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夢幻大迷宮  作者: 鳥バード鶏チキン
リザンへ
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42 師匠の足は飾り、ネズミが食い散らかすはチーズ


 ……失敗した失敗した失敗した。


 蒼月の裏洞の挑戦だったが、道中でセレスタを庇ったライラットが死亡したことで残された3人ともダンジョン入り口に戻されたのだった。


 大切な装備や持ち物は事前に収納魔法で移していたため探索失敗でのデスペナルティはさほど問題ではない、再突入のために必要な魔力もレベル1ダンジョンでは少ないため休息の時間もさほどかからない。


「いやぁ、失敗しちゃったわね」



 俺達4人、入り口で大の字で仰向けになり天井を眺める。周りには脅威となりそうな存在はないため少しはゆっくりできそうだ。


 いつかはダンジョンの踏破に失敗するだろうとは思っていたが、ここでそうなるか。個人では探索に成功したダンジョンだし、油断したつもりもなかった。


 レベル1ダンジョンの複数人での探索はやはり難易度が上がるな。


「レベル1ダンジョンでは先生は貧弱って話だったけどまさかここまで弱いとは……」


「だから前もって言っていたじゃない」


「限度ってものがありますよ……足が遅くて、魔力が少なくて防御や攻撃に一切期待できない。僕らでそれなりに攻撃は庇いましたけど、雑魚の羊の頭突き一発で目を回されると流石に困ります」


 前評判以上に貧弱だった1級に戦慄する2人。続いて、こんなセレスタを引き連れてヴァルク遺跡を制覇した俺の評価が行われた。


「……ライラット。ダンジョンに潜入したら師匠を背負え」


「確かにそっちの方が楽そうだな。分かった」


「それじゃ僕が最後尾に入ります。先頭のオスカーさんは援護が減って負担が増えると思いますが頑張ってください」


 俺達で対処法を考える。当の本人の意思が当たり前のように無視されていたが、探索の成功率を高めるためにはしょうがない。時間はあるとは言ってもここで何時間も寝転がるわけにはいかない。


「ねぇ、皆さん。私自分の足で歩きたいなぁ……て」


「お師匠様。罠を踏んで上から降ってきたイガ栗で致命傷を受けていたじゃないですか」


「罠の有無なんて踏むまで分からないじゃない」


「ウルフィンも見えてない不可抗力の罠にまで引っかかるなとは言ってないぞ。私たちが引っかかって見えるようになった罠をワザと踏むなと言ってるんだ。先頭のオスカーはともかく私たちはそういうのは回避できるはずなんだが……」


「……ごめんて」




 ダンジョンに再突入し、ライラットがセレスタを背負う。先頭で戦う俺の負担は増えたが探索自体のテンポは上がった気がする。


 多少の生傷は受けたものの、襲ってくる魔物を退けてダンジョンを進む。探索中にじっとりとした空気が肌に触れるのがまぁまぁ不愉快だったものの、それが幾分かマシになるころにはダンジョンの出口に差し掛かっていた。


 


「先生、重い。早く降りてくれ」


「えぇ〜……結構快適だったのに」


 背中にしがみつくセレスタを引き剥がすライラット。名残惜しそうに離れるセレスタ。ダンジョンを出たところで俺達の体は潜入前に戻った、視線の位置が突然変化するこれには未だに慣れない。


 ダンジョンを出たところは一面の荒野が広がっていた。ウルフィンが地図を広げて現在地を確認する。


 

 蒼月の裏洞というのは蒼月滝という滝の裏側にある洞窟だ。そしてダンジョンを超えた今、その滝から西に約250キロ移動していた。


 ダンジョン内で実際にその距離を歩いたわけではない。今出てきた洞穴が蒼月滝の裏とダンジョンを通じて繋がっていたのだ。


 ダンジョンというのは空間の異常だ、普通だと歩いて20分かかる距離を数時間かけて探索する必要もあればその逆も然りといったところだ。

 

 さながらワープゾーンといっても過言ではない。


「次は『風哭かぜなきの丘』ですね。オスカーさんは行ったことありますか?」


「いや、ないな。ただ話を聞いたことはある。」


 風哭の丘。一つのダンジョンではなく、数えきれないほどのダンジョンの集合体であるという話だ。一つ一つの難易度は大したものではないものの、問題はその数で無策で突っ込むと容易く迷ってしまうらしい。


「風哭の丘は面白いところよ。詳しいことはついてから話すとするわ」





 風穴の丘に辿り着いた俺達、目の前の地平線まで続く丘には大小様々な穴が空いていた。風の通り道であるそれらの穴に近づくとわずかにその音が聞こえる。


「これ全部、ダンジョンの入り口よ。どれかの穴に入ると対応する穴に出るわ」


「え、マジかよ」


 セレスタの一言にライラットの目尻がわずかに歪む。一面に広がる風穴は100や200で済む数ではない。無闇に突っ込めば自分の位置すら分からなくなってしまうだろう。


「じゃあ、ダンジョンに入らずに歩いて行くのはどうですか? ここの攻略は必須ではないのでしょう?」


「それでもここは超えられるけど、規模が大きいからとてつもない時間がかかるわ。魔物も出てくるし、それを相手にするのを考えるとダンジョンを経由した方が結果的に早く安全に辿り着くはずよ」


 ダンジョン自体は簡単で俺たちでも万が一にも敗北することはないだろうと見積もるセレスタ。蒼月の裏洞と同様にワープゾーンとしての探索になるらしい。


「ほら、あなた達にこれを渡しておくわ」


 セレスタに1枚の紙を渡される俺達。だだっ広い白い紙だ、右下に東西南北を表す方位記号があるあたり地図なのだろうか。


「それはあなた達の現在地とダンジョンの潜入の履歴を示すものよ……そうね、説明するよりも見てもらう方がいいわね」

 

 セレスタはライラット1人に目の前の穴を探索するように命じた。踏破した後は同じ穴を戻ってくるように続けて指示を出す。


 有無を言わずにダンジョンに身を消す彼女。


 地図を見ていたウルフィンが声を上げ、それを聞き俺も紙に目を通す。


 緑の丸に1と記された記号が地図上に現れる。これはライラットがダンジョンに侵入した回数を示すものらしい。


 程なくしてここから離れた地点に再び緑の1と記された記号が現れる。出口の穴に出たという印のようで、この2地点を目の前の穴は繋いでいる。そして別の穴に侵入すれば緑の2……緑の3と潜入した順番が分かるようになっているらしい。


 ライラットが戻ってくる。地図には緑の1の隅に小さい緑の2が並んでいた。俺が赤、ウルフィンは青で同様にマーキングされていくようだ。


「このダンジョン、先生が言っていた通りすごい簡単だった。このギルドに入って1番だな」


 ライラットが報告する。問題はダンジョンの難易度ではないというのは本当らしい。


「それじゃあ、あなた達3人にはダンジョンに入って地図を埋めてもらうわ。それで……そうね、ここの周辺に出る穴を見つけてもらう。私はあなた達の感知と地図埋めをしないといけないから適当な高いところで待機しているわ」


 地図上に少し広い黒い丸が出る。この内側に出たら待機とのこと。そこが目的地ということか……なるほどゴールが青い数字なら同じ色の番号を辿っていけば地点に辿り着くというわけか。


 シンプルだが根気のいる作業だ。時間がどれくらいかかるか分からないがむやみやたらに歩くよりは遥かに楽だ。頑張ろう。

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