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2人きりの屋上

 朝食にミラノ風ドリア(冷凍)を食べて学校に行くと何やら俺に視線が集まっている気がする。なぜだ?いつも俺の周りは静かで平穏を保っているのに。誰かに聞くこともできないので、スマホをいじるふりをしながら視線を寄越してくるクラスメイト諸君の会話に耳をすましていると、どうやら俺が七海愛莉に告白したと噂になっているらしい。


 どうしたことかと思い耳を傾けようとすると、いきなり周りの話し声が掻き消えた。

 俺に集まっていた視線が、ドアの方に吸い寄せられる。釣られて俺も視線の先を追うと、元凶がいた。

 七海愛莉が、友人と共に教室に足を踏み入れたのだ。


 あ、目が合った。あ、逸らされた。心なしか、顔も赤くなってる気がする。…あれ、俺なんかしたっけ?お前みたいな陰キャとの間に噂が立つとか最悪、コッチ見んな!とか?そうかそうか、つまり君はそういうやつだったんだな。


 彼女が歩くと、モーセか何かかと言いたくなるくらいに道が開く。そしてそのままスマホをいじり始めてしまった。何人かが俺のことについて話しかけているらしく、時々俺の名前が聞こえてくる。そんなことを無視してスマホをいじる。うわー、日経平均また落ちたよー。


 俺の方に話しかけようとする人はいないのかって?今んとここのクラスにLINE交換した相手が1人しかいないんだぞ、話しかけてくる奴なんて0に決まってるだろ。


 そうして乗り越えた4限まで。昼休みになり、どこで弁当を食べようか迷っていると、スマホにLINEが来た。相手は…七海愛莉。内容は昼予定ある?ないなら一緒に食べない?ということらしい。もし食べれるなら、屋上に来て!だそうです。ご丁寧にスタンプ付きで。みれば、七海愛莉が友人たちに今日昼一人で食べるからと断っている。


 既読をつけてしまった以上陽キャJKの誘いを断ることなんてできないので、OKですとだけさっさと返して弁当を持って屋上移動する。屋上って鍵かかってるよね。入れなくね。


 間も無くして奴が来た。


「ごめんねー。遅くなって。待ってない?」


「だだだだ大丈夫です!そそそれより屋上って鍵かかってますよね?はは入れるんですか?」


「ん、だいじょぶだいじょぶ。先生に言えば屋上の鍵借りれるんだよ。それでちょっと遅れちゃった」


 えへへと笑う七海愛莉の顔は、悔しいが可愛かった。ちくしょう、この美少女め。

 そして、七海がかちゃかちゃと鍵を開け、屋上に出る。

 屋上は、網が張られている以外特になにもなく、景色がいい以外には、床が汚いくらいしかなかった。


「何もないでしょ?安全管理のために鍵かけてからは先生たちもあんまり入んないんだって。だから、床も掃除されてないらしいよ。レジャーシート持ってきたから一緒に座ろ」


 狭いレジャーシートに2人なんて、僕は床で十分ですと断ったが、陽キャJKには勝てずに2人でレジャーシートに座ることになってしまった。まあ一旦置いておこう。それよりも


「で、さっそくなんだけど…ごめん!私のせいで、変なウワサ広まってるみたいで。昨日放課後一緒にいたところ見た人が広めたらしくて、歪んで伝わっちゃったらしくて。間宮が振られたみたいに。」


 ほーん、そういうことだったのか。まあでもこの件に七海の責任はないだろう。それなのに一言目で謝れるって、この女やっぱいい性格してるな。さす陽。


「ぜ、全然気にしなくていいよ。七海さんは何も悪いことしてない訳だし、そういうふうに噂されるのも、元はと言えばボクのせいだし」


「でも、私が悪いのは事実だから。間宮が注目されるの嫌だって思ってるの分かってるのに、結局今私のせいで注目されちゃってるし」


「ま、まあボクにも原因があるからおあいこだよ」

 さっさと話終わらせて帰りてえな。ほんとに。これ以上ここにいると今以上の面倒に巻き込まれる予感がする。


「そう言ってもらえると嬉しいよ。…優しいんだね、間宮は。そうだ、間宮のこと、(ソウ)って呼んでいい?私のことも愛莉でいいよ!」


 …すぅー。断りテェーー!!心底断りたい。…が、しかし、ここでカーストトップのJKの言葉を否定するということは、本当に学校生活の終わりを意味する。断れねえよなあ。


 精一杯の抵抗として、そそ、そんな、ボクナンカが恐れ多いと言ってみたが、いいからいいからで流されてしまった。


 しかもなぜか5回愛莉と名前を呼ばされた。解せぬ。



-----

「私のこと可愛いって言ってくれた!んーーーー!んー!」


「私に告白?これを口実に食事に誘えるじゃん!」


「あいり…。あいりって呼んでくれた…。ンフフ、5回も!…ソウ、ソウ…ンフフ」

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