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たそがれ怪奇譚第2部 黄昏篇   作者: 狐鹿コーラ
最終章 中編 月物語
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黄昏怪異譚



私は、『月影』月の一族と呼ばれる古より存在する妖狐の1人……



人間と偽り姿を隠しながら数多の魑魅魍魎を剣で滅してきたが……



ある怪異の侵食により、私は全てを守る為に人であること……これまで積み上げてきた全てを捨てなければならなかった。



結果……私の唯一無二の親友が残した式神の妖狐『遊月』と共に宛のない旅へと出ることとなる……



こうして行き着いた黄昏時が綺麗に見える山に住み着き………




『死ぬならこんな綺麗な景色が見える所で死にたい。』




と思うようになり遊月の幻術を使って麓の村にちょっとした怪異現象を起こした。




結果的にこの怪現象を根絶するべく1人の村の陰陽師が派遣され私を殺すべくこの山へ入ってきたことを察した私は行動を起こした。




遊月に彼を私の元まで案内するように指示を出し……




彼と対面した………第一印象は普通の青年であるが…彼が持つ霊力は月の一族と渡り合えるぐらいに強大なものを持ち…




私を殺すのに充分な実力を備えていた多分『晴月』に匹敵すると感じていたが……




同時に彼の内に潜む……暗闇よりも黒い別の何かが……こちらをジっと見つめていた……




すると彼は真っ直ぐな眼差しを私に向け




ただ私と「話がしたい」と言ってきたのだ……



正直……直ぐにでも殺してもらえると思っていたが、そもそも彼には殺意や敵意なと全くなく無防備に近いことに少し驚いたが……



結局……死ぬ時が少し先延ばしになっただけと思い……望み通り彼と会話することにした……



話しから彼は数日前………私が平安京郊外の死体が大量に放置された山々を一晩で焼失した、あの業火をこの村から目撃したらしく………



それをやったのは私ではないかと聞いてきた為………



彼に



「いかにも、私がやりました………これで私が凶悪な怪異で退治しなければならない存在であるとわかったでしょ?」



だが彼の眼差しは私の心を見透かしたように平安京で起きた『疱瘡』すなわち『腐食・侵食の怪異』と何か関係があって山を燃やしたのではないかと話し……



その言葉で私が失ったものが次々と閃光の如く脳を駆け巡った直後…



私は怪異さえ斬れない刀を鞘から抜き…ボロボロに刃がこぼれた悲しき刃を彼に向けていた。



もう私の心は限界だった………



私は自分でも嘔吐が出るぐらい罵詈雑言を彼にぶつけ………



彼の退路を炎で塞ぎ……これ以上ないぐらい舞台は整ったが…



彼は表情1つ変えることなく私の元へ歩みより……



一歩一歩近いていく度に私の刀を持つ手が震え……無意識に繰り出した無造作の一撃すら彼を殺めることを拒み真横を通り過ぎていった……



やがて、彼との距離が目と鼻の先まで縮まり…



彼の術で私は呪いから解放去れたように体から力が抜け……



手から刀は抜け落ち…砕け…



気付けば私は彼の胸の中で泣いていた。




そして彼は、『神埼 狼月』と名乗り



「私と共に人々を守る為に歩んでいきませんか。」



私は泣きながらも笑顔でこう答えた



ーーこんな、人にも怪異にもなれなかった私で良ければ……



ーー私は『月影』あなたの刀となる存在の名です。





あの日見た………この山から眺めた黄昏時はこの世の何よりも美しい光景だったことを今でも昨日のように思い出す………







こうして、私と遊月は彼の元で式神として御使いする身となり……




数日後……彼から私の新たな刀が贈られた




白い鞘に納められたその刀の名は…………神刀虚月しんとうこげつ



砕けた元の刀の破片と濃い霊力を含んだ東北の地でしか採れない鉱石と降霊術により守護霊を宿らせ狼月自身が製作したという………






彼は私にそれを手渡すと最後の仕上げとして、血の契約を結ぶ必要があった



所有者意外に刀を使われないようにするための防止策とのこと



具体的に私以外の者が刀を使うと刀から瞬間的な高圧の霊力が流れ、手から弾け飛ぶらしい………



狼月からその手順を聞き………それに必要な小刀を手渡され実行に移した。




まず、両手の平を小刀で軽く傷を付け……血が地に落ちる前にその手で刀を鞘から抜く……



すると刀が私の血を吸収し……刀が完全に鞘から抜けた時には私の両手に付けた傷をは塞がり



満月の月光のよいに美しい刃が現となった



狼月はその光景を見ながら



「もし未来でこの地に起きた伝説を知りたいという者が現れるのなら証拠として見せるが良い。」



と微笑みながらそう話すが……まさか、その日が未来で来るとは想像もしていなかった。




狼月には芙蓉ふようという妻が居り、彼女のお腹の中には狼月と彼女の子供を身籠っており



既に臨月を向かえお腹もかなり目立ち、いつ産まれてもおかしくはなかった……



そして、その時は突然訪れることに



それは夕食の支度を私と遊月、芙蓉で行っている最中



私達は芙蓉の身体を案じ……



「後は私達で準備できますので芙蓉様は休んでくださいませ。」



「これぐらいの量であれば、夕食までには間に合います。」



「そうかい?なら御言葉に甘えましょうかね。二人が来てから色々助けてもらって申し訳ないねぇ……」



芙蓉は私達の言葉を受け、その場を任せようと退いた時



「うッ………うぅぅ………」



芙蓉は大きなお腹を押さえたままゆっくりと倒れ込む姿を見た私と遊月はとっさに芙蓉の元に駆け寄り彼女を支えた



「芙蓉様!」



「つ、月影………うっ……産まれそう………」



私は直ぐに遊月へ村の医師を呼びに行かせ、芙蓉を寝室へ慎重に移動させ……あらかじめ敷いておいた布団へ寝かせると



折り紙で作った紙人形を数体用意し、それに霊力を送り隣村で退魔の仕事に行った狼月へ知らせる役割を与え……夜空へと飛ばし隣村の方へ紙人形達は飛んで行った。



村の医者が来るまでの間、私は産湯を準備し……小さな桶に冷水と布を用意し陣痛に苦しむ芙蓉をひたすら看病を行い



数分後、遊月が村の医者を連れて家に戻り直ぐに出産の準備をし始め……その時が来るのを待っていた



だが……いくら待っても狼月は帰ってくる気配は無く、芙蓉もお腹の子も頑張ってはいるが難航している様子ではあった



いくらなんでも既に紙人形が狼月の元へ到着し村へ戻って来てもおかしくないのに………まさか………



「すいませんが後のことは任せますよ遊月。」



私は後のことを遊月と村の医者に任せ、神刀虚月を携え家を飛び出し



隣村へ向かった……



カミサケ森を抜け隣村まで続く長い一本道を駆けていると……



道中に地蔵が数体立ち並ぶ地蔵通りに差し掛かると……そこで1人の人物が胡座をかいて道を塞いでいた



月の明かりにその人物が照らされると、それは狼月であった……



「こんなとこで何しているんですか?もうすぐ貴方の子が産まれるんですよ!早く帰りましょう。」



俯いた狼月は顔を上げ……その表情を見た私は抜刀の構えをとり警戒した



何故なら……その人物は狼月で間違いないが………



目に光りは無く……最初に会った時に微かに感じた内に潜む深い闇の部分が表へ出てしまったように歪んだ笑みを浮かべていたからだ……



「貴方……誰ですか!」



狼月?は私に目線を合わせ……口を開く……



『月の一族……我が求めた存在がどれ程のものか試させてもらう。』



月の一族……私の正体を何故………



私が動揺した隙を狼月?は見逃さず私が狼月へ送った紙人形を懐から取り出し、それに息を吹きかけると能面のような形へと変わり……



地蔵へ被せた……



能面を被せた地蔵は小刻みに振動し……やがてビキビキと音を立てながら形状を肥大化させ……飛び上がり……私に鋭い鉤爪を降り押した……



私は後ろに後退し、その姿を見ることに……



体は穴持たずの熊より巨大で恐らく5メートルぐらいはある……四足歩行で前足の5本の指には手鎌のように長く鋭い鉤爪を持ち……頭の部分は能面だが……口の部分は鋭い牙がぎっしりと詰まり………頬の半分まで裂けていた。




『さしずめ“化け狸の怪異”と言ったとこか……さぁ、月の一族の力見せてもらおうか。』




狼月?は高らかに言うと、それが戦いの合図かのように化け狸の怪異は私に飛び掛かる



この怪異の特徴は防御に優れた石の肉体に攻撃的な特性に獣のような俊敏差……



まともにやり合えば持久戦となり、こちらが不利となるが……



恐らく………奴の弱点は………




刹那………




刀に手を掛け…奴と私との間合いが約5歩ぐらいの間合いに入ると


瞬時に逆手持ちに切り替えて半月を描くように抜刀…


奴の能面を切り裂き、巨大な肉体を踏台にし………



奴は何にも出来ぬまま能面は半分に裂け肉体が崩壊していき元の地蔵へと戻った



この間………0.6秒………



その勢いのまま狼月?へ刃を突き立てる



ガンッ!!!



だが、刃は狼月?には届かず事前に用意していたと思われる黒くくすんだ結界により阻まれるが………




神炎じんえん不知火一閃しらぬいいっせん



仙霊力の陽を纏った炎の居合いで結界を切り裂き………



着地と同時に矛先を狼月?へ向けた



『見事………今の我では遠く及ばぬか………まぁ良い………しばらくは静観するとしよう』



「貴方は、何を企んでいるんですか?そして何故私が月の一族だと………」



『我が“主”がお前らの“長”に大分世話になったからな…その借りとでも思って良い………』



“長”だと………まさか………まさか………奴はあの方が命を駆けて封印した筈………



でなければ……あの方…“長”であるあの方の存在を知るわけが………



『最後に名乗っておこう………我は“朧月おぼろつき”やがて世を終わりへと導く者の名だ…………さらば』



「待て!!まだ話は!!」



奴から聞かなければならないことが沢山あったが……その言葉を最後に狼月から感じた黒い何かが再び奥へと引っ込み………



こと切れたように狼月の体は倒れた………



私は狼月を抱え……村まで戻る道中………



「すまない……月影…すまない……」



元の優しい狼月へ戻って安心したが



「朧月はなんて……言ってたんだ?」



「………………」



言えない……いや………言えるわけがない……


あの月の一族で起きた一件に狼月まで巻き込むわけには……



「月影………頼みがある………」



「なんでしょうか?」



それはあまりに簡潔で残酷な内容ではあったが………私は即座に判断しかね………



言葉に詰まった………



ただ………狼月がこれからの未来を思ってのことならば………



私は………




彼の首をこの刀で切ることに躊躇はしない………



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