黒歴史
遊んでいたわけではないんです
括弧について
「」・・・人物のセリフ
《》・・・心で喋ってる的な人物のセリフ
【】・・・場面切り替えや時間など
「いって...」
痛い...ということは夢ではないのか...?
元々の数倍小さい手で頬をつねってみるが普通に痛かった。
しかも幼少期の頃だからか声も異様に高い。
どういうことだ?
「たいちゃん何してるの?お着替え置いておくね」
そう言ってお袋は朝食の準備をするため、キッチンの方へ行ってしまった。
....さて。整理しよう
少しずつこの頃の記憶を思い出しながら昔、壁に毎年掛けてあったカレンダーの方に行く。
[2011年9月17日]
自分の誕生日から約2ヶ月後ほどで西暦が2011年、つまり3歳とちょっとか
ということは幼稚園最年少...
幼稚園の頃の記憶が水から浮き出る空気のように吹き出てくる。
.....まぁひらがなもわからないガキとスーパーアルティメット限界社会人だし
こっちが何千億倍も有利だな。
知的な面では...
まあいい、これらの情報から察するに、俺は何らかの原因によって過去にタイムスリップしてしまったらしい。
これを幸運ととるか悪運ととるかだな...
脳内に流れ込んでくる数々の残業勤務、うっざい上司の愚痴、etc...
それに対し子供は何も考えず遊んで、食って、寝て、また遊ぶ...
幼稚園ではただ幼児と親しみ、遊び、お昼寝。
待てよ?子供最高か!?
行くしかねぇ、このビッグウェーブ!!!
おお!懐かしい建物!!懐かしい顔!!
すぐに朝食を食べ終え、テキトウな服に着替えて俺とお袋は母校の幼稚園の正門に来た。
見たことあるけど、昔すぎて誰が誰だかすらわかんねぇ...
二十何年前だ?ここに来るのは
《へー、キレーじゃん》
!?!?
いきなり脳内に何者かの声が弾丸の如く飛び込んできた。
俺の動揺を気にせず男か女か区別がつかない微かに高い声色で何者かは続けた。
《どうだい?懐かしい幼稚園時代は?》
動揺を抑えて俺は何者かに問いかける。
《...いきなり誰なんだ?お前は。もしや神とでも言うのか?》
いや、こんな不可思議なことが起こっているんだ、そんなことも全然ありえる。
《質問には答えてほしかったな...まあいいや、君の想像通りの神さまさ。名前はヒ・ミ・ツ♡》
《昨日?か今日お賽銭入れてくれたでしょ!?その恩返しかな》
《あそこ元旦だってのに全然参拝客来ないし...来たの君とその前にいた親子ぐらいだったんだよ?》
《ほんとに人間たちはひどいよね〜》
......なんで俺は得体のしれない奴の愚痴に付き合っているのだろうか。
既視感を覚えた。
上司と飲みに行く際も、やれ課長だの部長だのアイツがうぜぇとか上の者に対して下の者が愚痴を聞くのは世界共通なのだろうか。
《で?お前が俺をこんな風にしてこんな昔に連れてきたのか?》
《仮にそうだとしたらお前は俺に何をしたいんだ?》
教室に付き、温泉にあるような台座型の椅子に座り、ずっと思っていたことを神に投げかける。
《おお、やっと聞いてくれたね》
待ってましたと言わんばかりに、少し間を置いて神は語り始めた。
《そう、今回のボクの実験はズバリ!人間をタイムスリップさせて過去を改変してみた!》
《you○ubeでやったら1000万再生は夢じゃないね☆》
「はっ!?」
《つまり俺は実験体ってことかよ!?》
飛び起きた勢いで小さい台座のような椅子を後ろに思い切り倒した。
........
気がつくと周りは静寂に包まれ、一人だけ立っている自分だけが暗い夜空に光る一つの月のように浮いていた。
つい口に出してしまった...!
幼児に似合わない太い声色と突如放たれた鋭い言葉に絵本を読んでいるクラスメイトだけでなく、先生までも目を見開いていた。
....ッス-
後悔がまた一つできてしまった。
《浮いちゃったねぇ^^》
神がすかさず恥じる俺をイジる。
《うるせぇ、追い打ちかけんな、神。できるんなら今このクソ恥ずい状況どうにかしてくれ》
すかさず怒りの矛先を神に向ける。
《わーヒドイ、怒られたからって怒りの矛先をボクに向けるなんて;;》
《も〜、仕方ないなぁ〜》
《初回限定だからね》
神が言い終わった途端、青い空が眼に映った。
既視感のある光景。
それは先程正門から見た景色だった。
まさか本当に?
《...おい》
...返事がない
《おい!》
《えっ!?》
神が驚いた声を上げる。
声が裏返って変な風になっている。
《...そうだよ。お前しかいないじゃん》
《どうしたんだよ、お前?見たことないものに出会ったような驚いた声を出して》
《え?ええっ?》
《なんで分かるの?どうゆうこと!?》
《声漏れてたの!?》
《何言っているんだよ、お前》
本当に初めて会った人の時の話し方になっている。
例えるならば出張先のお偉いさんとかがいい例だ。
《んーあと、お前お前言うな!!!私にはレスタっていうれっきとした名前があるんじゃ!!》
情緒の激しい奴...
《どうゆうこと?君には声が漏れていないはずで私の存在を認識することさえできないはずなのに》
なんとなくわかってきた
名前ヒ・ミ・ツ♡とか、可愛い子ぶって言ってたくせに一瞬で自身の名前吐いたからコイツ多分記憶ねぇな
《...しゃあねぇ、めんどくせぇけど説明するか。かm...レスタ、お前は俺に―――》
【説明中】
《ほほう、なるほど。そうゆうことね〜》
姿は見えないが納得してハンドサインをしている様子が想像できる。
《じゃあ話の続き。ボクは人の後悔を一日ごとに過去に戻って改変させ、その人の未来がどうなるかの実験をしたいんだ。》
《いやーありがとね〜大樹くん》
《知らん、断る、帰る》
《ありがとね〜じゃあ幼稚園時代楽しんで〜!!》
《.....なんでよ!!》
《え!?今の流れ引き受けてくれるやつじゃん!!》
《なんでだよ!?おかしいだろ!!人の黒歴史掘り出して楽しいか!?》
バカかコイツは!?
反射的に言い返す。
《仕事しなくていいらしいけどこれ終わったらいつもの仕事だろ!?》
《仕事という地獄と黒歴史という地獄でキング・オブ・ヘルなんだが!?》
《知らんし!!君は過去を変えられる権限があって、私は実験ができる、めっちゃ win win じゃん!!》
《win win じゃねぇ!!!》
《はーもういいよ!神様のお告げをやろう》
《後悔に打ち勝て!若きショタよ!!》
《さらば!!明後日また会おう!!》
《おい待てっ!》
....反応がなくなった。
周りを見渡せば身長100cm程しかない幼児に先生。
そして肝心の自分は身長90cmほどのクソガキ。
......さて、どうしようか
小学生にも満たないガキを演じるなんて今日以外、人生で一度もないだろう
なぜかこの小説だけ表現が上手くなるんですよ。
なんでだろうね。