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たそがれ怪奇譚第2部 黄昏篇   作者: 狐鹿コーラ
最終章 後編 黄昏に魅せられし者達
52/53

怪異の世界 参

私は起死回生の一撃を朧月の心臓目掛けて突き刺したと同時にやつは微かに笑ったのだ…




そして…私は予期せぬ胸の痛みに小刀を離し地面に悶えていた…




「ぐ、…うぅ…クソ…クソ!!」


『闇の仙霊術の1つ、“暗刻・丑の刻参り”さ…対象の体に印を刻み自身のダメージをそのまま相手に返す術式だこんな風に』



奴は自ら小刀を抜くとそれを自身の膝へ突き刺した



「ぐぅうう…!!!」



その痛みは私に跳ね返り身動きを封じられてしまった…



奴が対象に印を刻むと言ってたが…あの時カスッた時に既に奴の術中にはまっていたのか…



だが…このままでは終われない



私は地面を這いつくばりながら何とか立ち上がった


足、胸の痛みなんて…零二の背負ってきた痛みに比べれば…なんてことない…



『ほう…まだ立ち上がるか。察するにお主の想い人が心のよりどころと見たが…』


「だったらなんだよ…今は…零二は関係ない…」



やがて奴は耳を疑うようなことを話し始めた



『お主の想い人は死神とヒトクイの死闘の際、死神を庇い死んだぞ。』


「何馬鹿な…零二が死ぬわけない!!あいつは…あいつは!!」



この時は奴が私の心を折る作戦とばかり想い、袖に隠していたナイフを取り出し特攻した



ザクッ!!



朧月は反撃することなく自ら腹を刺されに行った



もちろん……その腹部のダメージはそのまま私に返り焼けるような激痛が腹部に走る…



「必ず帰ると約束したんだ!!!」



無抵抗の朧月の両腕両足を切り込むが…痛みが…そのままかえってくる…



わかっている…わかってはいるんだ!



やがて両腕、両足の感覚が無くなるまで切りつけ…私はナイフを地面に落とすと



『なら見せてやろう…あやつの最期を』


「や、やめろ…」



朧月は人差し指で私の脳天を突くようにそっと指差す…



『後生・死に鏡』




その瞬間私の意識が遠のき…


スクリーンに写されたように元祖ヒトクイと死神、零二が戦っている光景が写し出されていた…



視点は恐らく零二のものだ…



死神が捨て身の技でヒトクイを焼き付くした後、零二がヒトクイの再生器官目掛けて発砲



この時点で死神と零二は勝ったかに思えた…


死神がヒトクイにトドメをさそうと近付いた時…


静かに微笑むヒトクイ……


ヌルッと満面の笑みを浮かべ右手に炎を纒……その手を死神に伸ばす



もうトドメを指すことしか頭に無かった死神は完全に油断し……回避するまもない……





零二は死神を押し退け飛び込み……




ヒトクイが纏う黒い炎に焼かれ……




全身が焼き尽くされ………





ヒトクイが持っていたもう一本の鎌で魂を抜き取られ………




その魂を菓子のように食われた………





後に残されたのは黒炭の朽ち果てた肉体と………僅かに残された数秒の光だけだった………




零二は崩れ行く肉体を僅かに残った力を振り絞り………




死神に小太刀を手渡し



最後に呟いた言葉は…



「………………………狐……月…………」



腕が砂のように崩れていき………



跡形もなく散った…私の名前を最期に…









「あぁああああああああ!!!!!ウソだ!!ウソだ!!ウソだ!!」


「こんなの誰が信じるか!!!!!」



私は零二が死んだことを否定したが、朧月は冷徹な眼差しで



『“後生・死に鏡”これは死の間際に見た物を対象に見せる催眠のようなものだが、今見たものは全て事実だ…』



『信憑性が無いだろうが、元祖ヒトクイ…蟹江が見たものは全て私にも共有されるよう術を施したからな』



『蟹江よ…貴様の働き…見事であった…怪異の世界成就の暁には再び現世で甦らせることを約束しよう。』



次の瞬間、奴は私の使っていた小刀を意図的に握りらせ


自身の喉笛に刃をゆっくり…深く突き刺す…



「がっ!?…あ、あ……あ…」



この時点で私の戦意は完全に削がれた膝から崩れ落ち


奴は私にまたあの話しを持ちかける…



『これでお前は全てを失った……喪失感に苛まれ廃人となるのもよし…』



『それか、私の手をとり…共に怪異の世界を歩まぬか?』



………



………



もう楽になってしまおう…



そんなあきらめの感情が過った時



何処からかともなく切り裂くような突風と共に朧月は苦虫を噛み潰した表情を浮かべ後退した



『……まさか、“かなえさま”が破れたというのか……忌々しい雌狐め…』



そこに現れたのは月影だった…


どうやら“かなえさま”との死闘のすえ脱出し私を危機から救ってくれたとのこと…



「……月影………私は…」



バチンッ!


月影の平手打ちが私の目を覚まさせ…


ゆっくりを私を追い越し…その背中はあまりにも大きく幾つもの修羅場を潜り抜けた剣士としての凄まじい闘志を肌で感じた


「今、あなたが諦めてどうするんですか……失った者はもう戻らない、みんな明日の世の為に戦っているんです。」



「………」



「歴代の神埼の姓を承けて戦った者達はどんなに犠牲がでようと窮地に立たされようと決してあきらめない不屈の精神をもっていた……」



「………」



「立ちなさい……立って明日の為に…」




ザクッ!




「!?」


「え…」



あまりにも突然の出来事であった……


私の背後から何者かが投擲した得物によって月影は背中から得物が腹を突き破った……


その得物は槍……


私はとっさに振り向く間もなく…それは出現した…


『あーあ、まさかストックが減るなんて思いもしなかったよ~』


月影と戦っていたと思われる“かなえさま”だった…


「なぜ………完全に本体の首を飛ばしたはず…」


『うん、確かに死んだよ☆でもね私には叶えた者達から代償となったものを魂に変換して自分の物にできるってわけ♪︎ まぁ、その魂が何個なんてわかんないけどね。』



それは完全後出しの“かなえさま”の恐るべし秘密…


叶えた者の代償を魂に変換しそれを自らの命としてストックできると言うもの…


“かなえさま”は明治時代に誕生したとされる創られた偽神…


そこから換算すれば途方もない数のストックを備えていることとなる…


いくら殺しても…また新しい魂を媒体に復活する…


かなえさまが月影の正面にまわると槍の矛先を握り、そのまま豪快な足払いを月影に浴びせ体が後ろにぶっ飛ぶ勢いで槍は抜かれ


月影は激しい血飛沫と共に大岩に叩きつけられ


『魂1つ消した借りだよ』


満面の笑みで先ほどの槍をどこからともなく複数召還すると


それを月影に向かって投擲する


複数の槍はそれぞれ四肢を捉え貫通し月影は大岩に張り付けにされ


『それじゃ~バイバイ~』



残った槍を月影の心臓目掛けて投げようとした瞬間


私はナイフを拾い上げ残された全ての妖力を使いナイフに乗せた術で瞬間移動し月影の前に立った


「狐月!!!!」


その槍は私の体を貫き…


月影にはその刃が届くことはなかった…


かつての力を失った私だと朧月にもかなえさまにも敵わない…


せめて…ほんの少しの可能性が残されているなら


それは私でなく…長年先祖代々から神埼家…そして…たそがれを守ってきた…


月影を生かすことが私達に残された最後の灯火なのだから…












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