03
ミュゲの記憶は、『私』が起きたとき以前のものはほぼ共有している。
ミュゲは私を大切にした。
私は結果的に、彼女の父母の墓のようなものでもあり。
血肉をわけた身内なのも確か。
何度魔力を注いでも起きなくて、絶望した記憶。
たぶん、私という魂と魔力を注いで起動させるタイミングが奇跡のように合って、今回の『私』があるのだろう。
でなければ、もっとたくさん、変な双子や、親にそっくりな変な令息令嬢がいるはす。
私はミュゲにさえ言ってないが、邪神封印の精度を上げるために、神のようなものがお膳立てした結果だと思っている。
封印の間が開いたという報告があった日。
ミュゲが殺された。
私と間違われて。
私たちは髪の長さと、よく見たら私の顔というか肌の感じが若干幼く若々しい、ぐらいしか差がない。
王家は平民姉妹に邪神封印の手柄を全部渡すのは嫌だった。
だから、突然出てきた妹の私を殺す予定だったが、ミュゲを殺してしまった。
ローブのフードをかぶると髪の微妙な長さの差はわからないから。
その日は別行動で、私はミュゲの身分証明書で図書館に、ミュゲは自宅で身の回り品の整理をしていた。
図書館で、本棚から本を手に取り、ぱらぱらと立ち読みしていたとき。
魔力で動く疑似心臓や肝臓等々が、ぬるっと熱を持ったのがわかった。
魔力値100。
体温がざっとあがって、総毛立って、鳥肌がざわざわした。
私はその場でしゃがみ込んで、吐きそうになった後、こんな場合じゃないと自宅に駆け込み、死体を見つけた。
私の片割れ。私の半身。
私がここにいた理由。
許さない。
王家側はミュゲを殺した直後に、神罰を喰らった。
暗殺に同行した王の主治医の治癒者(着実に死んだか確認するための医者みたいな感じか)が治癒力を失った。
そして、復活まで88日あった封印の期限は、44日になった。
封印を施す人間が殺されたりすると、封印期が半減するらしい。馬鹿では。
それを取り戻すために、王家のパートナーとして選任した連中から生贄を出す必要があるのだが、物理的に殺すと封印が半減するため、餓死させるらしくて。
本当に、馬鹿みたい。
私は封印を要請されたが、拒否した。
今、私はミュゲである。
殺されたのは妹ということになった。
私の安全を守るためと、封印する資格を手離さないため。
ミュゲの身分証で図書館にいたので大した嘘も必要なく、すり替わった。
「妹を殺した奴と二人きりで封印の間になんて行くわけないでしょう。文句があるなら、死刑にすればいいでしょうに。残り期間、22日にすればいい」
私が刃物で自分の喉を切り裂くと、治癒者たちが慌てて回復させてことなきを得た。
「はっ、半身だった妹亡き今、世界などどうでもよいわ」
と、吐き捨てた。
赤の王子が従者を連れて封印の間に向かい。
2日後、封印を20日に短縮して死亡した。
パズルは、88面までクリアしないと封印の間に閉じこめられたままになるし、3度失敗すると死ぬんである。
バイバイ、赤。
その後、国王の謝罪。
必要な道具の提供。
選任した王家の者以外でも、誰を連れて行ってもいいという許可。
犯人の処刑。
それらが約束され、残り18日に至った時点で、私は封印の間に向かうことになった。
一人で。
いや、私はミュゲの骸でもあり、本当の意味で彼女の墓。
答えはないけれど。
当初の予定通り
ミュゲと二人で。




