年上の婚約者と釣り合わないので、6年後の僕を召喚したら奪われた件
「兄上はバカだった。本当に廃嫡されるなんて・・・こんなにも美しい義姉さんを捨てるなんて」
元兄は、卒業パーティーで男爵令嬢と結婚するために、王妃教育が完璧だった義姉上を捨てようとして失敗した。国王の決めた婚約を勝手に破棄できると思ったのが運の尽きだった。その後、兄は王族では無くなってしまった。いわゆる廃嫡だった。
こうして第2王子の僕の王位継承権の順位が上がったのだった。上がることに不満は無かったけれど僕のような小さい男に義姉さんと釣り合わないと思ったが王命なら仕方がない。
何も知らない人が見れば、兄の婚約者を奪ったとも言えなくもない。しかし政略結婚は大事なことだ、後ろ盾の無い王は安定性にかけてしまうだろう。
釣り合わない僕は、義姉さんに相応しい男になりたかった。いやなってみせたかった。僕の初恋の人、義姉さんと結婚したかった。あの時からずっと。
「やっぱり、兄の婚約者お披露目パーティは気合入っているな。装飾も派手すぎず、
地味すぎず、良い感じだな」
「王子、そろそろ主役の登場ですので、お静かに」
「第1王子と婚約者ご入場」
「・・・なっ」
僕は、義姉さんのあまりの美しさに言葉を失った。儚げな少女が兄の隣に立っていた。当時10歳の僕は12歳の義姉さんが輝いて見えていた。
―――義姉さんきれいだったな。でもこの気持ちは伝えちゃダメなんだ。僕はこの気持ちを抑え続けないといけないな。勉強しよう。僕には得意な魔法しかないんだから。この思いを忘れるために今日も打ちまくろう。
どん。
どばばばば。
どかーーーーーん。
「あっ。裏の山が少し消えちゃった。もう少し、威力の調節をした方がいいな」
「殿下はすごいですね。第1魔法師団長が10人居てもかないませんよ。ははは」
「少し荒れちゃったね。片付けようか」
「なんですか?その魔法は?がれきが消えましたよ。まさかそのお年で収納魔法ですか?末が恐ろしいですな」
「おっと、こんな時間だ。部屋に戻るよ。空間魔法」
「なっ?消えた。まさか空間魔法まで」
―――この3年で魔法もかなり極めたな。でも、第1魔法師団長がかなり青ざめていたけど、僕はまだまだ極めたいと思っている。義姉さんへの気持ちは、もうかなり落ち着いていた。僕は吹っ切ったんだ初恋を。
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だがそんな中、事件は事件は起こった。王立学院中等部卒業式で兄がやらかしたのだった。
「俺はアリサと婚約破棄をする。アリサは、この男爵令嬢にひどいことをしすぎた。」
「・・・」
「空間魔法が便利過ぎだった。間に合いました。兄上何をされているんですか?アリサ義姉さんが青ざめてますし。何かひどいことでもなさったんですか?」
「ふん。おまえか。卒業生でもないお前がパーティ会場に何のようだ?それに空間魔法とはずいぶん魔法ばかりやっていたのだな。だから魔法王子とか言われているんだ。この女の処遇なら、退学にさせるつもりだ。それにもう俺の婚約者ではない」
「兄上、アリサ義姉さんをこの女って、言葉を気をつけた方が良いですよ。それに婚約破棄したら王位継承権が無くなるどころの騒ぎではなくなりますよ。良いんですか?」
「はあ?何言っているんだ。第1王子が王になるに決まっているだろ」
「兄上、考え直しませんか?」
「何を考え直す必要があるのか?この女をかばうなら、弟とて容赦せぬぞ」
――――兄上もしかして分かっていないのか。この婚約の意味とか、アリサ義姉さんの実家の後ろ盾が必要だとか。でも少しおかしい。いくら兄上でも考えがなさすぎる。もしかして魅了魔法か?
少し聞いてみるか?
「兄上、何か体調がすぐれないとかありませんか?」
「なんだと、俺は絶好調だ。マリンが付いてくれているんだ」
「そうですよ。弟君も素直になりましょうねぇ。大丈夫だよぉ。すぐに素直になれるからねぇ。隠しキャラの弟君」
――――マリンさんの目が赤い。魅了魔法か?レジストしないと。兄上の魔法を解呪するのは、面倒だしもういいや。
「兄上、陛下にバレる前に。」
「もう遅いぞ。3人とも静まるがいい。」
――――あっ。父上が来られてしまった。これはもう助けられないな。でも少しでも罪を軽くして借りでも作るか。
「父上、これは演技なんですよ。ちょっとしたパーティーの余興ですよ。ねえ兄上?」
「はあ?何言ってるんだ。俺は婚約破棄をするんだ。そして、男爵令嬢のマリンと結婚する。アリサなんてもう必要ない。」
「黙れ愚か者がーーーー。第1王子を廃嫡とし、第2王子を後継者とする。後の連絡を待つがいい。他の者はパーティーを続けるがよい。邪魔者をつまみ出せ」
「えーーーーー。王子が廃嫡ってハッピーエンドじゃなかったのぉ?うそーーーーー。ゲームの流れと違うじゃん。」
――――兄さんとマリンがつまみ出されていく。あっ騎士が魅了された。レジスト。これで邪魔者は居なくなったな。でもこれで、義姉さんの婚約者は居なくなってしまったな。もしかして、僕にもチャンスが来るのかな。
兄の廃嫡は王都中に広まった。止めなかった取り巻きの者たちも軒並み実家に帰された。
周りは、誰も魅了魔法に気づかなかった。それとも操られていたのか。いや、あえて黙殺したのかもしれない。こうして、第2王子の僕が王位にかなり近づいてしまった。
「まて、俺が廃嫡はおかしい。それに塔に幽閉とか、第1王子の俺がなんであんな塔にずっといないといけないんだ。弟よ。助けてくれ。俺は悪くない。悪くないんだ」
「兄さん、もうダメなんだよ。僕じゃ助けられない。せめて魔法は解かないから、マリンさんへの恋は忘れずに生きてください」
――――魅了魔法を解いてあげたら、義姉さんへの愛が戻るかもしれないけど、手遅れだしもういいや。このまま魅了されたまま男爵令嬢のことを思い続けた方が、本人は幸せかもしれないし。あえて絶望に落とすこともないか。兄を救わなかった僕を義姉さんは許してくれるのだろうか。いや、言わないけどね。
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そして僕の生活は一変した。
「第1王子、本日のご予定はこちらです。」
「第1王子、夕食後の打ち合わせについてですが・・・」
「第1王子、婚約者との面会についてですが・・・」
僕の敬称が変わったり教育も若干厳しくなった。婚約者は予想通り義姉さんだった。
――――義姉さんは、美しすぎるけど、僕が頼りないのがつらい。僕も男らしくならないといけないな。でも本当に義姉さんは僕で良かったのだろうか。最近なんかよそよそしいし。なんで他の男性特に年上の男性にそんな笑顔をするんだろう。もしかして、義姉さんは年上好きかもしれない。僕を見る時より、王弟の叔父さんを見る時の方が、頬が赤い。やっぱり僕じゃ釣り合わないのかもな。
「なんで、僕は年下なんだろうか?」
――――僕は独り言を言いながら絶望していた。そういえば、時空魔法使えるようになったんだった。それなら、年上の僕を連れてきて、アドバイスを求めればいいじゃないか。そのアドバイスを活かして義姉さんを振り向かせてみせる。絶対に義姉さんと釣り合う男になってやる。
僕は現在16歳、義姉さんは現在18歳だった。義姉さんが年上好きなことから、22歳の僕を連れてきてアドバイスを貰おう。
「時空魔法には魔法陣がちょっと大きめに書かないとな。」
ぼわーーーーん。
「やっと呼び出されたか。懐かしいな。この場所も。召喚ありがとう小さな俺よ。待っていたよこの時を」
「忙しい中、来てくれてありがとう僕。ところで公務とか大丈夫なの?」
「あぁそれなら大丈夫。だって俺は、とっくの昔に廃嫡されたから」
「えっ?廃嫡ってどういうこと。義姉さんとの結婚は大丈夫なの?」
「なに。そのうち分かるさ。催眠魔法」
「えっ。あっなんで。」
年上の僕が、いきなり催眠魔法をかけてきた。レジストが間に合わない。吐き捨てるように大きな僕が語り掛けてきた。
「大丈夫、俺もつらかったさ。自分とは言え、大好きな人を盗られるんだから。でもつらかった6年間ももう終わりだ。義姉さんの事は、任せて俺は眠っておけ。目が覚めたら義姉さんは居ないし。廃嫡はされている。あとは召喚さえ待っていればいいんだ。」
「あ・・・う・・・」
「そういえば、俺も昔は抵抗していたな。アドバイスをすると抵抗すれば、記憶は残るし辛いだけだ。諦めろ6年の実力差は大きいから。」
その言葉には、自分ゆえの重さがあった。だが僕はなんで、時空魔法なんか使ったんだ。後悔していた。
「さてこれも伝えておこうか。実はね。義姉さんって年上好きじゃないんだよ。俺に微笑まなかったのは、年下好きで笑顔が止まらないから、そっけない態度取っていたんだよ。まあこれは俺に聞かされた話だけどな。だから俺は、自分を若返らせる。身体変化魔法」
ぼわん。
そこには、僕より13歳ぐらいの僕が居た。
「なに、今から6年ぐらいあっという間だよ。それに君は、召喚されてからゆっくり楽しめば良い。大丈夫すぐに慣れるさ」
そういって、彼は僕の部屋を出ていった。
遠くから義姉さんの声がする。もう僕が隣で聞けなくなってしまった。もう言葉を交わすことのできないそんな声が・・・
「僕は本当にバカだった。兄を救わなかった罰が当たったのかな。義姉さん本当にごめんなさい・・・」
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京安藤しーぷです。
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余談
NTRではないんですが、未来の自分に婚約者を奪われる。
まあ未来で幸せならいいのか。
ハッピーエンドじゃん。(錯乱)
長期休みが終了したので更新は遅くなります。
申し訳ありません。
月4ペースで短編書きたいです。
がんばります。
ありがとうございました。
誤字報告ありがとうございます。