表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
編纂者と行くダンジョン巡り  作者: 鳥バード鶏チキン
魔人
9/32

9 ヴァルク遺跡


 レベル1ダンジョン。ダンジョンの入場条件に制限があるのはいくつかある。持ち込む道具が制限されたり、特定の魔法が使えなかったり。この遺跡もその類らしい。


 身体が幼児程度に戻る。知識は据え置きであるものの魔力量が外見相応まで減少してしまう。年齢を経るごとに魔力量は増え扱う魔法も高度なものとなるため、大人の感覚で魔法を扱うと直ぐに魔力切れになり動けなくなる。


 すべてが一から始まるということで「レベル1ダンジョン」と呼ばれている。


 ただ、侵入者を弱体化するために相当の魔力を要するのか内部に出現する魔物も弱い魔物だ。ダンジョン内の魔物を討伐しその魔力を吸収することで成長することができるが潜入前の強さを超えることはできない。そのためこういったダンジョンの攻略は自身の強さではなく、経験が試される。


 俺が普段扱う剣も、一定の魔力がないと扱うことができない。レベル1ダンジョンの準備は普通のものとは異なるため現在の装備では踏破は難しいだろう。


「はいこれ、使いなさい」


 セレスタから小さい鉄の剣をもらう。店でまとめ売りされるほど廉価なものだが、特に魔力の制限もなく振り回すことができる。


「こんなものも持っているのか。師匠って剣も扱うのか?」


「ただの錬成に使うアイテムだけど、こういうレベル1ダンジョン用に一定数は確保しているの」


 セレスタは貧相な杖に持ち替えていた。今まで持ち歩いていたあの杖も一定の魔力が要求されるようだ。鞄の中の道具を整理する、子供も自分たちでも動きが制限されない程度に減らさなければならない。


「オスカーはレベル1ダンジョンを踏破したことある?」


「数は多くはないがある、ただ同行者がいるのは初めてだ、師匠がいるなら気にしなくてよさそうだがな」


 ダンジョン狂いの1級ともあろう人物が苦手ということはないだろう。経験が試されるここでセレスタがいるのは心強い。


「以前--私とあなたが模擬戦闘をした後に言ったこと覚えてる?」


「魔法の適性がどうのこうのって話した時か」


「そう、その時言ったでしょ? あなたは才能という面では私よりも勝っている」


 たしかにそんなこと言っていた気がする。昔は土の魔法しか扱えなかったという話か。レベル1ダンジョンとはいえど幼児期の魔法しか使えないわけではない。あくまでかつての水準に戻るのは魔力量だけで後天的に覚えた消費魔力の少ないものは問題なく扱える。


「魔力の成長期はいつだった?」


「俺は5歳ぐらいから15歳までだったな。かなり早いと騒がれたのは覚えている」


 魔力の成長期は身長と同様に個人で異なる、がそれが訪れる時期は身長のそれよりも個人差が大きい。


「それは心強いわね。ちなみに言っておくけど。私の魔力の成長期は18歳から25歳よ。それまで魔力量は一般的な人の5分の1だったわ」


「……は?」


 それは大丈夫じゃないだろ、レベル1ダンジョン内での成長は現実の成長を反映する。早く成長期が訪れているとそれだけ多く、強力な魔法を扱えることとなる。逆に成長期が遅いと魔物をいくら倒しても魔力量が増えないため攻略の難易度は上がる。


 ダンジョン潜入時の年齢が5歳か6歳から始まる。踏破時の年齢は内部の規模にもよるが目安は15歳から20歳だろうか。滞在するだけで最大魔力量に比例した魔力が吸い取られるため、魔物討伐(経験値稼ぎ)のために留まり続けるのは現実的ではない。


 だからセレスタはレベル1ダンジョンを攻略する間は魔力がほぼ増えず、深部に進むにつれて強力になる魔物と相対しなければならない。消費魔力が少ない魔法を数多く修得しているといえども限界はある。


「だから戦闘はほとんどお願いするわね。サポートはできる限りするから離れないでね」


 どうも今回は俺が先頭に立たなければならないらしい。俺たちは万全の準備をした上で遺跡内部に足を踏み入れたのだった。


「待ってぇぇぇ! 置いでいがないでぇぇぇ!!」


 ダンジョンに潜入して僅5分の出来事である。潜入した矢先にウサギの魔物と遭遇した。成長のために討伐しようとするも仕留め損ねてしまい、逃げる魔物の追跡のため簡単なバフをかけて走り出したところ背後から絶叫が聞こえたのだった。


 初めに覚えるような簡単な魔法だ、同様のものを使ってついてくるかと思っていたが、その魔力すら惜しいのだという。まさかここまでとは、正直侮っていた。


 協力して探検するというよりは、俺がセレスタを介護していると言ってもいい。昔引き受けた荷馬車の警護を思い出す。セレスタから離れるのは避けなければならない。


「言ったでしょ! 離れないでって!」


 俺の後ろを不満を漏らしながらついてくるセレスタ。レベル1ダンジョンは1人で潜入するため人に合わせるというのが苦手だ。


「師匠はレベル1ダンジョンはどうやって攻略しているんだ?」

 

 凄まじいほどのハンディキャップをどのように攻略しているのか、気になってしまう。


「使いそうな道具は持ち込んで、極力戦闘は回避するわ。2人での探索は敵に見つかる可能性も高いのでその動き方はやらないわ。あなたのような子供の時から多い魔力を持っている人が一緒だったら私は金魚の糞のようについていくだけよ」


 複数人で同じ動き方はできないという。


「しかし、レベル1ダンジョンのなかには道具の持ち込みができない所もあるだろ。そういう時はどうするんだ」


「ゾンビアタックよ。力尽きて、再突入を繰り返す感じ。拾える道具の質の上振れを狙う感じね。私も魔力量が少ないだけで身体能力は中の上だから、戦闘は苦戦をするけど切り抜けられないこともないわ。……ほら前から魔物が来ているわよ」


「知ってるよ」


 俺は剣を構え、動く石像と対峙する。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ