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編纂者と行くダンジョン巡り  作者: 鳥バード鶏チキン
出会い
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1 クビ


 依頼をこなす。畑に出た魔物を首を切り、街の外れにある洞穴に屯する野盗を追い払ったり、企業に頼まれた薬草を腰を痛めながら採取する。たまに都に行き、自身の等級を上げてさらに上の難度の依頼をこなす。


 ごく稀に近場のダンジョンに探索して鍛錬がてら珍しい道具や魔石を探しにいったりしたりもする。


 そういう人々を世間は依頼遂行人クエスターと呼ぶ。街中で石を当てたら10人に1人はクエスターと呼ばれるくらいは雑多にいるらしい、真偽は知らない。


 クエスターの等級は1級から10級まであり、階級が上がるにつれて数も減っていく。最近は道具や装備も充実してきたとは言えど殉職率は高い職なのだ。


 俺、オスカーは5級のクエスターである。生活に最低限必要な金を稼いで日々を過ごす。都から離れたこの土地は物価が安く。危険な魔物も少ない、ギルドに来る依頼は10級から高くても6級くらいのものだ。悠々自適に過ごすには適している。


「おい、オスカー。こっちに来い」


 俺が掲示板で仕事を見つけているとギルドマスターに呼ばれた。


「なんだよ」


 機嫌が悪くなるのが自分でも分かる。マスターに個人的に呼び出されるのは基本的に難度の高い依頼を押し付けられるからだ。


「お前に依頼人だ、あとクビな」


 マスターはそう言い残してカウンターの裏に姿を消した。残されたのは先ほどまで会話をしていたのであろう女性だった。


 金髪、碧眼の女性。この田舎の村には不釣り合いなほど装飾の入った衣服を身に纏っていた、今まで生きてきた中で1番の……いや、10本指に入るくらいにはスタイルのいい人だった。


 それより今なんて言った? クビ? このギルドを追放? 状況を受け入れられずにいると女性が話しかけてくる。


「あなた名前は?」


「マス……あのジジイとの話聞いてなかったんですか、オスカーです」


「いや、本名よ」


「捨て子なので、姓はないです。あなたは誰ですか」


 視線を鋭くして女性を見る。人に名前を尋ねるより先に名乗らないから咎めている訳ではない、この人恐ろしく強い。手にしている杖からして魔法使いなんだろうが漏れ出ている魔力量が尋常じゃない、こんな平和な田舎の街に似つかわしくない実力を持っている。


「名乗り遅れたわね、私はセレスタ・フィオーレ。1級クエスターよ。キャラバンを旗上げしようと思ってね。簡単に死なない程度に強い人員を探しているのよ」


1級クエスター、この世界でも一握りの人物しか辿り着けないという話で俺も初めて見た。名を馳せていたうちのマスターでも3級で人類の到達点の等級だと言われている。


「都の方に行けば俺より強い奴らなんでいくらでもいますよ。そちらには行かなかったんですか? 1級の任務なんて同行でも瞬殺ですよ、俺」


「都の方は強い人たちはだいたい企業か個人に直属だったし。それにギルドの方も人材カツカツで引き抜けそうになかったのよ。ここのギルドマスターさんには仲介料としてそれなりのお金は渡したわよ。改装費にするって喜んでいたわ」


 現金な奴め、それで3秒で俺が辞めさせられたわけか。確かに俺がいなくともここは変わらなさそうだし。いや、納得できないけどな。


「それでキャラバンを立ち上げてなにをするつもりなんですか。それによっては俺は別のギルドに行きますが」


「1級というのは窮屈なのよね、数年ぶりに旅に出ようと思ったのよ。いろんな都市や未開の地を巡って、魔法を集めるの。ほら国によって文化や生活様式が異なるでしょ? 私がこもっている間に変わったものも多いじゃない? そういうのを色々見てみたいのよ。……あぁ建前は未開の地の地図作りよ? それなりの理由がないとあの頭の固い協会の連中が納得しないのよね」


 目を子供のように輝かせて話すセレスタ。1級という人の価値観が分からないが、そういう探究者(クエスター)でなければ1級にはなれないということか。


 悪い人ではなさそうだ。


「分かりました、あなたについていきます。俺も所属がないのは困りますから」


「決まりね、ついてきなさい」


 椅子から立ち上がり外に向かうセレスタ。


「マスターとの話でもあなたの力は聞いていたけど、実際に見たらよく分かるでしょ?」







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