おわりのはじまり
人にはそれぞれ、属性とかキャラクター性とか呼ばれるものがある。それはマイナスに捉えられたり、プラスに捉えられたり、人によっては下らないと一蹴するようなものだ。しかし、俺にとってはとても重要だ。
その中に、陰キャと呼ばれるくくりがある。蔑称として使われることも多く、精一杯やわらかく言っても、あー、あの子?大人しいよねーとか。そんな風に言われてしまうようなそう言う陰キャに、俺はなる!!
と、決めたのが高校入学当初。それから3ヶ月が経った夏休み明け。俺は高校生活始まって初めて、クラス内での陰キャの地位存続の窮地に立たされている。目の前で俺に詰め寄ってくる金髪ギャル、七海愛莉のせいで。
高校生活が始まってから最初の方は、周りから話しかけられることもあったが、全てに対してどもりながら答えて、ノリの悪さを見せつけていたら、目立たない陰キャの内の1人になった。1日の間に話すことはほとんどなく、周りと話すのは体育かわからないことを聞くときだけ。それもなるべく先生で済ませる。勉強会には誘われず、帰宅はクラスで1番早い。高校デビューでボサボサにした髪と、丸縁眼鏡も良かったかもしれない。
そんなこんなで一学期は目立たず過ごし、夏休みの予定も学校のものは0。今後もこの生活が続くのだろうと希望に胸を膨らませていたら、この女だ。
2学期が始まってすぐにこの女から視線を感じ始めた。そして2学期が始まって2週間ほど経った今日、この女に呼び出されたと言う訳だ。手紙で。
この女、七海愛莉はいわゆる一軍女子である。髪を金髪に染めたギャルで、いつも俺とは対極に位置する陽キャとしてクラスカーストの頂点に君臨している。スタイルも良く、学年で1、2を争うほどの容姿とその距離感の近さから、すでに振った男は両手の指で数えきれないとか。成績も良く運動もできる。唯一の欠点は部活に入ってないことらしい。それ欠点か?しかも読モもやってるらしい。属性盛りすぎだろ。
当然、そんな女からの呼び出しを陰キャの俺が、断れるはずもなく、放課後の空き教室で今に至る訳である。
そして、彼女の要件というのは
「間宮、LINE教えてくんない?」
ということらしい。
「ななななんで七海さんがボボボボクナンカノラインを?」
「あんた1人だけクラスLINE入ってないでしょ。だから」
気遣いできるいい女ですねぇえ!!そういうのなんていうか知ってるか?余計なお世話っていうんだよぉおお!俺からのこの女の評価がマイナス100だわマジ。
「あんた普段あんま喋んないし、クラスで話しかけたら嫌がるかと思って」
ほーん気遣いできるいい女じゃん。評価プラス1してやろう。
「あああありがとう。ボ、ボクナンカニ気を遣ってくれて」
まあどんなに交換するのが嫌でも交換するしかないんだけどね。陰キャの俺は逆らえない。
どうやら要件はそれだけだったらしく、そこでお開きになった。その後、一緒に帰る流れになりそうだったのでダッシュでカバン持って逃げて回避した。今日は最悪やったな、家帰って配信して早めに寝よ。
-----
「間宮のLINE…ンフフ」