていれば、まぁ調子に乗って。
鋭くなった視線で、睨む。
怯んだのか、相手は顔をそむけた。コワイなら、そんなことをしなければよかったのに。私をここまで怒らせることは禁忌だったのに。
そのまま、眇めた視線の先。
エモノが動いた。
逃げる。
ッダァン!
ちかくの壁を蹴りつけたら、びくんっとそいつは身体を強ばらせて固まった。
逃がす?
・・・・・まさか。
「ねぇ、あんた」
思うよりも低い声。
冷たい冷たい、真夏の日蔭よりも濃くて深いところから風にのってくるような、その色。自分の目はどんな色をしているのか。
「あの子たちに、嫌がらせしてるよね」
断定に応える声はない。
どこか必死にシカトする。かまわない。いや、多いにかまってやろう。
唇が上向きにつりあがる。
「人がおとなしくして忠告・・・いや、警告してんのに」
無視って――――――
「失礼、じゃない」
トーンはかわらない。平坦な口調。
声だけで無理やり視線をこちらに向けさせる。
もう猶予はない。
ギリギリ。
そんなことは知っている。だから行動しなければ。
いつもの自分とはまったく違う、けれど、まぎれもない私の本性。ただ表に出さないだけの、それだけのこと。
静まり返った教室に、静かな私の怒りが満ちている。
前に落ちてきたプラチナの髪を後ろに払う。
「ねぇ知ってた?」
まるで毒の塊のような。
その事実。
「あんたたちがいじめてる、彼女たち、あたしの友達なのよね。で、ね? あの子たちが死にそうになってるの、知ってた?」
チャラチャラ、娯楽で人に嫌がらせをし続けているあんたたち。
その行いがどれほど罪深いか。
どれほど――――私のような人間からは疎ましいか。
「あんたらウザイのよ。こっちが集団でいたら逃げ出すくせに、嫌がらせし放題ってどんなアタマしてんの? しかも人が冗談抜きに死にそうになるまでするなんて」
アァ、キモイ。
あたしは、嗤う。
「脱線しちゃった。あたしはあの子たちが死んだら、自殺したら、あんたたちを人殺しと公衆の面前で罵ってやる」
にっこりと、やさしくやさしく。
とても強烈な毒を込めて。やわらかく。
ウザイウザイウザイ。
人に向かって言ったその言葉。
そのまま、いや、こちらの感想つきで返してやろう。
「あんたたちのほうが、キモイ。気色悪いのよ、病原菌とかカビみたいで。どのツラ下げて言ったのかしら。ほんとアンタたちのほうがいなくなればいいのに」
驚いたような、ショックを受けたような顔。
アァ、うっとおしい。
私はギリギリまでがまんした。現状が、変わるのか、見極めた。でも彼女たちはもちそうになかった。ムリ。一部の先生もがんばった―――――結果、こいつらは変わらない。反省の色も態度もまったくかわらなかった、陰でひどくなっただけ。
先生は数人、こいつらに丸め込まれた。その人たちは、こいつらの味方という立場になるようにしたようだ。
限界だ。
だから、最終宣告をする。
「あの子たちが死んだら、あんたたち、人殺しよね。人を生き返らせれるの? 私、死んだら返せってあんたたちを罵るわよ。しなさいよ? 生きて返しなさいよ、死ぬ前の彼女たちを。言い逃れできないからね。逃さない。人が死んで悲しんだこともないくせに、人の命がどれだけ大事なのかわからないくせに・・・。殺そうとするあんたたちなんて大嫌い、人殺しども」
そう、この発言によって呼び出されようとかまわない。
幾人かが、顔を青ざめさせる。
「あんたたちのほうがいなくなればいいのに。死んだって構わないよ? 彼女たちが死んじゃう前に、そうなってくれたら私は拍手喝采するかも、喜ぶよ、たった一人でも。どれだけ呪わしいか、あの子たちの友人や家族たちから見てどれだけ憎らしいかわかるでしょう。誰がかばおうと、彼女たちが死んだらあんたたちは人殺しなんだから」
言葉は返らない。
けれど。
私も、とまらない。
「もっとも私自身が何かをするわけじゃないから先生に訴えても無駄だからね。あんたたちが嫌がらせをやめない場合、私はこれまで一応あんたたちに掴みかかりそうだった人たちをなだめてたけど、これからは好きにすればと話すだけ。干渉しなくなるだけ。他の、あんたたちの行いによって怒り狂った人たちがあんたたちに向かうだけ」
健全で怒り狂った彼らにも害のない提案を少なくする。
提案を控えるだけ。
暴走してもかまわない。怒り狂った彼らが傷つかないようにするために手は出すが、逆はない。
それで、まだ、続けるわけ?
「お友達にも言っておいて? やめないのなら―――――――もうほんと知らないから。せめて、私たち一般生徒を巻き込むような悪事をした報いを受ければいいよ。私は私の友達だけに被害がいかないようがんばるだけにするから、他の無関係な人たちはあんたたち原因ががんばってかばいなさいよね」
言いたいことは、それだけ。
そう終わらせて―――――――静かに、なった。手が出せず、見て見ぬふりをしていた、人たちも。私も、口をつぐむ。
話は終わった。
私は、次の授業の準備を淡々と進める。
さて。ちょっとはすっきりした。あとは宣言通りにするとして。
次は、魔法実技だったっけ?
すこしは状況が変わればいいんだけど―――、ね。
気分を害された方、たいへん申し訳ないです。
いじめは人の心を殺してしまいます。なんとなく、心の底から嫌悪する人がいじめを実行する人にズバンっと心のままに切れるとしたらこうなるのかなと、そんな思いつきで書いてしまいました。
デリケートな問題ですよね。
投稿しておいて申し訳ないのですが、もしかしたら、自分でも腹が立つだけになる文かもしれないので短期間の掲載にしてみようかとおもいます。