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古今改変集  作者: 鳥羽 しんじ
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転機

思いつきで書いたから不定期投稿っすね。

...毎日毎日仕事仕事

変わらない毎日

これが今の俺の普通...

社会人9年目にして当たり前のようなことを唐突に思い出した。

これが東京で働くということ


「あ゛ぁ〜...昔に戻りてぇ...」


俺、藤田ふじた 大樹たいきは仕事終わりの一杯(500ml)を飲みながらソファで感慨深く呟いた。

22の時に大学を卒業し早9年。ろくな就職先も見つからずにテキトウな会社でテキトウな社会人生活を送っている。

奴隷のように働かされる毎日、ああ、本当に昔はよかったな



......


...いや、そうでもないかもな...

思い出してみれば変えたいことは山程あった。

あんとき...例えばペットが死んだときとか、修学旅行とか受験とか...よく考えてみれば事前に対処できたこ


となんかいくらでもある。

これを世では”後悔”と言うんだろうな

少なくなった酒をテキトウに手先で回す。


.....

嫌な事思い出しちまった...

後悔も一緒に飲み流すように酒を一気に口に放り流す。

...ッチ

後悔だけが喉に詰まって落ちない。

それほど俺にとって心残りなのだろう。


「あ゛ぁー...」


金少ねぇし、残業あるし、女には逃げられるし、人生って所詮こんなもんなのか?

そう、もっと金があればこんな安酒なんて飲まねぇのに...

そう思いながら、また一本、500mlの酒缶を開ける。


プシュゥーという高い音が暗い部屋に響き渡った。

あ゛ーいつからこんな人生になっちまったんだよ...


だらんとソファに体を任せる。深夜番組の音は聞こえない。

あの頃はよかった、あの日に戻りたい、そんな事を最近つくづく思う。

誰もが一度は願ったことがある事を呟く。


「人生やりなおしてぇなぁ。」







『ピピピピッピピピピッ』


「んんーぁ?」

鳴り響くアラームの音に目が覚めた。

いつの間にかソファで寝ていたようだ。


ぼやけながら机のスマホを手に取る。

ピッタリ1月1日の午前8時を示している。

.....

まぁ叶う訳ねぇわな

夢物語、ましてや漫画でもねぇし


「イテテ...」


昨日の残業が効いたのだろう、腰が痛ぇ

だが幸い今日は元日、休日だ。そして初詣。こんな俺が唯一毎年行っている行事だ。

神なんて信じちゃいねぇ、けど希望は捨てずに生きてきた。まぁこういうのは気持ちだ気持ち。


タンスを開け、一番前にあったテキトウな服をテキトウに取り出し着替える。

そしていつも通り冷凍食品を電子レンジに放り込み昨日の残りの米や箸をテーブルに準備する。

変わらない食事、これも”平凡”なのだろう


さっさと飯を口に放り込んで靴を履く。

久しぶりだな、休日に出かけるのなんて

...そういえばおふくろにも長年顔出してねぇな

静岡から上京して以来一度も実家に帰っていないことに今更気づく。


『ガチャ』


「うう...サム...」

扉を開けた途端冷たい風が頬を殴る。

まだ冬だからだろう、太陽があまり昇っておらず、肌寒い。


なぜだっけな。学校でやった気はする。でも思い出せない。

...所詮学校でやったことなど今となっては必要ない、無駄、だったな...学生時代、親に言われるがまま勉強していた自分を思い出す。


ろくにダチの一人や二人作りもせず勉強にほとんどの時間を費やしていた、あの頃を。

無意識の内にタバコに火をつけ、道を歩いていた。歩きタバコはダメ、喫煙所でやろうなんて呼びかけも学校

でやったっけな。


吸い終わった吸い殻をテキトウな道の箸に投げ捨てる。ポイ捨てダメなんて作文とかも書いたっけな。

そんなことを考えている内に家の近くのオンボロ神社へとたどり着いた。

本殿はちっぽけだが鳥居は京都のどっかにある神社ぐらい、立派である。


テキトウに本殿までの道を歩いて行く。

ほんの少しだけだが参拝しに来ている家族連れがいた。

いいよなーまだ希望のある子供君たちは。


いつも通りちっぽけな賽銭箱が置いてあるちっぽけな本殿へ着いた。

財布からテキトウに小銭を取り出し放り入れる。

あー神社って手を叩くんだっけ?


参拝歴9年にしてもそんなことすら覚えていなかった。

まぁいいか

テキトウに手を叩いて目をつむる。


........


よし


帰るか

吐いた白い息が宙を昇っていった。


家に帰り、すぐに昨日飲んだ後の酒の空き缶や吸い殻を片付ける。

明日も明後日も会社は休み。

暇すぎんだろ...

元旦がこんなにも暇になるなんて幼少期には考えられなかっただろう。


実家に帰省するにしても車も持ってねぇし、電車賃はたけぇ

めんどくせぇ...

そう思いながらソファに全身を投げ出す。

会社終わりのサラリーマンだったらこんな固いソファではなく、ベットにボンするんだろうなぁ

貴重な休日だがそんなことお構いなしに意識が薄くなっていく。







ん...寝てたか...?

明るすぎて眩しい朝日に自然と目が覚めた。

朝...結局一日無駄にしちまったか...

...まぁ特になんも予定ねぇからいいんだけどな

もう一度ベッドに身を委ねる。


「あ、たいちゃん起きた〜?」


...ん?

聞き覚えのある声が聞こえた。

それになんか...


...!

目の前の光景に目を見張った。


「たいちゃんもう8時だよ!早くご飯食べて、幼稚園に遅れちゃうよ?」


そこには若き頃の母がいた。





なんだ。




夢か。

この出来事のせいで俺の31年が水の泡になった。

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