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厄日 中編

 教師が「バーベリさんの席は最後列の…間宮くんの隣ね。2人しかいない列だけど、何か困ったことがあったら、間宮くんを頼って下さい」と言っているのが聞こえたが、無視だ無視。

 いや、無視できんな。冷静に考えて、あの転校生女が俺に助けられたことを周りに言いふらせば俺の陰キャ生活は終焉を迎えるだろう。それも今より悪い方向に。

 きっと「痴漢から助けてもらった」という話が「間宮くんに痴漢された」という話に羽生結弦も驚きのレベルで白井グエン決めるんだ。そうに違いない(根拠のない確信

 そうでなくても、なにか早急に手を打たなくては。

 幸いにも、今日の四限までの間にペアワークだのグループワークだのと言ったものはなかったので、痴漢被害者女と話す必要はなかった。

 休み時間に入る度に、速攻で寝たふりをし、転校生女が横でクラスの奴らから話しかけられているのを聞いていた。

 耳を澄まして、聴いた限りでは彼女の名はミラナ・バーベリ。ロシアと日本のハーフで、ロシアの中学卒業時期と日本の入学時期のズレのせいで特例として、この時期に入学したらしい。ウチの学校自称進学校の私立だからね。ある程度融通も効くんだろう。

 好きな食べ物はビーフストロガノフで、私服で学校に来てるのはまだ制服が届いてないらしい。引っ越してきたのが最近なんだと。ちなみに彼女に1番話しかけていたのは七海愛莉で、1番仲良くなっていたのも七海愛莉である。流石一軍陽キャJK(金髪ギャル)。ちなみにクラスの誰かの情報によると金と銀のコントラストが美しくて綺麗らしい。俺は見てないから知らんけど。

 謎は解けた。が、事態はなにも好転していない。


 ほんと、どうしよう。と、思いながらやってきた昼休み。


 俺は七海愛莉と、痴漢被害者ロシアと日本のハーフJKと共に3人で屋上にいた。


 経緯は簡単で、七海愛莉が、ミラナ・バーベリに対して、

「一緒にご飯食べよー!」

と誘い、被害者側了承。

 そしてなぜか、

「そういえば間宮はミラナの世話先生に頼まれてたよねー。じゃ、一緒に行こー!」

と拉致されたのである。

 俺に拒否は不可能なので、金銀の美少女と一緒に飯を食べれることに男子どもの嫉妬の視線を受けながら屋上まで連れてこられたという次第である。代わってくれ、切実に。

 俺、陰キャ続けれんのかな。これだけ目立ってしまえばおしまいでは?

 

 まあとりあえずそれは後で考えるとして、問題は目の前にも転がっているのだ。

「それで、なな」


「愛莉」


「…愛莉は、なんで俺を連れてきたの?」


 七海と呼ぼうとすると途端に遮られ、名前で呼ぶことを要請された。逆らうことはできないので、仕方なく名前で呼ぶと満面の笑みを浮かべた。…悔しいが、可愛い。

 ちなみに口調はもう一旦普通に戻した。電車で普通に喋ってしまったので、今更変えてももう意味がないからだ。教室に戻ったらまた元の口調に戻す。


「この子、ミラナが、蒼となんとかして話したいって言うから」


 と、その時、そのミラナ嬢が遮るように話し出した。


「あの、その、私。日本に来て、朝の電車がこんなに混むなんて知らなくて、だから、その男の人に触られた時も、なにがおこってるか理解できなくて、わかってからも、、パニックになって、声なんて出なくて、だから、朝、助けてもらって、ほんとに安心して、でも、お礼もいえなくて、言いたいと思ってました、朝からずっと。だから、ありがとうございました」


 目を少し潤ませながら上目遣いにこちらを見上げる彼女の姿は、美少女であることも合わさって、もはや質量をもってるんじゃないかと思うくらいの衝撃を俺に与えた。


「い、いやいや当然のことをしただけだし、そんな、バーベリさんが気にするようなことじゃないよ」

 なんか、ものすごく嫌な予感がする。早く話を切り上げて席に戻りたい。


「いいえ、あなたは、あなたが思う以上に、私を救ってくれました。私はあなたに感謝し続けます、ずっと」


「そ、それで、その、あの、私のことも愛莉ちゃんみたいに、ミラナって、呼んでもらえませんか」


 上目遣いでのそのお願いに、俺に頷く以外出来なかった。


「呼んでください」


「…み、ミラナ」


 えへへ、と笑う彼女の顔は、魔性の魅力を持っていて、それだけで全てを許せるような、そんな気すらした。


 笑顔で「これからも仲良くしてください、蒼くん」と言われまたもや俺に頷く以外の選択肢はなかった。


 …今日は本当に厄日である。


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